やめ時を見失った睡眠薬|20年悩んだ不眠治療を振り返る

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こんにちは。睡眠コンサルタントの土井です。
 
いよいよ連載の第10回目となります。私は幼い頃から不眠に苦しみ、約20年もの間、不眠に悩んできました。また、病院での治療も10代の頃からはじめ、睡眠薬の服用も5年以上の経験があります。そんな私も紆余曲折あり、連載1回目でご紹介した通り、色んな方法を試しながら、やっと数年前に不眠を克服することができました。
 
今回から数回に渡って私が実際に行なった治療の体験談を書いていきたいと思います。今回は、睡眠薬との付き合いを振り返ります。

受診するまで

連載1回目でご紹介した通り、私は物心ついた幼少の頃から睡眠に悩みをもっていました。幼稚園の頃にお泊まり会で1人だけ眠れなかったことや、小学生の頃には学校の先生に「眠れない」と相談していた記憶があります。
 
特に症状がひどくなったのは中・高生のころからです。寝つくのに時間がかかり、布団に入ってから眠るまでに毎日2時間〜3時間かかるようになりました。ときには朝まで眠れないときもあり、日常生活に大きな影響を与えていました。
 
しかし、病院に行くのは特別なことと思って、行こうとは思いませんでした。
「自分は睡眠で悩んでいるけど、病院に行くほどでもない」
日常に大きな影響を与えていたにもかかわらず、自分にずっとそう思い込ませていました。
 
そしてようやく、大学受験の際に本命の大学の試験で試験中に居眠りするという失敗をきっかけに、試験のために病院に行くことを決意しました。年齢が18歳を越えたことも自分の中で契機になりました。

初めての受診

初めて行った病院は心療内科でした。それまで、内科ではあまり真剣にとりあつかってくれない印象があったので、今回はより専門的だと考えられる心療内科を受診することにしました。
 
当時(7年前)は睡眠専門のクリニックがあることは知らず、心療内科や精神科が不眠に対する専門だと思っていました。今よりも、睡眠を専門に診療する病院やクリニックは少なかったのだと思います。精神科ではなく、心療内科を選んだのはなんとなく心療内科のほうがまだ比較的行きやすいのではないか、と考えていたためです。
 
周りに心療内科に通っている人もおらず、評判もわからなかったので自分でネットで検索し、自宅から通える範囲で雰囲気がよさそうなところを選びました。心療内科の受診や睡眠薬に対して、はじめはかなりネガティブな印象を持っていたので、最初は友人はもちろん親にも黙って受診しました。
 
訪れるまでは「どんなところだろう?」と不安でしたが、実際に行ってみるととてもおしゃれで心地よい場所でした。先生も優しく対応してくださり、安心して診察を受けることができました。
 
診察では今までの不眠の経歴や悩みを聞かれました。私は特に寝つきが悪かったこと、そして大学受験が近づいていたので早めに効果が出る方法を望んでいる、ということを伝えました。診察の結果、睡眠薬が処方されることになりました。
 
寝つきが悪い場合によく出される超短時間作用型の睡眠薬です。「一般的によく利用されている、軽めのお薬です」と説明されましたが、「副作用はないのだろうか?」と内心はとても不安でした。

睡眠薬を服用し始めてから

睡眠薬を処方された日の夜。
 
「一体どれくらい眠れるのだろう?」という期待と「副作用は出ないだろうか?」という不安が入り混じった感情でした。初日は気合が入りすぎて緊張してしまい、あまり効果は感じられませんでしたが、数日すると寝つきがよくなっている感覚が得られるようになりました。
 
はじめは副作用が心配で恐る恐る服用していましたが、当時は思ったほど副作用も感じず服用することができていたと思います。「睡眠薬を一生やめられないのではないか?」、「睡眠薬もいずれ効かなくなってしまうのではないか?」といった依存や耐性などへの恐怖感や、睡眠薬を服用していること自体の後ろめたさはずっとありましたが、それよりも少しでも「眠れる」喜びのほうが大きかったです。
 
それからは1週間〜2週間に一度診察に行き、睡眠の変化や睡眠薬の相性などの確認を中心にすすめていきました。受験が間近に迫っていたため、その時は減薬(睡眠薬に頼らなくても眠れるように、お薬の量を少しずつ減らしていくこと)については特に考えていませんでした。その後は睡眠薬を毎日服用することで、睡眠も多少改善され、目的だった受験も無事乗り切ることができました。
 
「もっと早く病院に行っておけばよかった」という思いとともに、なんとなく睡眠薬を服用していることや心療内科に通っているということに負い目はそれからも感じていました。

やめ時を見失った睡眠薬との関係

その後大学に進学してからも、睡眠薬による治療は変わらず続けていました。
本来は受験が終わったときに睡眠薬もやめればよかったのですが、また再び眠れない日々に戻ると考えると、怖くて簡単にやめることはできませんでした。睡眠薬をいつかはやめたいと思いながら、特に何か工夫するわけでもなく日々を過ごしていました。
 
「◯◯が終わったら睡眠の根本的な問題に向き合おう」
 
と、いつも先延ばしにしてしまっていたのです。そして、いつのまにか病院でも薬をもらうだけの状態になっていました。担当医も私の考えを優先するタイプの方だったので、医師のほうから減薬の話がされることもほとんどありませんでした。
 
いつか睡眠薬をやめたいという思いはありながら、「睡眠薬をやめるのはこわい」「どうせ自分の不眠は治らない」と決めつけ、行動には移していませんでした。
 
たまに思い付いたように減薬をしようと思ったり、改善のために色々試してみるものの、長くは続かず結果も出ませんでした。当時は知識もなく、いきなり睡眠薬の服用をやめてみたり、テレビや本で見た改善法を試してみては、挫折してすぐやめるという繰り返しでした。
 
それでも、いつか睡眠薬をやめたいという思いで、病院での診察の際に減薬の相談をすることもありました。「薬を一気に減らすことは難しい」ということで、服用量を少しずつ減らしたり、減薬しやすい薬に変えてもらうなどの対処をしてもらいました。
 
しかし、診察直後は「よし!減薬するぞ!!」と気合十分なのですが、ちょっとでも前より眠れなくなると、すごく不安になるのです。次の日への影響が過度に心配になり、結局長くは続きませんでした。時期を変えて、何度か試みてみるもののうまくはいかず、むしろ一時的な反動で不安が高まり、服用量が増えることもありました。
 
いつか減らしたいのに、簡単には減らせない、減薬は私にとってはとてもハードルが高いものでした。
 
加えて、大学生で比較的自由に時間を過ごすことができたことで、それまでのように日常にダイレクトに影響することもなく、「睡眠薬でなんとかなっているからきっと大丈夫だ」と思っていました。まさに、睡眠薬のやめ時を見失ってしまったのです。

睡眠薬でのコントロールすら難しくなる

やめ時を見失っていた睡眠薬との関係は、大学を卒業し、働きはじめてから変わってきました。働きはじめて数ヶ月すると、だんだん眠れなくなってきたのです。
 
大学生当時の私は、睡眠薬で症状を抑えていただけで、不眠自体を治していたわけではないーそれまでその事実にどこかで気づきながら、見てみぬふりをしていました。その影響が、日常にダイレクトにきたのです。
 
それからは、だんだん眠れなくなってきます。大学生のように簡単に休んだり、昼寝でカバーしたりすることはできません。すると、だんだん夜眠るのが怖くなるようになりました。
 
「今日も眠れなかったらどうしよう?」「明日もきっと身体がつらいんだろうな、嫌だな」などと無意識のうちに考えるようになり、不安と緊張でたまらくなりました。
するとますます眠れなくなります。
 
それまでと同じように睡眠薬を飲んでも、それまでの睡眠薬の量では眠れなくなり、睡眠薬の量や種類も増えていきました。しかし、それでも眠れないのです。
 
本来はしてはいけないことですが、睡眠薬とお酒を併用する日々が続きました(睡眠薬とお酒を併用してはいけないと医師から指導されていたにも関わらず)。
それでも、お酒で多少眠れるようになっても、アルコールで意識を飛ばして無理やり寝ているような状態なので身体が元気になるわけもなく、日中のつらさは変わりませんでした。
 
眠れない日々が続くと、だんだん自分の思ったように身体や思考が働かなくなってきました。肉体的な変化だけでなく、精神的な影響も出はじめ、気力がわかなかったり、何もないのに悲しくてたまらくなったり、今思えばうつに近いような状態でした。
 
最終的にはまともに働ける状態ではなくなり、会社を辞めることになりました。

さいごに

今回は、私の睡眠薬との付き合い方を振り返りました。私のような睡眠薬との付き合い方ばかりではなく、睡眠薬ともっと上手に付き合ってきた人ももちろん多いと思います。でも、私のようなケースもあることを知って頂きたいと思います。
 
私は仕事を辞め、追い込まれたことでやっと不眠に向き合うことができ、それがキッカケとなり不眠を克服することができました。もしその時に向き合うことができなければ、今でも不眠に苦しんでいたと思います。まずは逃げずに真正面から自分の不眠と向き合ってみる。不眠である自分を受けとめる。それが私にとっての不眠克服の大事な一歩でした。
 
私がどうやって不眠と向き合い、その後、どんな治療をしてきたか、次回以降詳しく書いていきたいと思います。

photo:Getty Images