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市場調査企業である英国IHS Markitの日本法人IHSグローバルが主催する「ディスプレイ産業フォーラム2017」が、2017年1月25日〜26日の2日間にかけて開催された。同社のディスプレイ部門およびコンシューマ・エレクトロニクス部門の各分野担当アナリストが一堂に介して、世界規模のフラットパネルディスプレイ(FPD)産業の2016年の市場調査結果を発表したほか、2017年および2018年以降の動向を予測した。

会議の冒頭、同社ディスプレイ部門を統括するシニアディレクタ―(台湾駐在)のDavid Hsieh(謝勤益)氏(図2)が、FPD市場全体を概観した。

同氏は、まず、「テレビ用液晶パネルの平均サイズがこの10年で10インチ大きくなり、2016年には42インチに達した。2023年には45インチに達することが予測されるほか、大型では現在55インチも伸びている」と指摘したほか、「このようなサイズ拡大や古いパネル製造工場の閉鎖が重なり、2016年後半から2017年第1四半期にかけて大型パネルの供給不足が生じ、結果として価格が高騰し、パネルメーカーは2016年第3四半期に黒字に転換した。しかし、過剰在庫により2017年第2四半期から需要は軟化する可能性が高い」と、回復基調が一時的なものであるとの見通しを示した。

また、「大型パネル不足の事態が発生したこともあり、現在3つの第10.5世代ファブの建設が決まっているほか、さらに3つのファブの建設が計画されている。このため2019〜2020年に再び供給過剰に陥る可能性が高い」と、今後も予断を許さない市場概況が続くとし、「ディスプレイの売上高での成長は、長期レンジでは期待できない」と、市場としての成長性が鈍化することを強調。「今後は利益が売上高より重要になる。付加価値を増すにはハイエンド(高解像度、高画質、新機能)製品を手掛ける必要があるだろう」とし、その最有力候補が有機EL(AMOLED)ディスプレイであり、結果として有機ELへの投資が集中しているとした。

○注目はiPhoneに搭載予定の有機EL

有機ELパネルの出荷は、数量ベースで2016年は46%増加し、年間生産も4億枚を超え、その勢いは留まらず2020年には8億枚を超える見通しだという。中でもスマートフォン(スマホ)への搭載率は2017年で27%となり、スマホ用ディスプレイパネルとしていよいよ主流になろうとしている。特に注目されるのが、Appleが2017年中に販売するであろうiPhoneの次世代機にSamsung Displayの有機ELパネルを搭載するとの予測がなされている点だ。どのような形態なのか、フレキシブル有機ELを搭載するのか、などが注目の的となっているが、画面背景をバックライトが必須の液晶の白色から、黒に変換してコントラストを改善するとともに消費電力を下げる可能性もあるという。

○Samsungは小型有機ELパネルを年間5億枚出荷

同氏は「Samsungは、有機ELパネル市場を技術の面でも数量の面でも圧倒的な優位性で支配しようとしている」と指摘する。Samsungのスマホ用小型有機ELパネルの出荷枚数は、2017年の1年間だけでも5億枚が予定されており、市場をほぼ独占することとなる(表1)。中国勢も負けじと有機ELのファブを次々と建設し、2016年第3四半期から、一部のメーカーが出荷を開始したものの、品質でも数量でSamsungに大差をつけられる状況に陥っている。

○もう1つの注目株QLEDがOLEDに挑む

韓国LG Displayが計画していた第10.5世代有機ELパネル製造ファブの建設は凍結され、代わりに液晶パネルを製造することになったと同氏は語っており、その背景には今のままでは、高価な有機ELテレビが液晶テレビに置き換わることはないとの見通しがあるようだ。

有機ELテレビの将来性は、パネルが潤沢に供給できるか否かにかかっている。図3の上がLGのテレビ用大型パネルの技術ロードマップだが、現在同社は、真空蒸着で作成した白色有機ELパネルで有機ELテレビ向け市場を独占しているものの、本命は印刷方式ととらえて開発に挑戦している。印刷方式になれば、安価に量産できるようになろうが、技術的なハードルは高く、量産がすぐにできるとは考えにくい。一方、スマホ用小型有機ELパネルで市場を独占するSamsungは、テレビでは白色有機ELの採用を避け、量子ドット(Quantum Dot)層を印刷法で形成した液晶パネル「QLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)」で、LGの有機ELに挑もうとしている。大型有機ELパネルの品質や量産性の問題もあり、テレビ用大型パネルの先行きは混沌としているといえる。

(服部毅)