ウインナー1本で寿命が25秒も縮まる?(depositphotos.com)

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トンデモ情報? 荒唐無稽の似非科学? 虚々実々のガセネタ? 
 
 食事や行動で寿命の減少を測った「損失余命」は、どこまで信頼できる?

 ネットサーフィンするまでもなく、玉石混淆の怪しいサイトやら、虚々実々のトンデモ情報やらが、これ見よがしに氾濫している。またぞろ性懲りもなく、「損失余命」などという怪しげなキーワードが跋扈し始めた。

 食事や行動で寿命が短くなるというのだ。そこで、「損失余命」がトンデモ情報か? 荒唐無稽の似非科学か? 虚々実々のガセネタか? を調べてみた。その前に、まず寿命って何だろう?

 日本人の平均寿命は、女性87.05歳、男性80.79歳。男女とも過去最高を更新している(厚生労働省「平成27年簡易生命表」)。その理由は、がんや心臓病などの治療成績が改善されたためと見られる。

 ただし、2012年から世界1位だった女性の平均寿命は香港に先を越されて2位に転落、男性も3位から4位に甘んじている。

人間の平均寿命は最大で115歳、最長寿命は125歳!?

 長命長寿と言えば、早稲田大学の創立者大隈重信が信念とした「人生125歳説」だ。大隈は「人間は本来、125歳までの寿命を有している。適当なる摂生をもってすれば、この天寿をまっとうできる」(『人寿百歳以上』)を確信して生きた。

 ただし大隈は、1922(大正11)年1月10日、胆石症で磤天する。享年83。大正末期の日本人の平均寿命は46歳なので、かなりの長寿だった。

 そんな大隈の「人生125歳説」を裏付けるかのような研究が報告されている――。2016年10月5日、アルバート・アインシュタイン医科大学の研究チームは、世界40ヶ国、過去最大100年間分の人間の死亡に関するデータを分析し、「人間の平均寿命は最大で115歳、最長寿命は125歳」とする研究結果をイギリスの科学雑誌『Nature』に発表した。

 発表によると、最高齢記録は1990年代以降、伸びていないため、最高寿命は115歳が限界であるが、125歳まで生きる確率は1万分の1と結論づけている。

 確かな年齢記録がある最長寿記録は、1997年に死去したフランス人女性ジャンヌ・カルマンの122歳164日。大還暦(120歳)を迎えた史上唯一のカルマンは、1875年2月21日生まれ。同年に生まれた著名人には、作曲家モーリス・ラヴェル、心理学者カール・グスタフ・ユング、作家トーマス・マンがいる。

 ちなみに、1898(明治31)年3月生まれの日本人最高齢の大川ミサヲさんは、2015年(平成27)年4月、老衰のため117歳27日で永眠。現在は1900(明治33)年3月生まれの東京都在住の女性(氏名非公表)が存命する日本最高齢(116歳)だ。

 Wikipediaによると、2016年の時点で、世界の116歳以上の超百寿者(スーパー・センテナリアン)は10名、100歳以上の日本の百寿者(センテナリアン)は6万5692人。大隈の悲願だった125歳は未だに前人未到だ。
食べれば食べるほど寿命が縮まる食品の損失余命は、本当か?

 このようなセンテナリアンに共通する、遺伝的要因、環境的要因、心理的要因は、かなり研究が進んでいるが、今回のメイントピックは「損失余命(LLE ; loss of life expectancy)」。

 食事や行動のリスクを寿命の減少率によって表した指標、つまり、縮まる寿命率を計算したリスクの平均値が損失余命だ。

 損失余命の究明に、一役買っているのが環境学だ。環境学は、自然環境、社会環境、都市環境が人間や動植物に及ぼす影響を、物理学、化学、生物学、地球科学、社会科学、人文科学などの包括的なアプローチによって探求する分野。特に環境問題の未来を予測しつつ、総合的な対策を提案するのが特徴だ。損失余命も大きなモチーフの1つになっている。

 損失余命は、2016年9月に刊行された『それで寿命は何秒縮む?』(半谷輝己/すばる舎)でも紹介されている。しかし、食べれば食べるほど寿命が縮まるのは、確かだろうか?根拠は何か?損失余命の実態を見てみよう――。

 コーヒー1杯なら20秒、ロースハム1枚なら19秒、ウインナー1本なら25秒、白米お茶碗1杯なら39秒、ミネラルウォーター(軟水)1ℓなら59秒、ジャンボフランクフルト1本なら1分14秒、ひじきの煮物の小鉢なら58分......。

 意外な数字が並んで、驚いたかもしれない。

コーヒー1杯で20秒、寿命が縮む、その根拠は?

 コーヒー1杯なら20秒は、コーヒーに含まれるカフェインが膀胱がんの発症率を高めたり、胃を荒らすデータから算出している。だが、コーヒーを1日3〜4杯飲む人は、心筋梗塞、脳卒中、呼吸器障害などの死亡リスクが低下するとする研究もある(多目的コホート研究「JPHC Study」/国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループ)。

 ロースハム1枚なら19秒、ウインナー1本なら25秒、ジャンボフランクフルト1本なら1分14秒はどうか? 2015年10月、WHOは、ロースハムやウインナーの原材料になる加工肉や赤身肉が大腸がんの発症リスク高めると指摘した。

 つまり、加工肉をたくさん食べる人と食べない人の大腸がんの発症率や、大腸がんの死亡率などを加味して算出している。たとえば、ウインナー1本で25秒は、70年間、毎日50gを習慣的に食べたと想定した数字だ。
 
 白米お茶碗1杯で39秒は、毎日2合食べた想定で算出しているが、摂食期間などは不明。白米は、1kg当たり平均0.1〜0.2mgの土壌中の無機ヒ素を吸収することから算出している。だが、農水省のデータによれば、国内で無機ヒ素による健康被害の報告はない。

 ミネラルウォーター(軟水)1ℓで59秒はどうだろう? ミネラルウォーターに含まれる放射性物質ラジウムの含有量を加味して算出している。塩素消毒する水道水は、ヒ素やラジウムを低減させるという見解もある(参考:www.geocities.jp/sherpa_pochi/wadai18.html)。

 もっとも意外なのが、ひじきの煮物の小鉢の58分だろう。ひじきに含まれる無機ヒ素の濃度が高いのが理由だ。2001年10月、カナダ食品検査庁やニュージーランド食品安全局などが、ひじきには発がん性のある無機ヒ素の含有率が他の海藻類よりも高いと発表した。

 ひじきの煮物の小鉢の58分は、ひじきを茶碗1杯75g食べることを想定して算出している。厚労省は、2004年7月、毎週33g以内(水戻ししたヒジキ。体重50kgの成人)なら、WHOの暫定的耐容週間摂取量を下回るので、通常の食べ方では健康に影響は少ないとしている。

 また、ひじきは貧血を予防する鉄が豊富。食物繊維、カルシウム、マグネシウムも豊富なため、腸内環境の促進、便秘の解消、コレステロール値血圧・血糖値の抑制、がんや骨粗しょう症の予防、歯や骨の強化などの効果がある点を見なければならない。

 損失余命の対象は、このような食品以外に低体重、運動不足、大気汚染、ストレス、幼児虐待など多岐の分野にわたる。たとえば、タバコ1本なら12分だ。1日当たり1箱(20本)を40年間、毎日吸ったと想定して算出している。
損失余命には信じられる? もちろんデメリットもある

 さて、ここで注意すべき点がある。損失余命は、どの程度のリスクがあるのかが分かるメリットはある。しかし、デメリットもある。

 たとえば、栄養状態も食品に含まれる栄養素の必要度も個人差が大きい点だ。損失余命の数字は、リスクだけの平均値にすぎず、食品のプラス面やプロフィットは考慮されていない。

 しかも、数字の根拠になる研究データの信憑性が疑わしい場合があるのも否定できない。損失余命は、リスクとリターンを科学的に総合的に判断した数字では決してない。

 リスクとは何だろう? リスクのない食品はないし、プロフィットのない食品もない。損失余命に拘りすぎれば、ストレスが過大になり、逆効果かもしれない。あくまでリスクの目安なので、決して盲信してはいけない。

 損失余命は、トンデモ情報か? 荒唐無稽の似非科学か?虚々実々のガセネタか?どこまで信頼できるのか? それを決めるのは、あなただ。長命長寿のヒケツを知っているのも、あなただ。栄養バランスの良い食事、適度の運動、ストレスを和らげる休養や睡眠ということを。
(文=編集部)