日本の温泉施設「大江戸温泉物語」の名称を掲げて運営する、上海市の温泉施設。オープンからまだ2か月たっていないということもあり、清潔感や従業員の教育などが行き届いていた。筆者撮影。

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2016年12月21日に上海市近郊にオープンし、東京・お台場の温浴施設「大江戸温泉物語」の名称を掲げて同施設を運営している問題を覚えているだろうか。

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外観も内装もお台場の「大江戸温泉物語」そのままであり、現地運営会社は「日本側から名称使用権を取得した」としているが日本側は「事実無根である」と反発。宝山区の市場管理局が調査に乗り出すなど続報が待たれる状態である。

しかし元旦が過ぎ、旧正月(春節)も明けたこのタイミングになっても、一向に続報が流れない。ということで「大江戸温泉物語」のいちファンとして、同施設に潜入を試みた。

潜入当日は春節明けの2月5日。地下鉄7号線「場中路」駅からすぐの位置にある同施設は、日曜午後1時過ぎということもあり、入場までに約150人、30分ほどの行列が出来ていた。入り口前のスペースには、ゆるキャラ「くまモン」が陳列。ちなみにこちらも同キャラクターを無断で使用しているとして熊本県から抗議を受けているが無視の状態らしい。

行列に割り込んでくる地方出身者家族らしき団体がトラブルを起こすなど、45分ほど待ちながらようやく入場。受け取った電子キーは靴入れとロッカー双方で共有でき、着替え用の浴衣も5種類陳列されていた。

初の利用ということもあり、従業員に使い方の説明を聞きながら同施設について取材したところ「現状問題はなにもない」と円満解決をアピールされた。また、同施設に温泉施設はなく、温泉成分を含んだお湯を循環させているとの説明もあった。流石に温泉は引っ張ってこれなかったらしい。

そのほか「我々は大江戸温泉の日本人スタッフから直接指導を受けている」という話も。真偽のほどはともかく、こちらの稚拙な中国語の質問にも丁寧に受け答えてくれる点には好感が持てた。くまモンに関しては知らぬ存ぜぬを繰り返していたが。

すべてを受け取り、浴場に足を踏み入れた感想としては「思った以上に日本の大江戸温泉物語に近い」という点だ。

中国では、偽物は一目で偽物とわかる程、本物とのクオリティーに差があるのだが(事実、入り口前のくまモンぬいぐるみは体型、耳や目の造形に本物との差が見て取れる)、浴場内の設備に関しては、説明文の看板や風呂に設置された温度計、アメニティの部分は日本のそれと同レベルにある、と個人的には感じた。

その他で気になった点を挙げるとすれば、

(1)日本よりシャワーが多く、座って身体を洗える所が少ない。これは中国人が基本的に立ってシャワーで身体を洗う習慣だからだと推測できる。

(2)入れ墨、タトゥーの客が多い。日本では考えられない事態だが、これも中国(あるいは外国)ならではなのかもしれない。

(3)1つの風呂の入浴は15分まで、という張り紙が浴室内に貼られている点。店員からは健康のためにご協力を、との話だったが、長湯でのトラブルがあったのだろうか。

(4)浴室以外には漫画室、休憩室、大型モニター、レストランなど。雰囲気は日本のお台場の「大江戸温泉物語」縁日コーナーに寄せているように見えた。ただし定食コーナーにはおつまみはあるがビールは売っていない、大型モニターの後ろは下り階段のため、寄りかかるスペースがないという「かゆいところに手が届かない」感覚はあった。

そのほか、賭けトランプに興じ周りに迷惑をかけていた客に対しても丁寧に対応するなど、総じて従業員の教育は行き届いており、オープン間もないとはいえ中国施設らしからぬ清潔さもあり、非常に快適に過ごすことができた。

だから最後に会計をする際、入浴料138元(約2280円)と聞いていたのに168元(約2780円)を請求されたのは、外面と内情の異なる中国あるあるとして不問に付すことにした。

■筆者プロフィール:REDカワサキ
経歴:1988年、神奈川県川崎市生まれ。日本大学法学部新聞学科卒。富士見書房ファンタジア文庫編集部(現株式会社KADOKAWA)、時事通信社運動部を経て、2015年より一念発起し中国、上海市へ。中国語で挨拶もできない中で在駐日本人向け雑誌の編集、営業に携わる。専門分野はアニメ漫画等のサブカルチャーとスポーツ関係全般。