大勢の客でにぎわう中国・上海の「ラーメンアリーナ」(筆者撮影、以下同)


 最近、日本のラーメンが欧米各地でブームとなっているという報道をよく目にします。ここ中国でも、日本のラーメンチェーン店が中国各地に店舗網を広げるなど、ラーメンが寿司や刺身と並ぶ代表的な日本料理の1つとして認知されつつあります。

 特に多くの日本人が住む上海市では、日本国内でも有名なラーメン店の進出が相次いでいます。2016年12月には日系ラーメン店7店が軒を連ねるフードテーマパーク「ラーメンアリーナ」(中国名は「拉麺競技館」)がオープンし、日系ラーメン熱はますます高まってきています。

 筆者は春節(旧正月)が明けたばかりのラーメンアリーナへと赴き、中国人客の反応と、日本のラーメン店の中国市場に対する意気込みを取材してきました。

7軒の日系ラーメン店が一堂に

 筆者が今回取材に訪れた「ラーメンアリーナ」は、2016年12月19日にオープンしたばかりの、日系ラーメンをテーマにしたフードテーマパークです。地下鉄8、12号線「曲阜路駅」近くのショッピングモール「大悦城」の中にあります。

ラーメンアリーナの正面入口


 パーク内で店を構えるのは、「KLab Food&Culture」というデベロッパーの募集に応じた出店した日系ラーメン店7店です。ちょうど新横浜にある「ラーメン博物館」のように複数のラーメン店が軒を並べ、食べ歩きができる構成となっています。パーク内にはラーメン店だけでなくお土産店なども設けられていました。

射的や小物販売を手掛けるお店も


 現在、ラーメンアリーナに進出している店舗は「拉麺久留米本田商店」「吉祥寺武蔵家」「富良野とみ川」「濃厚鶏そば麺屋武一」「有頂天evolution」「えびそば一幻」「セアブラノ神」の7店です。北は北海道から南は九州まで、日本各地のラーメン店が一堂に会しており、メインとなるラーメンの味も、醤油、味噌、豚骨とバラエティに富んだ構成となっています。

昼どきを過ぎても大盛況

 ラーメンアリーナはショッピングモールの7階のスペースに入居しています。入口と出口が半円状の通路で結ばれていて、この通路を通ることで7店のすべてのラーメン店の前を通ることができます。

ラーメンアリーナのラーメン店の店頭


 筆者が取材に訪れたのは日曜日でした。なるべく混雑を避けようと昼の3時頃を狙って訪れたのですが、昼どきを大分過ぎているにもかかわらず多くの来場客でごった返していました。どの店もほぼ満席状態で、店によっては入場待ちの列ができているほどでした。

 来場客は、子供を連れた家族連れが多かったようです。そのほか若い男女のカップルや女性グループなどが来ており、通路を歩きながらどの店に入ろうかなどと相談したり、スマートフォンでグルメサイトの情報を見ながら店を検討する姿が見受けられました。

妥協しない“本物”のラーメンで勝負

 筆者は店の人に取材してみようと「富良野とみ川」の暖簾をくぐりました。責任者の富川哲人氏が対応してくれ、話を聞くことができました。

 まず、出店の経緯についてです。富良野とみ川は本店が北海道富良野市にあり、富良野市内でチェーン展開しています。富川氏は以前、香港や台湾へ現地市場調査に赴いたことがあるそうですが、中国市場はそれらの両市場に比べて競合店がまだ少なく、また、膨大な人口から高い将来性があると判断し、中国での出店を決断したそうです。富良野とみ川の海外出店は今回が初めてでした。

 出店に当たってはデベロッパーの支援が非常に大きかったといいます。単独での海外進出となると経験やノウハウもなく、一から通訳やコンサルタントを雇わなければならなりません。しかしラーメンアリーナの一員として出店することで、店舗の確保や宣伝などあらゆる課題をデベロッパーが解決してくれたといいます。また、現地法人も無事に設立できたとのことです。

 来店する中国人客の反応についても聞いてみました。すると、富川氏はやや誇らしげに近くのテーブルを指し示し、「あちらのように、スープまで全部飲まれていくお客さんが多いですね」と教えてくれました。中国のブログやSNSでも「ここのラーメンはおいしい」とよく書き込まれるそうで、そうした口コミもあってか来店客は増え続けているとのことでした。

 実は富川氏は、当初、中国人の客は粗野な振る舞いをする人間が多いのではないかと心配していたそうです。しかしこれまでのところ、上海という場所柄もあるのでしょうが、来店するお客は総じてマナーがいいとのことでした。現地で雇った中国人従業員らも素直で飲み込みがよく、現在調理はほぼすべて任せられるようになったと話してくれました。

 ただ、万事が順調というわけでもなく、地元業者から豚肉を仕入れたところ、生肉を注文したにもかかわらず、さりげなく表面だけ解凍させた冷凍肉にすり替えられていたというトラブルがあったことも明かしてくれました。

 同店のメニューの中では、1杯60元(約980円)の「石臼挽き中華そば」が断然人気だそうです。「麺には北海道から直接取り寄せた小麦粉を使い、スープは化学調味料を一切使っていません。原価は高くなりますが、日本の店舗で出しているラーメンと全く同じ質と味を再現しています」と富川氏はこだわりを強調します。あくまでも高品質で本物のラーメンを中国で提供していき、本当にその味の良さを分かってくれるお客を相手にしながら店舗数を拡大していきたいとのことでした。

 実際に富良野とみ川のラーメンを食べてみたところ、小麦を臼でひいて作った麺は色も食感も独特で、ほかの店のラーメンとは明らかに一線を画しています。鶏ガラのスープもあっさりとした味付けで、食べていてなんとなく体にいいものを食べているような感触を覚えました。

日本のラーメン大好き女子が増殖中

 中国における日系ラーメンの展開のパイオニアとなったのは、熊本に本店を置く「味千ラーメン」です。味千ラーメンは1990年代から中国に進出し、2014年には中国の120以上の都市で669店(同社ホームページ発表)のチェーン店を運営するまでに至りました。

 味千ラーメンの影響から、多くの中国人は「日本のラーメン」というと豚骨スープのラーメンを思い浮かべます。後に続いて中国に進出した日系ラーメン店も、豚骨スープをメインとする店舗が多い状況となっています。

 上海市内では「博多一風堂」や「無敵家」といった日本国内でも著名なラーメン店が既に多数進出しています。中国メディアも日系ラーメン店の特集を組んだりするなど、今や中国人から「中国とは異なる進化を遂げた日本のラーメン」として広く受け入れられています。

 筆者個人の印象ですが、日系ラーメン店を訪れる客は20代を中心としたOLらしき若い女性が多いようです。そうした女性客同士の会話に耳をそばだてると、前に行った店と比べてこの店の味はどうかなど、いろいろな日系ラーメン店を回っている様子が伝わってきます。

 どうやら日本だけでなく中国にもラーメン女子が現われてきているようです。案外、中国でこの層が日系ラーメンの主要な消費者層になっていくのかもしれません。

完食後、快く写真撮影に応じてくれた中国人女性客


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筆者:花園 祐