『アリババの経営哲学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)

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 ジャック・マー氏は、中国のアリババグループの創業者であり、2017年現在も同社の会長を務める人物です。

 アリババグループはB2B(企業間商取引)サイト「アリババ」、B2C(企業対消費者取引)サイト「Tモール」、C2C(消費者間取引)サイト「タオバオ」などを擁する中国最大のIT企業です。2016年3月には傘下のサイトで売買された流通総額で、ウォルマートやカルフールを抜き、世界最大の流通企業となりました。

 マー氏自身も2014年には中国で最大の資産家となりましたが、同時に非常に個性の強い人物として知られる彼の成功哲学を、『ジャック・マー アリババの経営哲学』(張燕・著 永井麻生子・訳)から紐解いていきたいと思います。

◆成功の秘訣‖腟舛魎咾:「大きな鯨ではなく小さな海老を狙う」

 アリババグループは、B2B(企業間商取引)サイト「アリババ」と共に規模を拡大していきました。

 この「アリババ」の最大の特徴は中小企業をターゲットにしているという点です。マー氏は大企業を「クジラ」、中小企業を「小エビ」に喩え、「クジラは他の人に追いかけさせよう。私たちは小エビを捕まえればいい」と述べています。

 豊富な資金があり、B2Bへの投資も積極的に行なえる大企業を狙わず、あえて中小企業をターゲットにする理由を彼はこのように述べています。

「もし企業を金持ちと貧乏人に分けるとしたら、インターネットは貧乏人の世界だ。大企業には自分専用の情報網があり、巨額の広告費があるが、小さな企業にはそんなものはない。だから中小企業にこそインターネットが必要なのだ」

 こうして目先の利益よりも己れの大義を貫き、中小企業の味方であり続けた「アリババ」は、結果として企業の85%を占めると言われる中小企業の市場を独占し、同サイトは4180万以上のユーザーが登録するメガサイトになるのです。

 このように、大義を打ち立て、それに向かってひた走る経営者像は、日本のある経営者を彷彿とさせます。そう、ソフトバンクグループCEOの孫正義氏です。

 実はジャック・マー氏と孫正義氏の親交は深く、現在、ソフトバンクグループはアリババグループの筆頭株主となっており、一方でジャック・マー氏はソフトバンクグループの社外取締役を務めるに至っています。

 この2人の出会いは1999年まで遡ります。当時、孫氏は投資先の企業を探しており、投資を望む企業の経営者を公募して、1人1人と面接する機会を設けていました。そしてその中に当時まったく無名だったジャック・マー氏がいたそうです。

 投資を望む経営者たちが1人20分の持ち時間で事業の説明をする中、マー氏の番になると孫氏はわずか6分間で話を打ち切り、その場でマー氏とアリババに投資することを即断したそうです。後日、ソフトバンクグループはアリババの株式30%を購入することを正式に発表します。たった6分で3000万ドルの資金を引き出したこのエピソードは今でも語り草になっています。

◆成功の秘訣∪ご屬両鐚韻魑燭ΑА崟い涼罎髻惶嬶ち』して眺める」

 ジャック・マー氏が創設したアリババ社はユニークな文化と規則があることが知られていますが、その中でも最も「変わった」規則は、「社員は入社3か月以内に逆立ちをマスターしなければならない」というものです。

 なんと同社では、男性社員は30秒間、女性社員は10秒間逆立ちができるようにならなかった場合、どんな優秀な社員でも荷物をまとめて退社しないといけないそうです。

 何故こんな規則があるのでしょうか? その理由をマー氏はこのように述べています。

「第一に、逆立ちは身体を鍛えることができる。何の道具も必要とせず、いつでもどこでもできるので、大変便利だ。第二に、逆立ちの練習を通して、社員に物事をいろんな方向から考えること、別の見方で見ることを促せる。このようにしてイノベーション思考を養うのだ」