大塚家具・大塚久美子社長(ロイター/アフロ)

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 2015年に大塚家具の創業者で当時会長だった大塚勝久氏と、その長女で二代目社長である久美子氏との間で経営方針をめぐる対立が起こり、世間を騒がしたことは記憶に新しい。

 最終的に久美子氏が経営権を勝ち取り、勝久氏を大塚家具から追い出したかたちで決着したが、以降の業績はかんばしくはない。大塚家具が発表した2016年1〜9月期の単独決算によると、最終損失は40億円にも上り、同年11月の全店売上高は前年同月比の58.5%、12月も同79.9%となっており、苦しい経営事情が数字にも如実に表れている。

 高級路線で知られた大塚家具だが、久美子氏は「誰もが気軽に入れる店」を標榜して路線変更を断行した。では、同社の業績低迷の原因は、マーケティングの観点からみると何が原因なのだろうか、立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に解説してもらった。

●ブランドイメージの低下

「大塚家具は、従来の高価格帯商品中心から中価格帯にシフトしたことで、下位の価格帯で販売する企業と比較され、それまでの高級イメージを落としてしまったことが現状の苦戦の原因だと考えられます。また運が悪かったことに、2015年の“お家騒動”が、会社を巻き込んだ“親子喧嘩”というかたちでマスコミにクローズアップされました。それにより、久美子氏による中価格帯への路線変更が、勝久氏の高級路線からの下位シフトとして顕著に対比される結果となりました。それがメディアによって、ニトリやIKEAのようなリーズナブル路線にまで切り替わるのではと解釈されたこともあり、ブランドイメージを一層下げることになってしまったようです」(有馬氏)

 メディアによる報じ方が大塚家具の立ち位置を変えてしまったこともあるが、安くて良いものが求められる昨今、久美子氏の打ち出した中価格帯への移行は決して悪いことではないであろう。勝久氏がこだわった会員制や顧客一人ひとりをケアする案内接客も、時代遅れの高級志向のように思えただけに、当時はメディアを中心に久美子氏のやり方に好意的な見解を持っていた印象だが、市場の反応は鈍かったようである。

「マーケティング的には、現代の市場での中価格帯販売は非常に難しいです。過去の日本は、“いつかはクラウン”というキャッチコピーがあった自動車購入のステップアップに見られるように、『大衆車』→『中級車』→『高級車』といった買い替えの慣習がありました。ですが、長期の不況により市場は二極化しています。一般的には大衆的な価格帯に収まる商品が支持され、一部の富裕層に高級品が売れるという構図です。これにより、単に中価格帯の商品群を取り揃えた店舗というだけでは、買う側にそのバリューが伝えづらいのです。また、消費者がニトリやIKEAの価格帯を期待して大塚家具に来店すると、中価格帯の商品を割高に感じてしまいます。そのあたりのイメージのギャップも業績の数字に表れているのではないでしょうか」(同)

●意図するイメージと戦略の乖離

 そのため、中価格帯を軸に低価格帯市場の一部を吸収しようとした大塚家具の戦略は、時代の流れに沿うものでは必ずしもなかったということだ。さらに、低価格帯店舗的なプロモーションも裏目に出ていると有馬氏。

「大塚家具は、昨年の9月より中古家具の買い取りやリユース事業を開始しました。しかし、この路線が強調されてしまうと、さらに低価格帯販売店のイメージが強められることになります。これは、本来久美子社長が意図していたイメージ戦略とは乖離する恐れを含んでいます」(同)

 一方、勝久氏は新会社「匠大塚」を設立し、家具販売業に復帰。ブレない高級路線で客入りは好調だという。親子で経営手腕の差が出てしまっている印象だ。では、久美子氏は、今後大塚家具をどのような方向へ持っていけば、業績を回復できるのだろうか。

「薄利多売にしてでも市場規模を大きくしたければ、今よりもさらにディスカウント販売をしてマスマーケットを狙う方法があります。また、業務取引市場で大規模受注を獲得するのもひとつの手でしょう。あるいは、独自ブランドの取り扱いなどセレクトショップ的なマーチャンダイジングで新たなイメージの付与が上手くいけば、新規の顧客層を取り入れられるかもしれません。いずれにしても現状の価格戦略を見直して、店舗イメージのポジショニングを明確にするべきでしょうね」(同)

 価格戦略は小売店には操作しやすいが、それが失敗すれば老舗企業でも一転凋落の一途をたどってしまうのが経営の難しいところ。ブランドイメージ、マーケットでのポジショニングをしっかりと見極めることは、企業を取り仕切る人間にとって必須の資質といえそうだ。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)