アパホテルのデモ隊の正体は中共政府の使者? (C)孫向文/大洋図書

写真拡大

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 2017年2月5日、大手ホテルチェーン「アパホテル」が「南京事件」を否定する記述が存在する歴史書を常備したことを受け、「中日民間友好委員会」と名乗る在日中国人団体が抗議デモを開催しました。

■小規模なデモに大挙するマスコミ

 当初は1000人以上の参加者を募集していた今回のデモですが、実際の参加者は100人未満と小規模なものでした。しかし、そのような状況にもかかわらず、『中国中央テレビ』(CCTV)、『フェニックステレビ』といった中国の機関メディア、日本の左派系メディアら多くの報道関係者が取材に訪れました。

 多くの報道関係者が集結した理由はSNS上の呼びかけだと思います。僕が中国製SNS「微信」(WeChat)を確認したところ、「デモの様子を中国と日本に見せつけるためにマスコミを要請する」という内容のデモ主催者側からのメッセージが存在しました。メッセージに目を通すと、デモ主催者は日本人に真実の歴史を伝えることを目的としているようで、南京事件の犠牲者数は約30万人という中国側の主張を「事実」として拡散する意図だったようです。

 デモ参加者たちは、「JAPAN好きだ」などと書かれた垂れ幕を持って親日思想をアピールしていましたが、彼らの行動に怪しさを感じた僕が調査したところ、主催者のリーダーは「俊龍」という在日中国人で、「在日華人圏」(在日中国人サークル)という組織の代表を務めています。在日華人圏はホームページも設立しており、各地の在日中国人たちの交流の場となっています。

 在日華人圏は今回のデモを募集する際、「微博」(中国版Twitter)内の「吉林共青団」という組織のアカウントを利用していました。「共青団」とは「共産主義青年団」、つまり中国共産党の下部組織であり、在日華人圏の背後に中共政府が存在しているということです。そして在日華人圏は、中国向けのサイトに「日本の右派は南京事件の歴史を否定し中日友好を破綻させた。我々は平和を大事にしてデモを日本の人々やマスコミに見せることにより、30万人虐殺の真相を伝える」という、中共政府のプロパガンダそのままのメッセージを掲載しました。

 さらにサイト内には「中華を犯す者を、必ず抹殺する」という中国共産党の常套句を赤文字で掲載してアピールしていました。つまりデモ主催者側は、表面上は親日をアピールしながら、中国に対しては南京事件の報復を宣言していたのです。僕は、デモ隊の活動は「羊の皮を被った狼」だと思います。

 デモの参加者たちは、一般的な在日中国人ではなく特定の政治思想を持った人々です。参加者の一人は微信に「50万円出資する」と明言しました。おそらくデモを広報するためのビデオ動画編集などの費用目的だと思います。今回のデモでは中国国旗は使用されず、参加者たちは暴言を吐くことはありませんでしたが、それは中共政府主導のデモという真実をカムフラージュするためでしょう。

 僕は微博内で、デモ参加者たちに対し次々と否定的な発言をしました。その一部を紹介しましょう。

「日本に移民するなんて、真の愛国者じゃない!」
「たった40人しかデモに参加しないの?頼りないな!」
「彼らは民主主義国家でデモを楽しんでいるだけだ」
「ホテルに本が置いてあるだけでデモとは大げさな!」
「愚か者を扇動するだけの行為、(中国は)大国と名乗るな!」
「日本人が中国国内でデモしたらどうなる?」
「彼のビザを取り消して祖国に返させて」
「何かの組織に買収された30人」
「(デモは)中国国内でプラカードを持ってやれ!」
「日本が嫌いなら祖国へ帰れよ!」
 

 また、日本ではデモが弾圧されないことに対する風刺も書き込みました。

「日本の右派は戦車など使わないから安心しなよ」(天安門事件で人民解放軍が戦車でデモ隊を弾圧したことを揶揄して)
「日本ではデモ隊は警察に保護される。なんて安全で素敵な国だ!」
中国城管(国民を殴る役人)を派遣してアパホテルをぶっ潰せ!」(皮肉の意味をこめて)

 今後も、在日中国人による平和活動を名目にしたプロパガンダ活動が発生することが予想されます。僕は上述のような活動を行った在日中国人・外国人は在留資格を停止し本国に送還するべきだと思います。

著者プロフィール


漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。