By Kabsik Park

遺伝子編集技術の「CRISPR/Cas9」を用いた研究で、世界で初めて「牛結核の耐性を高めることに成功した牛を作り出すことに成功した」と発表されました。

Tuberculosis-resistant cows developed for the first time using CRISPR technology | Science Bulletin

http://sciencebulletin.org/archives/9946.html



中国の西北農林科技大学で獣医学の研究を行う研究グループが、「CRISPR/Cas9」を用いて牛結核に耐性のある牛を開発することに成功したことを、生物関連の学術誌であるGenome Biology上で公表しました。

「CRISPR/Cas9」とはDNAに含まれる反復クラスターを応用するゲノム編集技術のことで、以下の記事を読むとどのような技術なのかがよくわかります。

遺伝子編集技術「CRISPR」とは何かがわかるムービー、そして人類の未来はどうなるのか? - GIGAZINE



論文の第一著者であるヤング・チャン博士は、「我々は最新の『CRISPR/Cas9n』と呼ばれるCRISPRシステムを用いることで、『NRAMP1』と呼ばれる結核耐性遺伝子を雌牛の遺伝子内に挿入することに成功しました。この実験で重要なのは、我々の方法により雌牛の遺伝子にオフターゲット効果が見られなかったという点であり、つまりは我々が使用したCRISPR技術が遺伝子組み換え家畜の生産に適合するかもしれないという点です」と語っています。

CRISPR技術は近年研究機関などでは広く使用されるようになってきており、非常に正確で簡単に遺伝子を書き換えることができることで知られています。しかし、時々故意ではないにしろオフターゲット効果が発現してしまうため、これが発現しない方法、あるいは発現率を低下させる方法が遺伝子研究の分野では求められていました。



By Maciej Lewandowski

チャン博士は自身の研究について、「哺乳類のゲノムに新しい遺伝子を挿入しようとする場合、『ゲノムの中で遺伝子を挿入するのに適した場所を見つけること』はとても難しいことです。もしそうする場合は、ゲノムの中で『他の遺伝子が入ってきても最小限の影響しか起きない場所』を探す必要があります。我々は綿密で方法論的なアプローチを用いることで、遺伝子を挿入するのに適した場所を識別しました。そして、遺伝子を挿入したあとになってもオフターゲット効果は確認されていません」と、自身の研究がこれまで難しかった「オフターゲット効果の発現を抑えること」に成功していると述べています。

実験ではメスの乳牛の細胞に「CRISPR/Cas9n」技術を用いて「NRAMP1」遺伝子を挿入。その後、遺伝子を挿入した細胞を「ドナー細胞」として体細胞核移植に使用したそうです。この「CRISPRで遺伝子を挿入された遺伝子」を持つ子牛が生み出され、その内の11頭が結核に耐性があり、遺伝的障害も持っていない、つまり、オフターゲット効果が発現しなかったと判断されました。さらに、誕生した11頭の子牛を遺伝子分析すると、「NRAMP1」が遺伝子コードの目標部分にしっかりと統合されていることも確認できたとのことです。



By Thomas Wensing

加えて、11頭の子牛をウシ型結核の感染源となるバクテリアの「M. bovis」にさらしたところ、血液サンプルを用いた調査から、子牛たちの体内の抵抗力が高まっていることも確認されています。これについてチャン博士は、「我々の研究は、『CRISP/Cas9n』システムはオフターゲット効果の見られない遺伝子組み換え動物を生み出すことができることを実証する最初の研究になりました。また、我々の研究は牛のゲノムのどこに遺伝子編集を施せば、挿入した遺伝子が役立つのかを発見することにも結びついています」とコメントしています。