紙にナノ粒子のコーティングを施し、紫外線を照射して文字を印刷する技術を、米国と中国の研究者チームが開発した。熱で文字を消去でき、紙は繰り返し印刷できる。アメリカ化学会(ACS)が発行するナノ技術の学術誌『ナノ・レターズ』に論文が掲載され、 科学技術系ウェブメディアのPhys.orgなどが報じている

印刷の仕組み

論文を共同で執筆したのは、米国のカリフォルニア大学リバーサイド校とローレンス・バークレー国立研究所、および中国の山東大学の研究者ら。研究チームは、青い顔料の一種であるプルシアンブルーと、光触媒活性物質の二酸化チタン(TiO2)それぞれのナノ粒子を均等に混ぜ、普通紙の表面にコーティングした。この状態の用紙は青一色に見える。

用紙の一部に紫外線が当たると、表面から電子が飛び出し、電子が周辺のプルシアンブルー粒子も運び出すため、その部分だけが白く変色する。インクで文字を印刷するのとは反対に、文字以外の背景部分を光で"印刷"すると、「白地に青文字」の読みやすい状態になる。プルシアンブルーの代わりに別の色の顔料を使うと、その色の文字を印刷できる。

加熱して元通りに

一度印刷された紙は、少なくとも5日間は同じ状態を保ち、その後は一定条件下でゆっくりと青一色に戻る。より早く印刷を消去するには、摂氏120度で約10分間温めることで、元の状態に戻る。

さらに、この光で印刷するプロセスは、80回以上繰り返すことができるという。

コスト面の優位性

論文執筆者の一人、カリフォルニア大のヤドン・イン教授はPhys.orgの取材に応え、「光で印刷可能な紙は、コストの面で従来の紙と張り合える」と述べた。コーティングに使う材料は安価であり、普通紙にコーティングを施す際も浸したり噴霧したりといった単純な方法が使えるので、製造コストも低く抑えられるという。さらに印刷プロセスも、インクを使用しないことから、従来の印刷よりも費用効果に優れるとしている。

イン教授は、「われわれの次のステップは、この再書き込み可能な紙をより高速に印刷できるレーザープリンタを開発すること。また、フルカラーの印刷を実現する効果的な手法も研究していく」と述べている。

環境改善の効果も期待

従来の紙の生産と印刷物の処理は、環境に大きな悪影響を及ぼしてきた。Phys.orgによると、米国で伐採される材木の約3分の1が、紙とボール紙の原料になっている。廃棄された紙は埋め立てゴミの約40%を占めるうえ、古紙を再生する際のインク除去プロセスも公害の原因になっているという。

イン教授は、「我々の研究は、現代社会の経済と環境に大きなメリットをもたらすと考えられる」と語っている。

高森郁哉