ニューイヤーカップの北九州戦ではトップ下で先発し、74分までプレーした針谷(34番)。随所で持ち味を発揮した。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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【2017 Jリーグ DAZNニューイヤーカップ・鹿児島ラウンド】
ギラヴァンツ北九州 0-1 ジュビロ磐田
2017年2月8日/11:00/鹿児島県立サッカー・ラグビー場
 
 
 新星輝く――。今春高校を卒業する新人のMF針谷岳晃が北九州戦でトップ下に入り、躍動感溢れるプレーを随所で見せた。
 
 3日前の熊本戦で先発出場した中村俊輔は、この日は登録メンバーから外れ、ベンチから若手主体のチームの戦いぶりを見守った。代わって磐田の司令塔のポジションを務めたのが、埼玉県の昌平高3年生であり、卒業後に磐田に加入する弱冠18歳の針谷だった。
 
 ピッチを跳ねるように軽快に駆け回るのが特徴的な磐田の34番。何度も空いたスペースに顔を出し直してボールを引き出し、つなぎ役として揺さぶりをかけた。
 
 キャンプ中には名波監督との個人面談があり、当面の起用法などについて話し合ったという。ボランチではフィジカル的に重圧を受けてボールを追う時間が長くなってしまうため、プレーに制約が増えてしまうかもしれない。そういった観点なら、プロのスピードに慣れて持ち味を出すためにも、しばらくは(キャンプ中)、「トップ下でトライする」ことになったそうだ。
 
 もちろん、磐田のトップ下と言えば、新10番、中村の主戦場である。ただ、だからこそ、今でしか積めない経験ができるとも感じたと言う。

 針谷は素直な気持ちを語る。
 
「俊さんには練習から学べるところが多く、一緒にプレーできてとても有難いです。ただ、負けられないという気持ちもあります。そこで胸を借りる気持ちで思い切って取り組んでいきたいです」
 
 昌平高をインターハイのベスト4に導いたテクニシャン。166センチと小柄だが、バイタリティ溢れる運動量を生かし、縦横無尽に細かいステップで駆け回る。そしてハイレベルな技術と広い視野を駆使して、ボールを360度どこにでも、思ったところにコントロールできる。「囲まれてもボールを失わないところ」を自身も特長に挙げる。
 
 この北九州戦では、ボールをより多く触れることを意識した。それでも、「まだまだ俊さん(中村)に比べたら、タッチ数自体が少ない。そこは俊さんからも、(名波)監督からも言われた」そうだ。

PHOTO【NYC鹿児島ラウンド】北九州0-1磐田 若手が躍動し、磐田が勝利を掴む
 
 この北九州戦のハーフタイムには、中村と名波監督からアドバイスを受けた。まず中村からはよくスペースには顔を出しているものの、「もっと、相手の嫌がるところに入っていかないと。あとはボランチとの関係性や位置関係を意識するようになれば、さらに簡単にパスをさばけるようになる」と指摘されたという。
 
 一方、名波監督からは「攻撃は自由にやっていいぞ」と檄を飛ばされたそうだ。そのように思い切ったプレーをして、トライ&エラーから学ぶことを求めていた。
 
 後半には太田の崩しからのクロスに、針谷がダイレクトで合わせシュートを放ったシーンがあった。「相手のマークを外してから中に入って、フィニッシュにつなげられた。ひとつの形ができた」と手応えを得た。

 おそらくはJ2昇格争いに食い込むであろう北九州に主導権を握らせず、自身の間合いを保ちながらプレーできた。さらに高いレベルに、より決定的な仕事をすることがテーマになるが、「もっとできた、と思います。これで満足してはいけない」と、自分自身への欲求も強くなった。
 
「次のプレーを読む力を上げていきたい。それに……」
 
 針谷は自身の感じた課題を挙げる。
 「点に関われる仕事を増やしていきたい。顔をたくさん出し続けること。そこから崩すこと。『やれる』というより、課題のほうが多いです。周りとの距離感を大切にしながら、プレーのスピードを上げて、その精度を上げていくことが大切」
 
 キャンプの日々で、プロのスピードには慣れてきた。なにより、日本でトップ下の最高の“教科書”と言える中村俊輔が一番傍にいる。そのなかで、いろいろな不足というよりも、自分自身が生きるために、やるべきことが見えてきた。
 
 何より、前述のその具体的な課題の数々を挙げている時点で、他の18歳よりも先行して貴重な経験を積めている印象を受けた。もちろん、まだ高校生であり、過度な期待はしすぎてはいけないだろう。
 
 それでも名波監督と中村のDNAを受け継ぐトップ下候補なだけに、やはり、特別な可能性を感じる。中村が加わったことによる、ワクワク感のひとつと言っていいかもしれない。そして、針谷岳晃はその期待に十分応えてくれそうな、とても楽しみな逸材だ。
 
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)