「ポスト・グローバル」で浮上する人材、沈む人材

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■「ポスト・グローバル」でも日本は再浮上する

イギリスのEU離脱、トランプ大統領就任など国際情勢が目まぐるしく動いています。そして世界はいま、ポスト・グローバルの時代に入ったようです。私は、グローバル化の前が国際化(インターナショナリズム)だったと考えています。今後は、両者のハイブリッドのような形態に移行していくと思われます。

人材ニーズという観点からすると、この10年間、すなわちグローバル化の時代に求められる人材の能力、要件は、海外の駐在経験だけではなく、地球的規模での情勢分析能力と創造的な思考力でした。これからは、それらに加えて、相手国との人間関係の構築力が改めて重要度が増していくはずです。

そうすると、再び駐在経験が重みを持ってきます。ある意味では、国際化時代に逆戻りするわけですが、その際のコミュニケーション力は、国際化とグローバル化の時代に求められた要件の両方を満たす必要があります。つまり、より高度なスキルが求められます。

ここで改めて、国際化とグローバル化の違いに触れておきます。前者は付き合い方の単位が国対国です。それに対して、後者は国対複数国。すなわち地球規模のスケールになりました。それを日本に当てはめれば、日本対アメリカ、ロシア、中国だったものが、日本対欧米あるいは世界各国という関係になっていったのです。

グローバル化の時代には、東京や大阪に本社を置く大企業だけでなく、地方からもダイレクトに海外に出ていくということが当たり前でした。ところが、ポスト・グローバルになってくると、以前のように、1つの相手国に対して人脈を持っているか、持っていないかがより重要になってきます。その点では人材層の厚い、そして相手国との人脈を持つ大企業が有利かもしれません。

そこで考えてほしいのは、新たなコミュニケーション力を生み出す人材の基本的な資質ということです。ポスト・グローバルの時代では、フェイス・トゥ・フェイスの親密度によって物事が動いていくでしょう。そして、その人間関係の構築こそ、日本人が得意とする分野にほかなりません。昔の商社マンは、まさにそれで海外に橋頭保を築いてきました。

■武器になるのは個人が持つ底力

ところで、日本はそもそもグローバル時代に、その流れに乗っていたかというと、私は否定的です。乗ったとしても周回遅れという感じでした。しかし、それが逆に怪我の功名になりそうです。グローバル化の弊害というのは、極端な貧富の格差を生んでしまったということです。日本はそれが比較的軽度ですんだことは幸いでした。とはいえ、広がり始めた格差は是正すべきです。

これからの時代に日本が発揮できる強みは何かということですが、それは日本企業が持つマネジメント力です。とりわけアジアでの評価が高いことは特筆されていいでしょう。理由はマネジメントスタイルにトップダウン型、それからボトムアップ型、ミドルアップダウン型の3つのうち、日本はこのミドルアップダウン型の経営にあります。

この背景には、国の持つ文化があります。ミドルアップダウン型の経営が生きるのは、日本に昔から「和の文化」が根づいているからです。最近、アメリカのビジネススクールで日本型の経営の研究が人気だというのも、やっぱりそのスタイルに着目しているからでしょう。

これをコンピュータのシステムに例えれば、それは基本ソフト、つまりOSの部分に当たります。ビジネスモデルをはじめ、技術開発、マーケティングはアプリケーションです。そこで、私どもがポスト・グローバル時代に考えるヘッドハンティングもOSを重視するということになります。まさに、それこそが人間力であということです。

これまで、日系資本の人材紹介エージェントも、ほとんどがアプリケーションの部分だけを見て、人材の紹介を手がけていました。しかし、OSを見ないと、中長期にわたっての理想的な就業にはつながっていかないし、成果は出ません。当社はもともと、OSを判断したマッチングをしてきましたから、これからのトレンドは追い風になってきます。

そこで、現時点で日本国内においての市場価値ある人材とは、どういう人かというと、ほかの組織に行って、その異文化に接したときにも、適応できる人です。ただ残念ながら、求人企業側がまだ、そうした視点を持っていません。当面の需要であるアプリケーションの領域ばかりに、目をとらわれてしまっています。

ポスト・グローバル時代になると、武器になるのは人間関係構築力のような個人が持つ底力(OS力)です。新しい組織になじんで、周囲から慕われ、結果を出す。そんな柔軟性、コミュニケーション能力を持つ人にスポットが当たることになるのは間違いありません。

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武元康明(たけもと・やすあき)
サーチファームジャパン
1968生まれ。石川県出身。日系、外資系、双方の企業(航空業界)を経て19年の人材サーチキャリアを持つ。経済界と医師業界における世界有数のトップヘッドハンター。日本型経営と西洋型の違いを経験・理解し、それを企業と人材の マッチングに活かしている。クライアント対応から候補者インタビューを手がけるため、驚異的なペースで飛び回る毎日。2003年10月サーチファーム・ジャパン設立、常務、08年1月社長、17年1月会長、半蔵門パートナーズ社長を兼任。

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(サーチファームジャパン会長 武元康明 岡村繁雄=取材・構成)