総務省が1月31日に発表した「家計調査」で、浜松市の年間「餃子購入額」が4818円と、長年のライバル・宇都宮市を僅差で上回り3年連続の日本一となりました。この結果を受けて浜松市では、鈴木康友市長が発表イベントを行うなど熱気に沸いています。

「餃子戦争」と呼ばれて毎回、大きな注目を集める両市の対決ですが、オトナンサー編集部がその実態を取材すると、双方には意外なほど大きな“温度差”があることが分かりました。

浜松で餃子文化が花開いた理由

「われわれにとって宇都宮市は餃子の大先輩。今回も勝ちましたが、これからもいろいろ教えてもらいたい」

 謙虚にそう話すのは、浜松市内の餃子愛好家で構成される「浜松餃子学会」の担当者。2005年に町おこしの一環として結成された同会は、浜松市を巻き込み「浜松餃子」ブランドを全国へ発信してきました。「11年前に比べると、ブランドの認知度は比較にならないほど上がりました」。

 スズキやヤマハといった、国内屈指の大企業を輩出してきた工業都市・浜松市ではかつて共働き世帯が多かったこともあり、スーパーマーケットで買った総菜を家で温め直して食べる「持ち帰り文化」が定着していました。「餃子の消費量が多いのも、そうした消費スタイルに合ったからです」。

 また、日本有数のキャベツの生産地として知られる、愛知県田原市からも距離が近いというメリットがありました。「流通がよく、比較的安い価格で仕入れることができたのです」。

キャベツが多い浜松餃子

 浜松餃子の特徴は主に2つあります。1つ目は具材の中にキャベツが多いこと。「キャベツと肉の比率は、6対4から7対3ぐらい。中には9対1なんていう餃子を出す老舗もあるんですよ」(同会)。餃子本来の肉々しさと、しっとりとしたキャベツを同時に楽しめるのが強みです。

 2つ目は盛り付け方です。焼かれた餃子は皿に円形に置かれ、真ん中にできた穴にモヤシが添えられます。モヤシはお湯でゆがいただけのシンプルなもので、餃子ダレをつけて食べるのが一般的です。「モヤシを使うのは価格が安いから。浜松餃子が戦後の屋台にルーツを持っていることとも関係しています」。ただし現在では、円形やモヤシにこだわらない新店舗も増えているようです。

「宇都宮市で野菜を多く入れた餃子をPRしている店舗もあるようですが、浜松のわれわれからすると『まだまだ』です(笑)」

家計調査は小売店で買う餃子が対象

「餃子戦争」と言われる浜松と宇都宮の対決

 今回の報道を追い風と捉える浜松市とは対照的に、宇都宮市はその結果にやや冷静な反応を示しています。「1位に越したことはありませんが、正直あまりこだわっていません」と市観光交流課の担当者は話します。

 宇都宮餃子はすでに認知度が高く、加えて、2018年4〜6月に行われるJRグループの大型観光キャンペーン「デスティネーションキャンペーン」の対象地に、同市を含む栃木県が選ばれたこともその背景にあるようです。「キャンペーンに向け、宇都宮市を『餃子の街』としてPRすれば、さらなる観光客が期待できますし、そのほうが市にも地元餃子店にも価値があると考えています」。

 そのような対応をするのにはほかにも理由があります。勝負の順位を決める家計調査の対象が、スーパーマーケットで買う餃子(総菜)だけだからです。「宇都宮では各店舗で消費される量が多く、市民にとって餃子はいわば『外食』です。そうした外食の消費量がカウントされないようでは、勝負になりません」。

 実際、浜松餃子学会からも「全体の消費量は宇都宮市が上かもしれない」といった声が聞かれます。ただし「購入額という『一つのものさし』で計った場合に勝っていることは事実。われわれも毎年のイベントとして力を入れているので、来年も今回同様にPRをしていきます」(浜松市)とライバル心は隠しません。

PRはする、しかし勝負はしない

 宇都宮市内の餃子店で作る協同組合「宇都宮餃子会」(2001年設立)も、宇都宮市と同意見のようです。「組合にとって、今回の結果はどうでもいいですね。宇都宮市はもう、殿堂入りでよいのではないでしょうか」。会では今回の結果よりも、昨年度から宮崎県が3位にランクインしていることに関心があるといいます。

「東日本大震災前の2010年まで15年連続1位でしたからね。現在は10位でも20位でも、もうそんなのいいじゃないかという感じです。浜松市と対立しているつもりは最初からありません。われわれの競争相手はあくまでも市内の業者。大阪のたこ焼きと広島のお好み焼きが対立していないのと同じです。対立をあおっているのはマスコミですよ」

 宇都宮餃子のPR自体にはこだわるが、勝負をしているつもりはない、というのが宇都宮側の姿勢のようです。

 組合では昨年、都内や横浜赤レンガ倉庫などで「餃子一色」のPRイベントを行いました。「赤レンガ倉庫には3日間で16万人が来場しました。餃子を通して宇都宮市という地名をより多くの人に知ってもらいたい」と担当者は話します。デスティネーションキャンペーンについても、「宇都宮餃子を『キラーコンテンツ』にする良いチャンス」と位置づけています。

「餃子戦争」報道の裏で、浜松・宇都宮両自治体の人が共通して話していたのは、「一人でも多くの人に自分たちの餃子を食べてもらいたい」という純粋な思い。双方の餃子を落ち着いて楽しむことが一番なのかもしれません。

(オトナンサー編集部)

【表】最近9年間の餃子購入額TOP3