今井さんがアニメ版で演じるミシディア(左から2人目)は、姉御肌で頼れる弓使い/[c] SEGA/チェンクロ・フィルムパートナーズ

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2013年のサービス開始以来、第3章までリリースされ、500万ダウンロードを超える人気スマホRPG「チェインクロニクル」。その第1部の世界観をアニメ化した『チェインクロニクル ヘクセイタスの闇』(全3章)は第1章、第2章は劇場上映からデジタル配信中となり好評を博している。TV版も絶賛放送中の本作で主人公ユーリと共に戦う弓使いミシディアを演じる人気声優・今井麻美さんに『チェンクロ』の魅力をアニメ、ゲームそれぞれ直撃した。

【写真を見る】ゲームにも熱中し、並々ならぬ‟チェンクロ愛”を語ってくれた人気声優・今井麻美さん

『ロード・オブ・ザ・リング』のような剣と魔法の世界と、『スター・ウォーズ』のように人間の光と闇へ切り込むドラマを、2D×3DCGで見事に描いた本作を見て、今井さんも「メチャクチャ感動した」という。

「立ち上げから相当気合を入れていたので、その熱意が画面から伝わってきました。作画も動きも背景も贅沢だって思えるほどすごい! 動いているミシディアを見て“いや!かわいい!”ってキュンキュンしました(笑)。それに、細部に少しでもゲームのキャラクターを登場させようと入れ込んでくださっていて、“どんだけ『チェンクロ』好きなんだ”って(笑)。第1章から圧巻のキャラクター数で度肝を抜かれました」

そのスタッフのこだわりは、作画のみならず、キャラクターの深堀りにも向けられていた。

「アニメはユーリ率いる義勇軍の敗戦から始まります。その中でミシディアはユーリを見守る立場で、敗戦したユーリにかけたい言葉が山ほどあるはずですが、“いま踏み込んではいけない”とグッとこらえている。その表情豊かな描写に“そこまで描いてくれるんだ”と切なくなりました。私自身、彼女にすごくシンクロしていたので、アフレコの時も同じ気持ちで見ていました。自分が携わったことを抜きにしても“好き”って思える作品です」

実はミシディアは、ゲームでは内田真礼さんが演じている。それを今井さんが演じたのには、『チェンクロ』ならではの経緯がある。

「私は第2部から参加していて、内心、今回は出演を諦めていたんです。ところがゲームの『チェンクロ』は1人の声優が数役を演じるのですけど、アニメでは1人1役が原則になって、内田真礼ちゃんからミシディアを預かることになったんです。大切なキャラクターをほかの人に預ける気持ちを考えると“本当に丁寧に演じなきゃ”って責任感からちょっと震えましたね。“1人数役”というのも、いまでは当たり前ですけど、当時は業界的に激震が走ったんです。私も1プレイヤーとして“(ユーリ役の)石田彰さんをこんなに登場させるなんて、みんな夢見ていたやつじゃなか!”って思いましたから(笑)」

仕事でもプライベートでもゲームで遊ぶ機会の多い今井さんから見て、ゲームの『チェインクロニクル』は親しみやすさ、始め易さ的に「本当にレアなゲーム」だという。

「すごいのはライトユーザーもヘビーユーザーも共存できること。携帯向けのゲームって早く始めた人が有利で、後からの人は“追いつかなきゃ”という心理的ハンデや、過去のアイテムが入手できない心のロスがあると思うんです。それをスタッフさんの知恵で誰でも同じテンションで楽しめるようにしています。いろいろな工夫でもっと楽しい遊び方を見つけられる。これが驚くほどよくできているんです」

「その精神は、アニメにも引き継がれている気がする」という今井さんは、アニメ『チェインクロニクル』は、「誰もがスッと感情移入できるよう模索されている」と分析する。

「仲間を傷つけたり、裏切り、裏切られたり、“アニメでここまでやる!?”というほどドロドロした瞬間も描かれていて結構ショックでした。こういうときポジティブに動くか、ネガティブに受け止めるかで人の道筋って大きく変わりますけど、ユーリともう一人の主人公アラムの心の在り方は“ここまで違うように捉えるんだ”と、対比として気持ちよく描かれているんです。そういう瞬間って私たちもリアルに出合ったりしますよね。私自身“ちょっとボタン掛け違うとこうなっちゃう”って思い起こしちゃいましたし。そこまで思える普遍的な部分を落とし込んでいるから、『チェンクロ』を知らなくても楽しめる。私は、その“いつでも、だれでも、どこからでも受け入れる”っていう感覚が、『チェンクロ』すべての世界で共通する考え方かなって、両方に携わって実感しましたね」

ゲームもアニメも間口を広げつつも『チェンクロ』は決して「スタッフさんの考える大事な部分がぶれないんです」とも語る。

「だから、いままで大切にしてきたものでも、いま必要ないと思ったらバッサリ切れる強さをもっていらっしゃる。アニメを主人公の敗戦から始めるのも、普通なら怖くてできないと思います。私たちにとってユーリは強くて頼りになる存在でしたから。でも、ファンの期待を裏切りたくない気持ちと、新しい視聴者を獲得したい気持ち両方があるなか、ファンが“えっ!?”と思うことをやるって、“勇気あるなぁ”と感じました」

その勇気をユーリに重ね合わせたとき、今井さんは「ユーリのような立場の人って、絶対的に孤独なんじゃないかな」と思ったという。

「別のお仕事で、私がメインで歌うステージを任されたとき、“しっかりしなきゃ”“みんなに嫌な思いをさせたくない”って自分をどんどん追い詰めてしまったんです。そのことを恩師の先生と話したら“そういう立場では、孤独にならざるを得ない”と言われたのが胸に響いて…。何かを成し遂げるとき、みんなを率いる人って責任から不安に押し潰されるし、失敗の恐怖と一人で戦わなきゃいけない。追い詰められなければ、特に娯楽って人の心に響かせられないのかも。そういう感覚をユーリも抱えているんだって思いました」

人間ドラマを、キャラクターの魅力を、自分自身を追い詰めて掘り下げている。

「そこをアニメもゲームもフワッと描くのを自ら律していて、とてもストイックな集団が作っているなって感じていて、だから心配しちゃう(笑)。アニメやゲームの制作ってトコトン突き詰められる。“ここまで”というゴールがない世界だと思うんです。ただ、一区切りのゴールが定まったとき、その分達成感で満たされると思うから、頑張った分だけ報われるよう、『チェンクロ』をみなさんに見てほしいなって強く思いますね」【東京ウォーカー】