東芝の解体危機!WH減損拡大で「もう売れる事業がない」

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■日本を代表する総合電機・東芝の解体危機

不正会計で経営危機に陥っている東芝で今後は巨額の損失が発覚、大きな岐路に立たされている。今後は東芝の解体が加速し、自力での存続も難しいのではないかとすらいわれている。連結総資産5兆4333億円、従業員数18万7809人、連結売上高5兆6686億円はトップ20には入る日本を代表する総合電機メーカーだ。

冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、掃除機、電子レンジなどの白物家電から液晶テレビ、半導体、パソコン、スマートフォン、メディカル機器、原子力発電、火力発電、水力、自然エネルギーなどの重電、地対ミサイルなどの軍事機器、このほか通信、上下水道、鉄道、放送機材などの社会インフラなど幅広く展開してきた。それだけではない。

財界総本山のよばれる経団連の会長に石坂泰三氏や土光敏夫氏、経団連の副会長だけでも西室泰三氏、西田厚聰氏、佐々木則夫氏、日本商工会議所会頭には岡村正氏を輩出する財界の頂点に君臨する企業といってもいいだろう。

その東芝で2015年の粉飾決算事件が発覚した。このとき田中久雄氏に代わって社長に就任したのが室町正志氏。5月8日に第三者委員会を設置して問題の解明を進めた。このとき東芝は6月25日の定期株主総会には決算を提出できないという上場企業としては異例の事態に追い込まれた。

そして第三者委員会の報告書が7月20日に発表され、会社が独自に調べたものと合わせて決算の修正を行った。東芝は2008年度から2014年度第3四半期までの7年間で1562億円にも及ぶ粉飾決算が行われ、2016年3月期には7087億円の営業赤字に転落。当期純損失は4600億円にも上り、自己資本比率は前年の17.1%から6.1%に減少した。

こうした状況の中で東芝は2015年12月21日に、「新生東芝アクションプラン」を発表、事業の大幅な構造改革を推進することを明らかにした。

■7カンパニーを4つの事業に集約

東芝の事業部門は当時、「電力システム社(重電)」「社会インフラシステム社(送配電、太陽光、産業用の電気機器、鉄道関連などのインフラ関連)」「コミュニティーソリューション社(エレベーターや業務用の空調、照明、ビルなどの電気機器など)」「ヘルスケア社(医療用機器)」「セミコンダクター&ストレージ社(半導体関連)」「パーソナル&クライアントソリューション社(家庭用電気機器とパソコンとテレビなど)」「インダストリアルICTソリューション社(IOTなどカンパニーを横断的な技術)」の7つのカンパニーが存在した。

アクションプランではこうした7つのカンパニーを「エネルギーソリューション社」「社会インフラシステム社」と「インフラシステムソリューション社(旧社会インフラシステム社の一部と旧コミュニティーソリューション)」「ストレージ&デバイスソリューション」「インダストリアルICTソリューション」の4つに集約。2015年から2016年上期にかけてリストラされたのは1万4450人(3100人がグループ内での再配置、ソニーへの移籍1100人)だ。

中でも力を入れてリストラを進めたのが旧「パーソナル&クライアントソリューション社」にあった事業だ。ここも事実上解体して各事業はグループ会社などと統合した。

パソコン事業は国内での個人向けの製造販売を大幅に縮小して法人向けの営業に集中して1300人の人員を削減。4月1日にはパソコン事業部を分割して東芝情報機器と吸収。システムLSI事業を手掛ける大分工場の一部を分割して岩手東芝エレクトロニクスに吸収、社名を「ジャパンセミコンダクター」に変更、生産を大幅に縮小した。

テレビ事業は国内外の人員の8割に当たる3700人を削減して、製造販売からは全面的に撤退。家庭用電器事業は人員を1万4600人から1800人を削減。そのうえでテレビ事業を除いた家庭用電器事業は中国の美的集団に売却された。

さらに旧「ヘルスケア社」は3月末で廃止され、中核事業だった東芝メディカルシステムズをキヤノンに6655億円で売却、ヘルスケア事業からは完全撤退した。

そして6月に就任した綱川智社長は「重電部門」と「半導体のNAND型フラッシュメモリー」「社会インフラ」を事業の3本柱に据えて再スタートを切ろうとしていた。

■止まらぬ損失!WH買収でハマった落とし穴

しかし年末になって急浮上してきたのが米国の原発子会社ウエスチングハウス(WH)が買収した「CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)」ののれん代と含み損失だった。

東芝が粉飾決算の事後処理に忙殺されていた2015年10月、WHがCB&Iの建設子会社「CB&Iスティーブ・ウェブスター(S&W)」を買収することで合意したと発表した。

ジョージア州とサウスカロライナ州で2基ずつ計4基の原発を建設していたが、この工事がついてくるという代物だ。原発一基が一般には5000億円といわれるから総工費で2兆円の工事が入ってくる。実はS&Wは債務超過で多くの訴訟を抱えていたことから工事に集中することができず、負債も含めてすべて引き受ける形でWHが引き受けた。現金の支払いはなかったという。

ところが2016年1月に買収が完了し、WHが乗り込んでみるととんでもない事実が発覚した。15年12月31日の時点で、11億7400万ドル(約1326億円)の想定運転資本額があるはずだったが、WHの算出値は9億7770万ドル(約1173億円)のマイナスだった。

差異は21億5100万ドル(約2581億円)。売却先と差異が生じた場合は第三者の会計士を選任することになっていたが、相手側は逆に選任差し止めで提訴。

さらにジョージア州とサウスカロライナ州の原発工事でも、今後提携して工事を進めていくことになったフルアーが見積もりを取り直すと、数千億円の損失があることが発覚。東芝は2016年12月、あわててこれを発表した。

損失額は最大で7000億円になるといわれている。東芝の資本金は3600億円、経常利益の見通しは1300億円、損失が5000億円を超えれば債務超過になる。このような中で今後は虎の子の半導体事業を分社化。今後は株式を売却して外部から資金調達を図ることになるかもしれない。

主力事業を次々に売却し、3本足打法のはずが重電とインフラ事業ぐらいしか残っていない東芝。しかし重電の花形、原発はいまだにほとんどが稼働できずにおり、国内では新しい原発の建設は難しいといわれている。綱川社長もまた今後は新規では原発の建設工事からも撤退する可能性を示唆している。

タコが足をくうように自分の事業を次々に売却してきた東芝。メインバンクは支援を表明しているが、今後こうした状況で再建はできるのか。2月14日の2016年度第3四半期の決算発表で全貌が明らかにされる。

(ジャーナリスト 松崎隆司=文)