文部科学省が入居する霞が関コモンゲート東館(「Wikipedia」より)

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 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 もう「びっくり仰天」と言いたくなるような文部科学省の不祥事が発覚しました。文科省の前高等教育局長の吉田大輔氏が早稲田大学の教授に就任した際、省内から天下りのあっせんを受けたとされる問題です。これは、事務方のトップである文部科学事務次官の前川喜平氏の辞任にまで発展してしまいました。この問題については、与野党が追及の姿勢を崩していません。

 政党として、松野博一文科大臣直轄の「再就職等問題調査班」がヒアリングを行う場に神澤も同席しましたが、ここでもびっくりしました。文科省の官僚に限った話ではないのですが、「国民感覚」とのギャップがありすぎるのです。

「高等教育」とは、高等専門学校・短大・大学・大学院などのことです。私学助成という、早大を含む私学に対する補助金の額の決定権を持つ局のトップだった人が、利害関係のあった早大に教授として再就職するなんて、誰が聞いても疑問に思うはずですが、文科省の人たちの認識は「ふーん」程度だったようです。こういう感覚だから、天下りはなくならないのでしょう。

●裏工作のオンパレードだった今回の天下り

 官僚の再就職(永田町や霞が関では「天下り」とは言いません)はしばしば問題になりますが、今回は特に悪質で稀なケースでした。

 ご存じのように、国家公務員の再就職については、民間にはない服務上の義務がいろいろと課せられています。自分のポストと利害関係のあるところに再就職するのは、当然NGです。

 吉田氏の場合、それを隠すために早大側と口裏合わせをしていたことや、在職中から求職活動をしていたことなどが発覚しています。神澤も、これまでいろいろな天下りを見てきましたが、これだけ裏工作がそろうケースは珍しいです。「さすがにあり得ないでしょ」というのが正直な感想です。

 もちろん、文科省だけではなく早大にも問題があります。問題が発覚しそうになったとき、吉田氏が早大側と「想定問答」を作成し、口裏を合わせて内閣府再就職等監視委員会からの追及をかわそうとしたことについて、早大は記者会見で「自分たちは被害者だ」というニュアンスの発表をしていました。

 法的には早大に罰則がないようですから、率先して調査班に情報を提供することで「被害者」という立場を強調する作戦に出たのだと思います。でも、口裏合わせをしていたのだから同罪です。「前高等教育局長を大学に受け入れることで、私学助成の補助金増額が見込める」という皮算用をしていたに違いありません。

 また、吉田氏の再就職活動を文科省の人事課が手伝っていたことにも驚きました。人事課が吉田氏の経歴書をつくってあげた上、早大に提出していたそうです。せめて、経歴書くらい自分で作成することはできなかったのでしょうか。

 委員会に出席していた議員が、その理由を問いただすと、驚きの回答が返ってきました。なんと、「(吉田氏は)パソコンの操作に不慣れだったようです」というものです。「吉田氏がものすごく威圧的な人で、人事課の職員も従わざるを得なかった」という返答を予想していたのですが、想像を絶する理由でした。そして、吉田氏は「違反行為とわかっていながら、人事課の職員に自分の経歴書を作成してもらっていた」のです。

●不可解な再就職活動に「金に困っていた」疑惑も

 吉田氏は早大大学院でゼミを持っていたようですが、受講していた学生たちには同情します。本当に学生たちの将来を思う教授であれば、問題発覚後も、責任を持って卒業判定は行ってほしかったです。しかし、吉田氏は問題発覚後に大学を辞めてしまいました。

 また、吉田氏の再就職の理由が「学生たちと直に触れ合って教えたかった」というものであればまだいいのですが、真相は違うようです。

 吉田氏は、ごくプライベートな理由で金銭的に余裕がなく、再就職先を在職中から必死に探していたことがわかっています。通常、高級官僚には黙っていても「再就職」の声はかかるものですし、吉田氏は「著作権の権威」といわれるなど、とても優秀という評判でした。そんな人物が現役のうちから再就職活動をするなんて聞いたことがありませんし、そもそもする必要もなかったはずです。

 そうした背景から、お金に困っていた理由について、さまざまな噂が出てきてしまうのも仕方のないことかもしれません。神澤も、「愛人と一緒になるために離婚の慰謝料が必要だった」「よくない組織からお金を借りていた」など、いくつかの話を聞いています。その真相は、まもなく判明するでしょう。

●天下り発覚、霞が関の「重い処分」が軽すぎる!

 今回の件について、文科省の官房長から「とても厳しい、前例のない処分を行います」と発表された内容を見て、私たち秘書は「これのどこが厳しいの?」と叫びたくなりました。もちろん、秘書には「発言権」はないため、あくまで心の声です。

 まず、事務次官の前川氏については「減給10分の1を2カ月」が命じられましたが、同氏はすぐに依願退職してしまいました。しかし、もちろん退職金は支払われますし、「ほとぼりが冷めれば、また必ず再就職の声がかかる」といわれています。

 これでは、「退職の理由は国会で行われる参考人質疑の追及から逃げるためではないか」と勘繰ってしまいます。官僚を辞めて一般人になってしまえば、参考人として出席を強制することはできなくなるからです。

 また、もっとも重い処分の「停職3カ月」を受けた当時の人事課室長級、「停職1カ月」の当時の人事課長の懲戒処分については、「出世の査定にも響くし、こんなに重い処分を下すのだから、自分たちはかなり厳しく律した」などと説明していました。

 確かに、「霞が関の常識」では、この処分内容は「とても重い」のかもしれませんが、国民から見たらどうでしょうか。「そんな程度の処分なの?」と疑問に思う人も多いと思います。やはり、霞が関の幹部も「自分ファーストなんだな」とがっかりました。

 そして、文科省の人事課の職員には、「この件にかかわるな」というお達しがあったそうです。ほかの部署の現場の職員が毎晩遅くまで対応に追われるなか、人事課の職員は定時に帰っているため、ほかの職員からはかなりの反感を買っているようです。

 また、吉田氏1人のせいで、公僕として真面目に国民に奉仕しているたくさんの現場の国家公務員のみなさんがいっしょくたにされ、批判を受けたり不利益を被ったりしてしまっているようですが、これもとても気の毒です。そして、幹部に反省の色が見えないのが残念です。

●都内の公立小学校のとんでもない対応とは?

 この問題に限らず、教育界からいい話は聞こえてきません。たとえば、神澤の知り合いのママさん秘書は、娘さんが通う東京・江東区のある公立小学校のことでため息をついていました。いわゆる湾岸エリアで、テレビドラマの撮影などにもよく使われるオシャレな地域です。タワーマンションの建設ラッシュが続いていて、新しい住民もどんどん増えています。

 しかし、時代のグローバル化や多様化に学校側が全然追いついていないのです。たとえば、最近は中国や韓国出身の保護者が増えているにもかかわらず、英語が堪能な教員が少ないため、重要な連絡事項を伝えられないこともあるそうです。

 また、保護者の学歴や収入が教員より高いというケースも多いのですが、学校側はいまだに前時代的な「教師は絶対」という価値観を押しつけてくるため、軋轢が生じてしまうのです。

 それに、以前は学校に提出する個人調査票の家族構成に「母親の職業」を記入する欄がなかったそうです。「お母さんは専業主婦」という前提なのでしょう。今はママさん秘書の要望で記入欄ができたそうですが、学校行事はすべて「母親が無職(専業主婦)」であることを前提に予定され、教員たちは常に「学校に来てください」と言います。学校側の不手際でけがをした児童の保護者にも来校が命じられたそうですが、あり得ない対応だと思います。

 当然、その保護者は行かなかったのですが、すると、校長以下5人の教員が「説明」と称して自宅に押しかけてきたそうです。お母さん1人に対して、威圧ともとられかねない対応だと思います。

 ただ、これは都会特有の事情のような気もします。地方には、まだ人間味があったり「子どもファースト」で考えたりしてくれる教員が多い印象があります。このような事情も含めて、以前から全国的に公立小学校の教育レベルのばらつきが問題となっています。

●公立小学校の教員が保護者に「感謝」を強要

 たとえば、東京・千代田区の麹町中学校などは、民間出身の校長を受け入れ、校長が教員に「常に子どもファースト」「個性を大事にして、指導方法も対応させていく」と説明し、教員たちの意識改革を続けていると聞いています。それが奏功して、今ではポスターやお弁当づくりなど、さまざまな分野で全国コンクール入賞を果たすまでになっています。

 前述した江東区の公立小学校の校長は、教育委員会も同席しているヒアリングの場で、「児童や保護者たちの要望を真剣に受け止めたことはない。そんなことをしていたら、キリがない」と本音を漏らして、物議を醸したことがあります。後に教育委員会の指導で発言を撤回していますが、自分の任期をやりすごすことだけを考えているのです。

 そもそも、校長が「自分ファースト」の典型例ですから、同校内は学級崩壊同然の状態です。4年生のクラスでは、授業中に歩き回ったり机の下で寝そべったりする児童がいるなど、授業がまともに行われていないそうです。しかし、学校側はそれを問題にしないどころか、保護者には威張っているわけです。

 また、同校では、保護者が主催する「卒業生を祝う会合」の案内状に「自分たち教員に対しての感謝の言葉が入っていない」とダメ出しをして、案内状をつくり直させたそうです。しかも、「文章の確認は、メールもFAXもダメ。その都度印刷して、学校に持ってくるように」という指示つきで……。なぜ、わざわざ現物を持っていかなければならないのでしょうか。神澤は、信じられない思いでその愚痴を聞いていました。

 こうしたとんでもない事例の数々も、そもそも文科省のトップが誰よりも「自分ファースト」だったことを考えれば仕方ないのかもしれません。
(文=神澤志万/国会議員秘書)