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太陽系内で大きさと平均密度が最も地球に似た惑星である金星は「地球の姉妹惑星」と表現されることもあるのですが、大気圧は地球の90倍あり、地表温度は460度以上もあるという過酷な環境に包まれています。金星の着陸に成功したのはソ連の金星探査計画「ベネラ計画」の惑星探査機だけであり、着陸後も過酷な環境下では機器類を長時間動作させることができない状態です。そんな中NASAのグレン研究センターが、金星のような環境下でも数百時間〜数週間動作できるコンピューターチップの開発に成功しました。

Prolonged silicon carbide integrated circuit operation in Venus surface atmospheric conditions: AIP Advances: Vol 6, No 12

http://aip.scitation.org/doi/10.1063/1.4973429

NASA Demonstrates Electronics for Longer Venus Surface Missions | NASA

https://www.nasa.gov/press-release/nasa-glenn-demonstrates-electronics-for-longer-venus-surface-missions

We finally have a computer that can survive the surface of Venus | Ars Technica

https://arstechnica.com/science/2017/02/venus-computer-chip/

1981年に金星に着陸したソ連のベネラ13号は、金星の地表で127分間活動を続け、人類に初めて金星の地表のカラー写真を送信することに成功しました。もともとベネラ13号の金星の環境下での活動限界は32分間と設計されていましたが、想定の3倍も活動を続け、これが人類の金星の最長活動記録にもなっています。

ベネラ計画の探査機に搭載されていた精密機器類は、巨大で重量のある冷却システムを備えた耐圧容器に保護されていましたが、グレン研究センターは冷却システムや耐圧容器などの装備なしでも数日〜数週間動作するコンピューターチップを開発したことを発表しました。

近年開発が進んでいる「シリコンカーバイド(SiC)」は、金星のような過酷な環境下でも耐えられると考えられている半導体ですが、グレン研究センターは金星の環境下で動作する3mm×3mmのSiCチップを開発。SiCチップや回路類はニッケル合金製ワイヤーに収納され、太陽系の惑星の環境を再現できるテストマシン「GEER」で木星の環境下での動作をテストしたところ、521時間(21.7日間)にわたって正常に動作したことが証明されています。



グレン研究センターの研究チームは、「これは金星のような環境下で圧力容器や冷却システムなしでコンピューターチップが動作した初めてのデモンストレーションです。さらに技術が成熟すれば、SiCチップは金星地表の長時間ミッションを可能にするでしょう」と話しています。いまだ金星の地表探索は技術的に難しい部分がありますが、グレン研究センターの研究結果は金星の地表を動き回る探索ローバーの開発を見据えたものと見られ、2023年までに完成することが予想されています。