日本が英国で反中プロパガンダか…英紙報道 背後に現地の反中保守派の影も?

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 1月29日付のイギリスの高級紙「タイムズ」は、英シンクタンク、ヘンリー・ジャクソン・ソサエティ(HJS)が、反中プロパガンダ作戦を担うことで在英日本国大使館と契約し、報酬を受け取っていたと報じた。日本の大手メディアはほとんど報じていないが、ロシアや中国ではニュースとなっている。特に中国メディアは日本の恥ずべき行為として大批判を展開している。

◆アプローチは相手側から。アメリカの政策転換を気にした?
 タイムズ紙によれば、もともとHJSは、2016年の初めに他社と共同で日本大使館にアプローチしており、両社は、日本の話題を「主要な英ジャーナリストと政治家のレーダーが探知できるようにする」という提案を行っていた。ターゲットには、タイムズ紙、テレグラフ紙、ガーディアン紙、エコノミスト誌のレポーターや、下院の外交特別問題委員会のメンバーである政治家も含まれており、「中国の拡大主義による西側の戦略的利益への脅威」にフォーカスする作戦だったという。2社が提示した料金は、1ヶ月1万5000ポンド(約210万円)だったが、最終的にはHJSが単独で1ヶ月1万ポンド(約140万円)で契約を締結した。

 その後HJSは、元英外相のマルコム・リフキンド氏にアプローチし、イギリスのヒンクリー・ポイントC原発に中国が関与することに懸念する記事に、筆者として名前を載せないかと持ちかけた。同氏の名前で昨年8月にテレグラフ紙に掲載された記事は、安全保障上、中国に現実的な目を向けよと述べたうえ、中国が原発に「裏口」技術で仕掛けをするかもしれないという不安を掻き立てる内容だった。同氏は、HJSと日本大使館の間に金銭的なやり取りがあったとは知らずに引き受けたとしている(タイムズ紙)。

 タイムズ紙は、この反中キャンペーンは、経済、領土問題などにおける日中関係の緊張を反映したものだとする。英諜報機関の元関係者は、日本は当時オバマ政権を完全に信頼することができず、アメリカの外交政策に変化があったときのために、他との関係強化に努力していたと指摘している。イギリスの政治家に話を聞いてもらえることが、日本側としては価値があったのではないか、とタイムズ紙に話している。

 在英日本国大使館は、タイムズ紙の報道に関してコメントはしていない。また、日本の大手紙から、この件に関する記事は、今までのところほとんど出されていないようだ。

◆中国猛反発も、受けて立つ勢い
 中国国営新華社は、報道が真実であるなら驚きであり卑劣な行為だとし、中国の急速な発展とイギリスとの健全な関係が、このような日本の下品な行為につながったと述べる。下手なトリックは、経済が低迷する日本の助けにはならないし、中国と西洋諸国との強まる結びつきを阻むこともできないとし、日本政府、メディア、大使館はだんまりを決め込んでいるが、今回の場合、「沈黙は金」ではなく、「恥」だと強く非難している。

 中国メディア、チャイナネットも、日本大使館の行為は常識に反し、スパイ行為と同じだと述べる。日本は満州事変から盧溝橋事件、真珠湾攻撃、尖閣諸島国有化まで、常に他を欺いてきたとし、その仕掛けの後にはより大きく、より卑劣な企てが付いてきたと主張する。しかし、いまや経済的、軍事的にも力をつけた中国は昔とは違うと述べ、汚いトリックに屈することなく、世界の舞台の中心に歩を進めていくのだと、中国の読者を鼓舞している。

◆危険なネオコン・シンクタンク?英教授警告
 英バース大学の社会学者、デビッド・ミラー教授は、HJSの活動を長年にわたり追跡している。同教授は、HJSは特定の利益をプロモートするために存在し、ある特殊な利害関係が自分達の興味や目的とマッチしたとき、金銭のために活動するとロシアのスプートニクに語っている。HJSは過去にイスラエル寄りの寄付者のために反イスラムのプロパガンダを広めたこともあり、かなり右寄りとされている。スプートニクはHJSをネオコン・シンクタンクと呼んでいる。

 スプートニクによれば、HJSは英保守党と密接なつながりを持っているが、多くの保守党の政治家は、英中蜜月を演出したオズボーン元財務相のように近年中国寄りになっているため、HJSが反中感情をプロモートするのは不思議だと考える人が多いという。しかしミラー教授によれば、保守党のなかにも、伝統的な第二次大戦後の世界秩序を望む人々もおり、彼らにとって、日本は大切な同盟国だという。これらの人々は中国に求愛するこれまでの動きを気に入っておらず、そこがHIJとの共通点だという。

 そう考えると、タイムズ紙の報道が本当なら、日本は今回HJSに報酬を渡し、イギリスの反中保守派に利用された感もある。また中国メディアがかなり日本を非難しているだけに、新たな日中間の火種となることも考えられる。メディア戦に慣れていない日本。残念ながら、今回は苦しい立場にあるようだ。