By NASA Goddard Space Flight Center

地球は1つの大きな磁石であり、惑星全体を取り巻く地磁気が太陽から届く太陽風や宇宙から降り注ぐ宇宙線を跳ね返す「バリアー」として作用していることはよく知られています。また、この地磁気は長い年月で見ると向きが変化しており、数十万年〜数百万年という時間軸でS極とN極が反対になる「地磁気逆転」が起こっていることもわかっています。なぜこのような事実が判明しているのか、そしてこの先起こると考えられている地磁気逆転はいつ、どこから始まろうとしているのか、そんなことについての研究が続けられています。

Why Scientists Think Earth's Magnetic Poles Are About to Flip

http://www.livescience.com/57778-clues-earth-magnetic-poles-will-flip.html

Why the Earth's magnetic poles could be about to swap places - and how it would affect us

http://theconversation.com/why-the-earths-magnetic-poles-could-be-about-to-swap-places-and-how-it-would-affect-us-71910

地球の磁場が発生するメカニズムにはまだ謎とされている部分が多く残っているのですが、最新の研究では地球の内部を対流する溶けた鉄のマントルに起因するものであるという説が有力視されています。磁気は物体を流れる電流の作用によって生ずるもので、文字どおり地球規模で流れる大きな電流によって、惑星全体が1つの電磁石であるという見方が広く知られるようになっています。



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そして、この地磁気は徐々に弱まる傾向を見せていることが、長年の研究から明らかになっています。欧州宇宙機関が打ち上げた地磁気観測衛星「SWARM」の観測データによると、地球の地磁気は「10年間で5%」というペースで強さが減少していることが明らかになってきました。仮にこのペースで地磁気が弱まり続けると、2000年後には強さがゼロに達する計算となるのですが、このタイミングが「地磁気逆転」のタイミングになるという見方も示されています。地球で最も最近に起こった地磁気逆転は78万年前と見られており、サイクルからすると近いうちに再び地磁気逆転が起こってもおかしくないと考えられています。

地球磁場が予想より早く弱まっていることが判明、地磁気反転の時期は? - GIGAZINE



地磁気の減少と同じように知られているのが、地磁気の極が移動するポールシフトと呼ばれる現象です。これは現在の地球でも発生しており、磁北が1年に約64キロというスピードで東へ向かって移動しているとする研究結果が発表されているとのこと。

また、地磁気の強さは全球で一様ではありません。SWARMを使った観測では、以下の地図で赤く描かれたインド洋周辺が最も地磁気が強く、北米大陸周辺が最も弱いという事実が明らかになっています。



また、この地磁気の分布に呼応するように、地球上空の宇宙空間でも変化が生じています。南大西洋異常帯と呼ばれる現象は、通常は地球上空1000kmあたりに存在するヴァン・アレン帯の高度が南米大陸を中心としたエリアで300km〜400kmにまで低下しているもの。ヴァン・アレン帯は地球の磁場にとらえられた陽子、電子からなる放射線帯で、この中では放射線レベルが強くなっています。この付近を飛ぶ人工衛星や国際宇宙ステーションに放射線の影響が大きく現れ、コンピューターのトラブルが引き起こされやすくなるため、宇宙飛行士は船外活動を制限するなどの対策を講じています。



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現在の地磁気は計測器などを使えば容易に測定することができますが、過去の地磁気の様子は土壌などに残された「地磁気の化石(古地磁気)」を調べることによって、どのような状態であったのかを知ることができます。この分野は「考古地磁気学」と呼ばれ、人間の歴史よりもはるかに古い、地質時代の様子を知ることもできる学問・技術です。

これらの調査は、古い時代の陶器や粘土を固めて作った家の痕跡などを用いて行うことが可能とのこと。アフリカのジンバブエやボツワナを流れるリンポポ川流域の地域で発見された陶器などの残留磁気を調査したところ、西暦1300年ごろに一帯の地磁気が急激に減少していたことが判明。これは、現代の地磁気減少と同じようなことが起こっていたことを示すものとなっています。

考古地磁気学とは | 日本考古地磁気データベース



地磁気逆転の時期を予測する手がかりの1つが、地球内部に存在する「コア」および「マントル」の状態を観察することです。コアとマントルの状態は地磁気の状態に密接に関わっていると考えられており、ちょうど大気の状態を観察することで天気予報を行うように、地球内部の様子を観察することで「地磁気予報」を行おうというのが、その考え方のベースとなっています。

しかし、数百kmに及ぶ地殻の向こう側にある地球内部の様子をつぶさに観察することは不可能です。そこで用いられているのが、地震や人工的な爆発によって生じた振動の伝わり方を観察することで、地球内部の構造を求める手法「地震波トモグラフィー」です。地球内部の構造には場所によって密度にバラつきがあり、密度の低いところでは振動が早く、密度の高いところでは振動が伝わるスピードは遅くなります。この特性と、密度の境界で生じる屈折などのデータを用いて地球内部の様子を知るというものです。

この調査からは、アフリカと太平洋を中心とする広い地域の地下に、地震波の伝播速度に異常が見られるLarge low-shear-velocity provinces (LLSVPs:大規模な低せん断速度領域)と呼ばれる部分が存在していることが確認されています。この領域は別名「スーパープルーム」とも呼ばれ、地球のコアと下部マントルが接する部分と考えられています。この境界層に地震波が伝わると、波の伝わり方が変化していると考えられています。

興味深いのは、先述のリンポポ川で確認された地磁気減少が見られた地域と、LLSVPsの位置が近い場所にあるということです。地磁気の発生にはマントルを含めた地球内部の構造が大きく関与しているものと考えられていることから、この地域ではマントルによってコアを形成する鉄の流れが変化し、それによって地磁気の発生が影響を受け、弱まる時期が生じていたものと考えられているとのことです。

このような変化は、特に南半球で見られることが特長とのこと。現代の技術では、マントルの観察による「地磁気予報」を高い精度で行うことはまだまだ難しいようですが、その変化はアフリカを中心とした地域で起こり始めると予測されています。



By NASA Goddard Space Flight Center