2017年シーズン10大注目ポイント@中編

「10大注目ポイント@前編」はこちら>>>

(5)若手ドライバーが次々と台頭。世代交代の波がやってくる?

 2017年は、ドライバーの世代交代も進む。

 王者ニコ・ロズベルグが引退し、ジェンソン・バトンも実質的にF1界を去った。その一方で、若手ドライバーの台頭は目覚ましい。


20歳のエステバン・オコン。女性人気が爆発しそうな可愛らしさだ 昨年のスペインGPでレッドブルに昇格するや、18歳227日という史上最年少で初優勝を果たしたマックス・フェルスタッペンは、その最右翼だ。1983年の統計開始以来で最多となる78回というオーバーテイク回数を決めるなど、走りの鮮やかさでも高い評価を受けた。2017年、レッドブルのマシンの出来いかんによっては、セバスチャン・ベッテルが持つ23歳134日という記録を大きく塗り替えて史上最年少チャンピオンに輝く可能性も十分にある。

 そして、2013年のデビューからウイリアムズで走り続けてきたバルテリ・ボッタスも、大きな節目を迎えている。ロズベルグの引退によって、急きょメルセデスAMGのシートを獲得することになったからだ。これまでに9度の表彰台を獲得するなど安定した速さを見せてきた27歳のボッタスが、2017年は優勝争いに加わることになりそうだ。

 それ以外にも、2016年にはモナコGPで最速の走りを見せ、マレーシアGPでは勝利を収めたダニエル・リカルド(27歳/レッドブル)がいる。また、やや年齢は上だが 2015年ル・マン王者のニコ・ヒュルケンベルグ(29歳)はルノーへ移籍し、自身初めてワークスチームでF1を戦う。まだ表彰台はないものの、フォースインディアでエンジニアから極めて高い評価を得てきた彼がどのような走りを見せるのか楽しみだ。ザウバーとフォースインディアで計7度の表彰台を手にしてきたセルジオ・ペレス(27歳)も、速さを増してきたフォースインディアのエースとしてさらなる飛躍を見せるだろう。

 キミ・ライコネン(37歳/フェラーリ)、フェルナンド・アロンソ(35歳/マクラーレン・ホンダ)、フェリペ・マッサ(35歳/ウイリアムズ)の世代から、ルイス・ハミルトン(32歳/メルセデスAMG)、ベッテル(29歳/フェラーリ)の世代、そしてさらに若い世代へ……。2017年のF1には世代交代の波が押し寄せ、それに抗(あらが)おうとするトップドライバーたちとの戦いが激しさを増しそうだ。

(6)父親は大富豪。鳴り物入りで超大型ルーキーがF1デビュー

 2017年にF1デビューを果たす新人は、ひとりしかいない。しかしこのひとりが、いろんな意味で「大物」だ。

 名門ウイリアムズのシートを射止めた18歳のランス・ストロールは、昨年ユーロF3を圧倒的な速さで制してF1スーパーライセンスを取得し、飛び級デビューを果たすこととなった。昨年からすでにウイリアムズの全面協力のもと、2014年型F1マシンで8000kmものプライベートテストを重ね、実戦デビューに向けて準備を着々と進めている。

 だが、今のところストロールに注目が集まっているのは、彼の速さというよりも、彼のバックボーンゆえだと言わざるを得ない。

 彼の父親ローレンス・ストロールは、ラルフ・ローレンやピエール・カルダン、トミー・ヒルフィガー、マイケル・コースといった有名ブランドに投資して莫大な資産を築いたカナダの大富豪で、総資産は26億ドル(約2940億円)という人物。自分自身が趣味でレースをしていたほどのモータースポーツ好きで、息子のレース活動にも惜しげもなく資金を投じ、ユーロF3では名門チームのプレマを”購入”して潤沢な予算で他を圧倒した。F1のテスト費用も含めて8000万ドル(約90億円)もの資金を投じたと言われている。

 このスケールの違う大富豪の息子を、「ペイドライバー」と見なす者も少なくない。しかし、本人はそんな批判の声には慣れっこで、「結果がすべてだ」と言い切る。

「お金がなければレースをすることができないのは事実だし、否定はしない。だけど、お金で勝利を買うことはできない。いくらお金があっても、ステアリングホイールを左へ右へと切って速く走ることができなければ、レースに勝つことはできないんだ。スーパーライセンスポイントが40なければ、F1に参戦することは許されない。

 僕はそれを実力で手に入れるために多大な努力をしてきたし、実際にユーロF3で戦い、圧倒的な速さを見せ、タイトルを獲ってここまでやってきた。でなければ、たとえお金があってもここに辿り着くことはできないからね」

 周囲の目を気にして結果を焦る様子もない。

「ウイリアムズは僕に対して、1年を通して成長することを期待してくれていて、これは長期的なプロジェクトだ。最初から結果を焦る必要はないし、ラップごと、レースごとに一歩ずつ成長していきたいと思っているよ」

 あのマックス・フェルスタッペンも、17歳でユーロF3からF1へ飛び級デビューを果たして世間をあっと言わせたうえに、際立つ走りで実力を認めさせた。そのフェルスタッペンでさえ成し得なかったユーロF3タイトルを引っさげてのF1昇格を果たすストロールは本物かどうか? いろんな意味で”大物”といえるルーキーに注目したい。

 そして2014年のユーロF3で、そのフェルスタッペンを制して王者となったのが、20歳のエステバン・オコンだ。翌年にはGP3に昇格してここでもタイトルを獲得し、メルセデスAMGとルノーによる争奪戦の末、2016年後半戦にメルセデスAMG配下のマノーからF1デビューを果たした。

 昨年は出場した9戦すべてで完走を果たし、フォースインディアやルノーでのテストでもエンジニアから極めて高い評価を得た。その結果、2017年はランキング4位のフォースインディアへと移籍する。フェルスタッペン以上と目されるオコンの走りにも期待が集まる。

 2015年にGP2で圧倒的な速さと強さでチャンピオンに輝いた24歳のストフェル・バンドーンも、2017年、ついにフル参戦デビューを果たす。

 昨年のバーレーンGPではフェルナンド・アロンソの欠場を受け、金曜の朝に現地に駆けつけてそのままF1デビュー。予選ではジェンソン・バトンを上回り、決勝では10位に入賞するという離れ業をやってのけた。極めて冷静沈着な優等生ぶりにはチームの誰もが感心しており、すでにルーキーという雰囲気ですらないバンドーンがアロンソ相手にどんな走りを見せるのだろうか。

(7)マクラーレン・ホンダは表彰台に立つことができるのか?

 日本のファンとしては、マクラーレン・ホンダの優勝がいつ果たされるのかも、気になるところ。ただ、現実的に考えて、車体とパワーユニットの両面でブレイクスルーが果たせなければ、いきなりトップに駆け上がることは難しいだろう。

 マクラーレンの車体開発方針を鑑(かんが)みれば、エイドリアン・ニューウェイ(レッドブル)のような独創的なアイディアが形になる可能性は低く、レギュレーション大幅変更の年だからといって、ずば抜けたマシンが生み出されることはなさそうだ。ホンダの長谷川祐介F1総責任者も「マクラーレンはよくも悪くも堅実ですから、大きく外すということはないと思っていますけど、思ったよりよくなっちゃったということもないかと思います」と語っている。

 一方でホンダのパワーユニットも、いきなりメルセデスAMGを超えてトップに躍り出ることは容易ではない。トークン制による開発規制が撤廃されるとはいえ、昨年は4メーカーで唯一、出力向上に不可欠とされるセミHCCI(予混合圧縮着火)技術を実戦投入できていない。

 そもそも、メルセデスAMG、フェラーリ、レッドブルという3強チームの速さが揺るがないかぎり、表彰台を獲得することすら並大抵のことではないのだ。

 昨年は「3強6台」以外の表彰台は、全21戦でフォースインディアの2回とウイリアムズの1回のみ。しかし、それは全開率が高いサーキットなど、特徴的なコースをピンポイントで狙い澄まして自分たちのマシンの長所を生かせば、そこまで手が届くということの証(あかし)でもある。

 昨年、マクラーレン・ホンダの最高位は5位(モナコGP・アメリカGP)。もう一歩だけ前に進むことができれば、ピンポイントでの表彰台獲得も見えてきそうだ。もちろん、少しでも早く3強チームに並ぶ速さを手に入れ、表彰台争いの常連になってくれることを願いたいが……。

(後編に続く)

■モータースポーツ 記事一覧>>