金正恩氏

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北朝鮮の金正恩党委員長が、秘密警察である国家保衛省に対し「人権侵害をやめよ」と指示を出していたとの情報が伝わってきた。

国家保衛省のトップとして君臨してきた金元弘(キム・ウォノン)氏が解任され、多数の幹部が処刑された中で伝えられた指示だけに、内外の注目を集めそうだ。

「妻の悪口」で処刑

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、両江道保衛局では先月25日から27日まで緊急会議が開かれ、金元弘氏の解任と、次官クラスを含む幹部5人が銃殺された事実が伝えられた。同時に、職権を乱用して金儲けをするな、住民に対する暴行、拷問などの人権侵害をやめるようにとの方針も伝えられた。

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その理由については、「このような行為が、住民に共和国(北朝鮮)に背を向けさせ、敵の側に付けさせてしまっている」と指摘したという。

このような指示を伝え聞いた保衛局の幹部は、今までとは異なり、その内容を一般住民にも漏らしている。情報筋は「暴行や拷問を行なってきたのは、今回粛清された幹部のせい」という世論づくりのためではないかと見ている。

しかし、今まで悪の限りを尽くしてきた保衛省が「人権侵害をやめる」と言ったところで、人々は聞く耳を持たないのが実情だ。

住民の反応は冷淡で、「保衛相が解任されようが、幹部が銃殺されようが興味ない」 「人民の血と汗を吸って生きている吸血鬼はまだまだ多い」 「労働新聞は、わが国には人権侵害などないと豪語していたが、結局あったと認めたわけだ」などと皮肉っているという。

「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会」(COI)は2014年に発表した最終報告書で、北朝鮮では拷問、恣意的な拘束や拘禁、基本的人権の否定や侵害など広範囲にわたり人権侵害が行われていると指摘し、加害者の責任を厳しく問うとしている。

今回の指示は、国際社会による圧力の効果の表れと言えようが、北朝鮮における人権侵害は、保衛省がだけが行っているわけではない。正恩氏自身が主導してきた問題も少なからずある。例えば、正恩氏は自分の妻の悪口を言った芸術家たちを処刑させたとも伝えられるが、事実ならこれもたいへんな人権侵害だ。

このように、北朝鮮社会あらゆるところにうかがえる人権侵害が、一朝一夕に消えるわけもない。北朝鮮が「世界最悪の人権侵害国家」との汚名をそそぐ日はなお遠いと言える。