製造業の現場でIoTが解決する課題とは?(写真はイメージ)


 第4次産業革命はロボット、IoT、AIの技術進化でもたらされると言われている。

 いろいろなものの状態が、ロボットが搭載する各種センサー、ロボット以外の各種デバイス、設備などを通して検知され、IoTを活用して情報が収集・蓄積される。データベース化された情報はAIによりカテゴライズされ、知識化される。ユーザーはその中から最適な情報を選択し、再びロボットやデバイス、設備等を通してユーザーにサービス提供される(図1)。

図1 第4次産業革命を担う3大技術


 このような世界は、スマートフォンを利用した情報検索やサービス利用では現実のものとなっている。しかしながらビジネスの世界では、まだ普及には至っていない。一部の会社では、自社の製品の利用状況をIoTで把握してアフターサービス事業に生かしているが、多くの会社では、IoTで何ができるのか、IoT活用をどのように行えばよいのかについてはっきりとした道筋が見えていないのが現状である。

 では、ものづくりの世界ではIoTはどのように活用されるのであろうか。

 製造業におけるIoTの活用領域は、(1)「課題解決」、(2)「最適化」、(3)「価値創造」の3つがある(図2)。

図2 IoT活用のフレームワーク


 本コラムではJMAC(日本能率協会コンサルティング)のコンサルタントたちが10回にわたって事例やツールの紹介を織り交ぜながら、ものづくりに関わる会社がIoTを使って現場改善や工場改革をどう実現していけばいいのかを解説していく。

 IoT活用領域の(1)「課題解決」については第2〜第7回で解説する。第8回では(2)「最適化」について、第9回では(3)「価値創造」について解説し、第10回は全体のまとめとIoTを活用した改革活動の進め方について解説する。

製造業の現場でIoTが解決する課題とは

 今回は、第2回〜第7回で取り上げる「課題解決」の全体像について解説しよう。

 IoTは、現場の様々な課題をデジタル化することで解決する。

 これは製造業に限らないが、業務をデジタル化することで手書き、手入力といった情報処理の無駄がなくなり、一層のQCDの向上が図られる。また実績情報のデータベース化とその活用で、業務処理スピードの向上、判断精度アップ、業務ノウハウの共有化ができるようになる。

 ただし、現場の課題解決をデジタル化で行う際には、次の2点を実現できるかが大きなポイントとなる。

・行った作業や、業務の結果がその場で分かり、良し悪しも判断できる。その場で作業者にとって役に立つことができる。

・作業・業務の実績がデータベース化され共有化されることで、組織の知識やノウハウとして役に立つことができる。

 さて、製造現場にはあまりにも様々な種類の課題があるので、どこから手を付けてよいのか途方にくれるかもしれない。

 JMACでは現場のデジタル化を推進する際のツールとして「現場IoT7つ道具」を提唱している(図3)。これは、製造現場の状態を見える化・分析する手法を「7つ道具」として整理したものだ。

図3 現場IoT7つ道具


 製造業の現場でIoTが解決する課題の対象は「位置、作業、場面、稼働、数量、品質、危険」の7つである。これらについて、現場の様々なものをインターネットにつなげることで、どんなことを把握できるようになるのか、どんな効果が得られるのかを、図3でご覧いただきたい。

IoT導入で見えてくる5つのこと

 7つの課題を対象にIoTを導入すると、現場で様々なことが見えてくるようになる。デジタル化によって現場の課題解決をするということは、以下の「5つの見える化」を実現することでもある(図4)。

図4 IoT5つの見える化


(1)人の動きと状態の見える化

 作業者がどこにいるのか(位置)、どんな動きをしているのか(腕や状態の動き)、集中しているのか(視線、脳波)を把握することで、作業者の効率分析や、作業者の適性把握や作業訓練等に活用することができる。

(2)物の動きと状態の見える化

 物がどこにあるのか(位置)、どう動いているのか(動線)といった物に関する情報を取得し統合することで、生産進捗把握や棚卸し・在庫管理の効率化等に活用することができる。

(3)設備の動きと状態の見える化

 設備がいつ止まっていたのか、設備が故障停止した時の運転状況は、どの製品をどれくらいの時間で作っていたのかなどを把握することで、設備の効率化や故障予知・予防保全等に活用することができる。

(4)現場の過去と未来の見える化

(1)〜(3)の情報を時系列で同期化することにより、ある時点での人、物、設備の動きや状態がどうなっていたかを串刺しで見える化する(図5)。これにより、生産性低下、不良発生、設備故障等のときの状況を把握することができる。また各データの変化を読み取ってこの先の状態変化の予測に活用できる。

図5 時間軸で同期したデータのイメージ


(5)培われた技術の見える化

 各種ノウハウや製造条件等の情報を蓄積することで、作業者に必要な情報をタイムリーに提供し、作業の効率化や習熟容易化に活用する。また環境や材料等の状態に応じた最適な加工条件等を過去の実績から検出することが可能となる。

 IoTの活用で今までの課題解決のプロセスが大きく変わることになるだろう。とりわけ現状の実態に関する情報取得が高速化、広域化、常時化、一元化されることにより深く、今まで分からなかったことが分析可能となるのである。

筆者:松本 賢治