R・シルバの加入によって、浦和の攻撃パターンは広がった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

 沖縄では川崎、鳥栖、神戸、浦和、札幌、名古屋、東京垢離ャンプを見てきた。その中で今季、J1で優勝争いにも絡みそうな勢いと「やるぞ」という空気を感じたのが、神戸だ。
 
 沖縄では練習試合が1試合もなく、フィジカルを上げる練習がほとんどだった。ただ単純に走るのではなく、ゲームの中や練習の中で身体に負荷をかけていくやり方だ。練習を見ている限りではそんなキツさを感じないが、腿上げの縛りがあったり、制約の中でプレーすることが多く、見た目に以上にハードだ。
 
 G大阪から移籍してきた大森晃太郎も「普通の練習でこれだけ負荷がかかっているのははじめて。しかも、みんな100パーセントの力でやるんですよ。しんどいですけど、監督もまずは身体を作ることからと言っているんで、怪我しないようについていきます」と、驚いた様子だった。
 
 こうした練習は「1歩ずつ階段を上がるように力をつけていかないとJリーグでは勝てない」というネルシーニョ監督の信念に基づいている。ゲームにおける身体の強さと後半も走り負けない体力が試合の趨勢を決めるという考えだ。
 
 また、大森など神戸にそれまでいなかったドリブラーが加入し、戦術的な幅が広がった。大物感のある選手はいないが、小粒でピリリと辛い個性派が集まったネルシーニョ・ファミリーは、非常にいやらしいチームになりつつある。
 
 優勝候補の浦和は、それを地でいく強さを見せていた。
 
 札幌との練習試合を怪我で見学していた稲本潤一は「攻撃がすごいね。チンチンにやられた」と、その強さに舌を巻いた。昨季61得点獲った攻撃陣に今季はラファエル・シルバ、菊地大介、長澤和輝らが加入し、さらに分厚くなった。ただ、単に人を増やすだけではなく、ペドロヴィッチ監督の凄いところは獲得した選手の特徴を生かすような戦術をひとつ、ふたつ加えていくところだ。
 
 今回はR・シルバが入ったので彼に縦パスを当てて、サイドやボランチが一気に飛び出ていくという練習をしていた。浦和といえばサイド攻撃だが、今季は「中央突破」というテーマがあり、それに合わせた練習が組まれていたのだ。
 
 攻撃のバリエーションが増えると相手は的を絞りにくくなり、得点の可能性が広がる。そのためのフィジカル強化にも着手しており、2次キャンプでは過去5年間2回しかしていないフルコートでの紅白戦をやった。試合の長さに合わせて、しっかり走れるようにタフな身体作りをしているのだ。選手層と戦術面からの不安はない。あるとすれば選手の勝てるだろうという慢心と目立ちたいというエゴが出た時ぐらいか。
 好調な浦和や神戸と比較して、やや不安な表情を見せたのが川崎だ。
 
 エース大久保が去り、1トップには小林悠が入り、左サイドに中村憲剛、トップ下に家長昭博、右サイドに阿部浩之が基本セットになっている。4人のユニットだが、昨季と選手がふたり入れ替わり、なおかつ小林も中村も昨季とは違うポジションになっている。
 
 阿部は攻守にまだ不明な点が多く、鬼木達監督やチームメイトにほぼ毎日、話を聞いて修正している状況だ。家長も当然だが、まだ周囲と嚙み合わないことが多い。また、中村のポジションは左だが、相馬監督時代にもトライして上手く機能しなかったことがあった。鬼木監督もいろいろ試行錯誤しているようだが、個人的には家長を左サイドに置き、トップ下に大島僚太、ボランチに中村を置いた方が機能するのではないか。
 
 家長はタメができるし、幅は使えるが縦は今ひとつ。大島のほうが運動量や飛び出しに勝り、前後左右の選手を上手く使うことができる。東京垢箸領習試合でも序盤は押しこむことができたが、動きが止まり、相手が慣れてしまうとそれほど怖さはなくなった。
 
 攻撃の連続性と多様性が川崎の良さだが、まだ昨年の域には達していない。今年から守備の整備もしているが、これからどこまで攻撃の精度と連係を高めていけるか。このままだと序盤戦はかなり苦しむかもしれない。
 
 川崎と同じように、攻撃に不安を抱えているのが札幌だ。
 
 守ってカウンターというスタイルを徹底しているが、江蘇蘇寧との練習試合では3バックではなく、5バックに3ボランチという布陣で守っていた。これだけ人数をかけて守れば強豪チームもなかなか点が取れないだろうが、攻撃はほとんど手つかずだ。
 
 カウンターに徹するのであればスピードがある外国人選手を前に置く必要があるが、そのタイプが見当たらない。ジュリーニョが左サイドで果敢に攻めているが、なかなか上手くつながらないし、エース都倉賢も孤立気味だ。極めて重要と位置付けている開幕戦に向けて、どれだけ攻撃力に磨きをかけていけるか。計算できる守備とは対照的に攻撃の再構築は「J1残留」という目標のための重要課題になっている。
 
取材・文:佐藤 俊(スポーツライター)