ロシア連邦の首都モスクワでは、実に不可解な現象が確認されています。政府の建物が集まるモスクワ・赤の広場の周辺、通称「クレムリン」では、スマートフォンなどのGPS機能がうまく動作せず、数十kmも離れた場所に位置する空港の位置を示す状態となっているようです。

Moscow GPS Mystery: Drivers Near the Kremlin Are Always at the Airport

http://www.thetruthaboutcars.com/2017/01/bizarre-gps-spoofing-means-drivers-near-kremlin-always-airport/

The Kremlin Eats GPS for Breakfast

https://themoscowtimes.com/articles/the-kremlin-eats-gps-for-breakfast-55823

クレムリン近辺では、2016年ごろからGPSの位置表示が大きく狂うという事態が確認されており、モスクワ市民からも不満の声が挙がっているとのこと。この現象は「赤の広場」があるクレムリン周辺で最も顕著に生じているようで、クレムリンから30km以上も離れているヴヌーコヴォ国際空港に現在位置が突然ジャンプしてしまうことがよく生じているそうです。



この現象により、市民の生活にも影響が及んでいます。モスクワ市民はもとより、現地を訪れた観光客が自分の場所を見失ってしまうことや、タクシーやUberなどに搭載されたGPS端末の表示に大きな誤差が生じ、特にUberなどでは料金をうまく計算できない事態も生じているそうです。さらに、モスクワでもサービスが始まったスマートフォンアプリ「Pokemon Go」のプレイにも大きな障害が生じているとのこと。現地の新聞「The Moscow Times」の英語版は2016年10月21日に「The Kremlin Eats GPS for Breakfast (クレムリンはGPSを朝食に食べた)」とする記事を報じています

この状況について、テキサス大学オースティン校Radionavigation Laboratory (無線誘導研究所)のGPS専門家であるトッド・ハンフリー氏はCNNの取材に対し、いわゆる「なりすまし」が行われている状況がそろっていると語っています。単に端末がGPS信号を見失った場合には「現在地が取得できません」などの表示が確認されますが、モスクワでの出来事のように端末が全く違う場所を示してしまうのは、本来の電波ではない偽の電波が何者かによって発されていると考えざるを得ない状況というわけです。

現地の人気ブロガーであるグレゴリー・バクノフ氏が、この状況について独自の調査を行っています。バクノフ氏はGPSおよびロシア版GPSであるGLONASSを受信できる端末を手に自分のSegwayに飛び乗り、モスクワ中を走り回って影響の実態を調べて回ったそうです。ちなみに、マイナス2度のモスクワ市内をSegwayで走り回るのは実に骨の折れる作業だった模様。

その結果を地図上で表示したのが以下の図。赤と青のエリアはそれぞれGPS信号とGLONASS信号が影響を受けているエリアを示したものとのことで、いずれも「☆」で示されたクレムリンを中心に範囲が広がっていることが確認されているようです。この地域には宮殿の他にも大統領府や大統領官邸、その他の政府施設が集まっています。



前述のハンフリー氏はこの事態の原因について、政府の建物の周りをドローンが飛び回るのを防ぐためだと推測しています。市販のドローンの多くは、GPSの位置情報をもとに空港などの施設に近づくことができない「ジオフェンス機能」を搭載しています。この機能を流用するために、正体の知れない「誰か」がクレムリンを中心にウソのGPS/GLONASS信号を発することで装置を攪乱し、ヴヌーコヴォ空港の近くに位置していると錯覚させることで、ドローンの飛行を妨げているのだろうと考えられているというわけです。

おもわず「おそロシア」いう感想が口をついて出てしまいそうになる出来事なわけですが、一連の不具合について、ロシアの政府関係からは何の反応も示されていないとのことです。