<MITの研究チームは、柔らかく、透明な"UFOキャッチャー"のような形状のロボットアームを開発した。魚に気づかれないうちに捕獲することができ、柔らかい素材ゆえ、魚を傷つけてしまうこともない>

ロボットというとメタリックな硬い素材でできているイメージが強いが、近年、柔らかい素材でつくられた"ソフトロボット"の開発が世界各地ですすめられている。たとえば、欧州連合(EU)では、研究・技術開発資金助成計画『ホライズン2020』の助成のもと、2016年4月に、世界初のソフトロボットコンテスト『ロボソフトグランドチャレンジ(The RoboSoft Grand Challenge)』が開催された。

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透明な"UFOキャッチャー"のような形状のロボットアーム

米国では、海軍研究事務所(ONR)や国立科学財団(NSF)などからの助成により、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のZhao Xuanhe准教授を中心とする研究チームが、液体として水分を含むゲル材料"ヒドロゲル"をつかったロボットアームを開発。このほど、その研究内容がオンライン科学誌『ネイチャーコミュニケーションズ』で公表された。

このロボットアームは、透明な"UFOキャッチャー"のような形状。アームの素材には、ほぼ水で構成されるヒドロゲルが使われ、3Dプリンターとレーザー加工機で形づくられている。アームに水が送り込まれると、腕を開いたり閉じたりするように、アームが曲がったり、縮んだりする仕組み。透明なアームは、水中に入れるとまったく見えなくなるため、魚に気づかれないうちに捕獲することができ、柔らかい素材ゆえ、捕獲や放流のときに魚を傷つけてしまうこともない。

研究チームでは、ソフトロボットにヒドロゲルを採用するにあたって、細胞や器官をヒドロゲルで形成するシラスウナギに着目。透明の形状はカモフラージュに効果的であることがわかった。そこで、シラスウナギの透明度や強さ、速さと同等レベルのものを追求しながらロボット開発をすすめたという。その結果、このロボットアームは、魚を捕獲するだけでなく、水中で泳いだり、ボールを蹴るなど、一定の力や速さが必要な作業をも担うことができる。

また、ヒドロゲルは、柔らかく、湿り気があり、生体適合性のある素材で、ヒトの細胞や器官とも相性がよい。研究チームでは、今後、医療グループと積極的に提携し、これまでの研究成果を外科手術用ロボットに応用していきたい考えだ。

ボディが金属や合成樹脂などでできている従来のロボットは硬いため、頑丈だが、しなやかさがなく、環境の変化に適用しづらい面があった。ソフトロボットの研究開発がすすめば、ロボットが担うことのできる領域をさらに広げていくことができるだろう。

柔らかいロボットの使用用途は広い

柔らかいロボットの研究はまだまだ始まったばかりだ。「硬いロボットは体がソフトになったとき、体の制御など基本的なことができなくなってしまう。そこで、ソフトロボティクスでは素材、センサー、モーターなどを一から開発する必要が出てきます」。そのため、この研究にはロボット工学だけでなく、材質学、化学、生物学など様々な分野の専門家が携わっている。

こうしたロボットに共通するのは、ボディが金属や合成樹脂などでできているために硬いことだ。硬ければ頑丈ではあるが、しなやかではない。非常に正確に作業できて疲労することもないが、一定の条件下でなければ機能できない。

また、硬いロボットは人間に危害を及ぼす可能性もある。鉄製のロボットアームは周囲に人がいても気づくことができないため、そばに近づいた人に大けがを負わせるかもしれない。柔らかいロボットの使用用途は、予想以上に広そうだ。

松岡由希子