米国のトランプ大統領が、習近平中国国家主席に書簡を送り「建設的な関係を築きたい」とのメッセージを送った。米中首脳間の書簡は関係改善を探る動きが具体化しつつある表れと注目される。資料写真。

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2017年2月9日、米国のトランプ大統領が、中国の習近平国家主席に書簡を送り「建設的な関係を築きたい」とのメッセージを送ったことが明らかになった。米中首脳間の書簡が明らかにされたのは、安倍晋三首相の訪米などを通じて日米が接近する中、米中間でも関係の改善を探る動きが具体化しつつある表れと注目される。

ホワイトハウスの声明によると、トランプ米大統領は、中国の習主席への書簡の中で、「『建設的な関係構築』に向け主席と協力していくことを楽しみにしており、酉(とり)年の中国の繁栄を願っている」と表明した。中国外務省の陸慷報道局長は9日の定例会見で、習主席にトランプ大統領が送った書簡を受け取ったことを認め、「高く称賛する」と評価。「中米関係の発展と協力が両国の唯一の正しい選択だ」と語った。

中国の外交を統括する楊潔チ国務委員(副首相級)は2月初め、フリン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に対し、中国は論争や慎重に扱うべき問題を管理するため米国との協力を望んでいると述べていた。

トランプ氏は大統領に就任して以降、大統領令を連発、環太平洋連携協定(TPP)離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉宣言、メキシコ国境への壁建設、中東アフリカ7カ国からの入国禁止令など選挙中に公約したことを実行に移している。こうした中で、対中強硬策はいまだ具体的に打ち出されていない。

トランプ氏が大統領就任前に中国関連で打ち出した政策は、(1)「通貨操作国」として中国を指定(2)中国からの輸入品に45%の関税をかける―という厳しい内容だった。昨年12月以降中国の高官が政権移行チームと面談するなど、水面下で米中担当者が接触していた。

「通貨操作国」指定問題では、既に中国経済の減速から人民元レートが下落しており、人民元安を食い止めるため、ドル売り人民元買い介入をしているのが現状。介入をやめれば人民元はさらに下落するので「通貨操作国指定」は現実的ではない。

「中国製品に45%の関税をかける」ことも容易ではない。世界貿易機関(WTO)は、「WTOの調停機能を使うことをせず、WTOの承認なしに罰則を課すことはルール違反だ」と主張。この批判を受けて米国は「WTOの承認なしにUSTRが罰則を課すことを禁ずる」ことを成文法化しているが、中国製品だけをやり玉に挙げて高関税を付与するのはハードルが高い。中国でビジネス展開している米多国籍企業や米議会の反発も予想される。

米国にとって中国は最大の貿易赤字相手国だが、中国から米国への輸出品のうち約7割は多国籍企業はじめ米国関連企業の現地生産などによるもの。リーマンショックで経営不振に陥ったGMなど米3大自動車メーカーは中国への輸出や現地生産で息を吹き返した経緯がある。日本の対米輸出のほぼ全量に日本企業が関わっているのとは大きな相違がある。

トランプ政権が「対中制裁」を強行した場合、中国側が報復措置を講じる可能性もある。中国共産党機関誌・人民日報の国際情報紙「環球時報」は「トランプ大統領が中国に高関税を課すなら、iPhoneの売り上げは打撃を受ける」と警告している。

世界最大の消費市場となった中国市場は自動車をはじめ米国メーカーにとって不可欠のマーケット。中国は主要な輸出・投資先となっている。(1)米中合弁計画や米企業による中国企業の買収の差し止め(2)米国からの新規投資の制限(3)米企業を標的とした民事・刑事の訴追―などの形で締め出されたら経営へのダメージは甚大。さらに中国にとって米国債の売却も選択肢になり、その場合米国を中心とした世界中のマーケットが大混乱に陥るのは必至だ。米ボーイングに737型機など計300機(約4兆6000億円)の購入を発注済みだが、この約束を撤回・延期される恐れがある。

世界190カ国・地域でインターネットを通じてサービスを提供するアリババグループの馬会長は今年1月9日、トランプ氏と会談。中小企業による中国向け商品販売を支援することで、米国内に100万人の新規雇用を創出する計画を提案し、歓迎された。発展途上の中国企業にとっても米国市場の魅力は絶大だ。1月初旬に米・ラスベガスで開催された家電見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」では、出展企業約3800社のうち、中国企業は3分の1を超えたという。発展途上の中国にとっても、米国との全面対立回避は至上命題である。

“商売人”トランプ大統領は取引上手だが、世界に雄飛した華僑のネットワークを持つ中国の実業家たちも負けていない。「ウインウイン」の関係構築への協議が進行している。(八牧浩行)