ジュビロ磐田の中村俊輔【写真:青木務】

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体を追い込んだ状況で、何ができるか

 中村俊輔の加入によって、多くの注目を集めているジュビロ磐田。鹿児島キャンプも終盤に差し掛かり、DAZNニューイヤーカップも11日の試合を残すのみとなった。同大会の熊本戦ではさっそくベテランMFが傑出したパフォーマンスを見せたが、そのいっぽうでフレッシュな選手たちの台頭も求められる。(取材・文:青木務)

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 鹿児島キャンプも終盤に差し掛かり、選手たちの疲労も溜まっている。1年を戦い抜くためにはこの時期に体を追い込む必要がある。言いかえれば『疲れている』という事実は―それが勝利を担保してくれるわけではないが―来たるシーズンへの貯金となる。

 始動日から磐田市内での約2週間のトレーニングを第1フェーズ、鹿児島入りからの1週間を第2フェーズとすれば、これらの期間はインターバル走などフィジカルメニューが中心だった。そしてニューイヤーカップが開幕した5日からは、試合の中で各々の体の状態やチームとして何ができるのかを確認する作業となる。

「身体がしんどいから動けなかったとしても、例えば声が出ているとか頭は回っているとか、そういうものがあれば許される時期だと思う」

 初戦の熊本戦の前日、名波浩監督は選手たちのコンディションを鑑みてこんな話をしている。やるべきことを実践するのはもちろん大事だが、できなかった理由に正当性があることの方が重要だった。

 3バックで臨んだ前半は、トップ下に入った中村俊輔が攻撃を牽引するなど見せ場を作った。後半から4バックにシフトし、新10番がベンチに退いた後は期限付き移籍3年目を迎えた川辺駿が責任感のあるプレーで存在感を発揮した。

 チームは79分に失点し、1-1のドローで終えている。同点ゴールはあっさりと献上した印象だった。センターライン付近でボールを持った相手にプレスがかからず、易々と自陣左サイドにボールを通される。そして、グラウンダーのクロスを押し込まれた。

若手選手が出場機会を得た北九州戦

「65分過ぎくらいからちょっとずつ、体力的な問題の中で各エリアでのポジション修正が遅くなったり、自分たちからアクションを起こせなくなった。ボールを回されている時間帯に失点してしまった」

 名波監督が言うように、チームの動きが鈍くなったことでスライドが遅れ、ボールの流れに対応できなくなっていった。左SHの荒木大吾が「自分の判断で早く中を切れば良かったんですけど、一歩が遅かった」とパスコースを消せなかったことを悔やむ。試合後には一列後ろの宮崎智彦とも話し合い、この場面について振り返ったという。

 キャンプ中は共同生活を送ることになるため、普段以上に選手間のコミュニケーションが増える。食事会場や風呂場などで顔を合わせ、課題について議論を交わすことができる。そうした時期だからこそ、より綿密に意思の疎通を図りたい。

「若い選手が何人か出て、バランスとかコミュニケーションとかどうなるかなと思ったが、経験のある選手がリードしてくれた中で積極的にやってくれたと思う」

 名波監督はギラヴァンツ北九州戦についてこう述べた。ピッチコンディションの悪さからボールが繋がらない場面も多かったが、選手たちは意欲的にプレー。「前向きなミス」と話し、イレブンのチャレンジ精神に一定の評価を与えた。

 有意義な90分を過ごしたサックスブルーは、細かな修正点も持ち帰っている。

「今日のゲームを題材にするなら、カウンターの質が悪かった。ボールホルダーはタメを作るようなドリブルをしているかもしれないけど、逆サイドはトップスピードで動いている。そういうシーンが3回くらいあった」

俊輔がいないゲームでどう戦うか

 指揮官の言葉通り、スピードアップできる場面をこの日のチームは何度か逃した。序盤はサイドチェンジも少なく、太田吉彰は声を張り上げながら要求したが、フリーで右サイドをランニングする背番号9になかなかボールが届かなかった。

 例えば5日の熊本戦はピッチを広く使った攻撃で先制点を奪っている。中村俊輔が左から右へ展開すると、太田を経由し櫻内渚のピンポイントクロスに川又堅碁が頭で決めた。

 中村俊輔の視野の広さ、キックの質はもちろんトップクラスだが、他の選手も成長していかなければならない。コンディションに問題がなければ、トップ下は新10番の定位置となるが、フル稼働できるかはわからない。チームの中心となるべき選手だが、彼がピッチに立てない時の戦い方も整備しておきたい。

 サイドを起点とした縦に速い攻撃は磐田の持ち味のため、北九州戦で見られたカウンターの質の悪さは放置してはいけないだろう。

「テレビが入ったり、プレーシーズン中に準公式戦のような試合があると、選手にとってはアピールになるし、刺激になる。そういう場があるのはいいこと」

 中村俊輔はニューイヤーカップの意義を指摘する。各チームとも調整の意味合いが濃いが、大会として銘打ち人々の注目が集まれば、選手たちにはそういう環境の中で何ができるか試される。

 北九州戦では、刺激を受けた若手が躍動した。決勝ゴールを奪ったのが、大卒2年目の荒木大吾だ。得点という収穫を得たが、本人は「守備の面での予測とかはまだまだ全然。45点くらいかな」と話す。自己採点は厳しかったが、サイドからのドリブル突破が魅力のアタッカーは中央でのプレーにも自信を深めている。

ポテンシャルを示した若手選手。競争のフェーズへ

 トップ下でプレーしたルーキーの針谷岳晃も随所に光るモノを見せた。中盤の低い位置でのゲームメイクや相手の嫌なところに走り込む動きで攻撃を活性化。22分にはクロスを右足で合わせるなど、神出鬼没な動きでチャンスを作った。相手に潰される場面もあったが、名波監督が「俺の18歳の頃より上手い」と絶賛するMFはポテンシャルの高さを発揮した。

 試合には勝利したが、小川航基は誰よりも悔しそうな表情を浮かべていた。強烈なシュートや打点の高いヘディングシュートを放ったものの、肝心の得点を奪うことはできず。「物足りない」と肩を落とした。

しかし、CFとして確実に進化している。DFを背負いながら正確なポストプレーでゴールを演出したシーンは力強さだけでなく、相手の圧力をうまく吸収できていた

 その点について問うと、自身も手応えを感じているようだった。

「新チームが始動してからキャンプでもそうですけど、腕の使い方とか色々考えて取り組んできた。CBの(森下)俊さんから『体の使い方が良くなった』と言われたので、そういう部分では成果が出ているんじゃないかなと」

 今シーズンの磐田は、絶対的ストライカーの得点力に依存する状態からの脱却を目指している。CFにゴールが求められるのは言うまでもないが、味方の動きを見逃さず活かすようなプレーもしなければならない。その意味で、チームで奪った得点に小川航が関与できたことには価値がある。

 若手の躍動はチームにポジティブな影響をもたらす。名波監督体制になってから初めて、本当の意味での競争がスタートしているが、フレッシュな戦力の台頭は各ポジションの争いを一層激しくさせるはずだ。

(取材・文:青木務)

text by 青木務