白頭山英雄青年発電所を現地指導した金正恩氏(2016年4月23日付労働新聞より)

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金正恩党委員長が「業績作り」のひとつとして建設した白頭山英雄青年発電所。1号から3号まであり、最終的には昨年に完成したものと思われるが、ダム壁崩壊、発電機能低下など、ろくなニュースが伝わってこない。その一方、地元民の間からは「電気が供給されていない」との声が上がっていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

現地の情報筋によると、両江道(リャンガンド)を流れる川、西頭水(ソドゥス)の水力を利用した階段式の白頭山英雄青年発電所の設計出力は第1が5万キロワット、第2が3万キロワット、第3が2万キロワットで、合計10万キロワットだ。

北朝鮮当局は、発電された電気のうち、6万キロワットを人口3万の三池淵(サムジヨン)郡に送り、残りの4万キロワットを白岩郡の中心地と「10月18日総合農場」に送ると公言していた。送電塔の工事が2015年8月から2016年4月まで行われたが、未だに送電されていない。

住民の間では「手抜き工事で計画通りに発電できていない」との噂が広まっている。

別の情報筋によると、三池淵には1000キロワットの胞胎(ポテ)発電所と、600キロワットの中興(チュンフン)発電所があるが、白頭山英雄青年発電所の完成後も、何らかの理由で、甲山(カプサン)郡にある虛川江(ホチョンガン)発電所の電力を使用している。

白頭山英雄青年発電所は、中央からの無理な指示を受け、工事期間を短縮するために標準的な工法を無視し、手抜き工事を行なったため、発電所として機能していない可能性が高い。また、タービンの製造技術も低いため、設計どおりの発電量は達成できないだろうと情報筋は見ている。

この事態に頭を抱えているのは三池淵の住民だ。郡内の住宅では電気式の暖房設備が採用されているが、必要な電力量の3分の1(2万キロワット)しか送られてこないために機能せず、人々は寒さに震えている。情報筋は、「白頭山英雄青年発電所さえできれば、冬場の暖房の問題が解決されるという中央の宣伝を信じた自分がバカだった」と述べている。

そもそも、この発電所はかねてから「問題だらけで経済性がない」と指摘されていた。金正日政権時代の2002年に建設が始まり、一時ストップしていたのも、そのような理由によるものと思われる。

北朝鮮最大の水豊(スプン)ダムは76万5000キロワットの発電容量を誇る。その他にも40万キロワット級の水力発電所が6ヶ所存在するが、それに比べると白頭山英雄青年発電所は小粒だ。10万キロワットなら、太陽光発電所でも十分賄える規模だ。

北朝鮮当局が、白頭山英雄青年発電所の建設に費やした予算がどれぐらいかは明らかになっていないものの、工事の規模を考えると、相当額に達したものと思われる。しかし、それに見合う発電量が得られないであろうことは当初から明らかだった。

しかし金正恩党委員長は、そうした意見を無視して建設を強行。高級幹部の粛清、処刑が相次ぐ中、とても正恩氏に意見を言える雰囲気ではないため、誰も止められずに工事が進んでしまったのだ。