iDeCo(個人型確定拠出年金)特設サイト「イデコガイド」より

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 本連載前回記事でもお伝えしたように、公的年金が実質的に目減りすることは避けられない状況です。そんななか、私たちはどうやって老後に備えていけばいいのでしょうか。

 今回は、今話題になっている「確定拠出年金」について見てみましょう。確定拠出年金とは、税制上の優遇がある年金で、加入者が複数の金融商品のなかから運用するものを選び、運用次第で将来的に増える可能性もあれば減る可能性もあるというもの。払い出しは、原則60歳以降となります。

 これまで、会社員や自営業者が入れるものはありましたが、専業主婦などが入れるものはありませんでした。そんななか、1月から専業主婦や公務員が加入できるものがスタートし、話題となっています。

●確定拠出年金に潜む「3つのメリット」の罠

 金融機関は「専業主婦も確定拠出年金を使えるようになりました!」として、専業主婦が確定拠出年金に加入するメリットを、次のように紹介しているところが多いです。

(1)専業主婦がもらえる公的年金は少ないので、それを補完できる。
(2)税制上のメリットが大きい。
(3)資産形成についての知識が深まる。

 しかし、実際はどうでしょうか。まず、(1)の「専業主婦がもらえる公的年金は少ないので、それを補完できる」については、別に確定拠出年金でなくても、普通に銀行で積み立てをすればいいわけです。確定拠出年金の場合、預金から投資信託、保険まで、さまざまな品揃えがありますが、ここではわかりやすいように預金を取り上げてみましょう。

 専業主婦が掛けられる金額は年間6万〜14万4000円(月5000〜1万2000円)で、預金の場合は金利0.001%ほど。目一杯預けても、年7円の利息にしかなりません。ところが、確定拠出年金には口座管理手数料がかかり、金融機関にもよりますが、その額は年間4000〜6000円。これを払って預金したら、実質的にはマイナスになります。投資信託の場合は、ここからさらに信託報酬が引かれます。こうした側面を考慮すると、わざわざ確定拠出年金に預ける必要はないでしょう。

(2)の「税制上のメリットが大きい」は、大きく2つに分けられます。ひとつは、積み立てたお金は税額控除になるため、所得税や住民税が安くなるメリット。しかし、専業主婦でこうした税金を払っている人はほとんどいないため、あまり関係ありません。

 もうひとつは、運用に選んだ金融商品が値上がりしたときに、そこから引かれるはずの税金が引かれないというメリット。ただ、年間に最高で14万4000円しか預けられないため、高い口座管理手数料が引かれることを考えれば、節税が必要になるほど、運用する商品が値上がりする可能性は低いでしょう。つまり、専業主婦は、この2つの節税メリットの恩恵はほとんど享受できないということです。

(3)の「資産形成についての知識が深まる」ですが、そもそも確定拠出年金で預けたお金は60歳になるまで引き出せません。その間に物価が上昇して、たとえば、現在は1杯350円程度の牛丼が30年後には3000円になっているかもしれません。引き出せない間に貨幣価値が変わってしまえば、それは大きなリスクとなるでしょう。

 しかも、住宅ローンを返済したり教育資金が必要だったりと、60歳前にお金が必要になるケースは多くあります。皮肉なことですが、資産形成についての知識が深まれば深まるほど、「やらないほうがよかった」ということになるのではないでしょうか。

●確定拠出年金の加入者拡大は公務員のため?

 専業主婦にとってはあまり利用価値がなさそうなのに、なぜ今年から加入できることになったのでしょう。実は、これで大きなメリットを享受するのは、専業主婦ではなく公務員です。

 公務員は給料が高く(人事院給与局の「平成27年国家公務員給与等実態調査」によると、国家公務員の平均給与月額は41万6455円)、確定拠出年金の節税メリットをフルに受けることができます。しかも、リストラされる心配が少ないので、60歳まで引き出せないという点も心配いりません。

 そのため、「今回の加入者拡大は公務員のためだ」と理解すればスッキリします。ただ、「税金から給料をもらう公務員が節税にもなる制度を利用するのは、いかがなものか」という議論がありました。そこで、専業主婦を前面に立てて、「私たちもついでに……」というスタンスを取ったのではないでしょうか。

 実は、公務員の年金は、確定拠出年金に入れるようになって4階建てになりました。それについては、次回に詳しくお伝えします。
(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)