教養のある人の話がおもしろいのは、幅広い知識を持っており、しかも深く理解しているから。しかし、教養がもてはやされる一方で、「知識は豊富だけれど、話してみると残念な人」も存在する。そう指摘するのは、『教養バカ わかりやすく説明できる人だけが生き残る』(竹内薫著、嵯峨野功一構成、SB新書)の著者です。

こうした人々は、一見教養があるように見えますが、話してみると「おもしろみ」がありません。知識を知っているだけで、ストーリーになっていない。知識をひけらかしているだけの「教養バカ」なのです。(「はじめに」より)

だとすれば、教養バカを脱して本当の教養人になるためには、どうしたらいいのでしょうか。そのためのトレーニング方法は、相手に「わかりやすく伝える」ことだけだと著者はいいます。知識を単発で披露するのではなく、話をつくり上げるために知識と知識をつなげる、そんな体験に根ざした「接着剤」をたくさん持っている人こそ、教養のある人だというのです。

知識の接着剤を使うには、視点を変えたり、違う道具に持ち替えることが必要。そのために求められるのは、説明する事柄の本質をとらえていること。つまりはコピペの知識ではなく、実際に体験し、自分なりにお理解をしていることが重要だというわけです。

こうした考え方を軸に、きょうは2章「教養人が持っている『わかりやすさ』10の技術」を見てみたいと思います。

技術1. 一瞬でロジカルになる! つなぎの言葉


相手にわかりやすく伝える手段として、「たとえば」「だから」「つまり」「しかし」などの「つなぎの言葉」、いわゆる接続詞はとても大切。なぜなら、接続詞は次にくる話や文がどのような内容であるかの合図、前振りになるから。

「たとえば」の後は例文やたとえ話がくるもの。「だから」の後は結果や結論。「そして」「しかも」の後は、前の内容と似たような話が。「つまり」は前の内容を要約した話に続き、「しかし」「反対に」は前の内容と逆の話がくるといった具合。会話や文章のなかでつなぎの言葉(接続詞)を強調すると、伝える相手への合図になるため、相手が次の展開を予測できるわけです。(59ページより)


技術2. 相手を前のめりに! 脳内にハテナをつくる


話を進めるにあたっては、その内容に興味を持ち続けてもらうことが必要。そのための技術として使えるものとして、著者は「脳内にハテナをつくる」ことの重要性を強調しています。相手にとって耳馴染みのない、意外性のあるワードを、あえて話のなかに入れ込むわけです。そうすることによって「えっ、なにそれ?」と相手の頭にハテナが浮かぶので、それを解消する話を展開すればいいということ。

ただし相手を納得させるためには、ハテナに対するきちんとした答えを提示することが不可欠だといいます。(61ページより)


技術3. 言葉のミニマリズム 一文は短く


話し言葉でも、書いた文章でも、一文は短いほうがよいと著者。短い文章は主語と述語が近く、いいたいことを明確にしやすいから。また文章が短いとテンポもよくなり、次の文に行くときに「間」をとることも可能。伝える相手が「間」を利用して、頭のなかで「絵」を書いてくれるわけです。

なお短い言葉と聞いて思い出すものにテレビ番組のテロップがありますが、ひとつのテロップの文字数はおよそ15文字なのだそうです。文字数が多いと視聴者は一瞬で理解できず、戸惑ってしまうから、というのがその理由。人間が2秒で認識できる文字数の限度は、15文字なのだということです。(62ページより)


技術4. プロのプレゼンターが活用! とにかく、3を使え


ここで著者が伝えたいのは、次の3つだといいます。

1: 日本人は「3」が好き
2: ポイントは3つに絞る
3: ポイントにはキャッチフレーズをつける
(65ページより)

相手に伝える要件・ポイントが多い場合は「3つ」に絞るほうが、わかりやすさが増すということ。たしかに話の最初に「ポイントが7つあります!」といわれたら、「そんなにあるのか」と聞く気が起きなくなって当然です。

一方、「ポイントは3つです!」といわれると、「3つの話を聞けばいいんだな」という受け入れ態勢ができるため、聴く気になれるわけです。だから、伝えたいポイントが多くある場合でも、3つに整理することを著者は勧めています。(65ページより)


技術5. 「結論は、最初」かどうか決める


「話し方」をテーマにした本の多くが「結論は最初に伝えるほうがよい」としているのは、結論をズバッといわれたほうが話は早いから。しかし結論までのステップが多くなる場合は、相手が自分の話に確実に最後までついてきてくるという保証があるわけではありません。そこで、そんな心配がある場合は結論から入り、興味を持たせる話の展開にするほうが得策だといいます。(70ページより)


技術6. 取扱注意! 二分法は伝え方の劇薬である


「YesかNoか」「AかBか」などの二分法は、選択肢が2つなのでわかりやすく、テレビなどでよく使われる手法。しかしその反面、実は取扱注意なのだそうです。相手に投げかけられる二択はキャッチーにつくられており、最初に提示される場合がほとんど。しかし選択肢が2つしかないため、いい切る必要があり、間違った情報を与える可能性があるということ。しかし物事には多面性があるため、二択を一概に決められない場合もあるわけです。その瞬間のわかりやすさだけを求めず、多角的に問題を見る視点を意識したいということです。(75ページより)


技術7. NHKのワザ! 話すスピードは1分間で300文字


相手に伝える際に意識すべきことは、メリハリ。著者も1分を目安に話すペースを変え、笑いを誘ったりとメリハリをつけるように心がけているそうです。そして、もうひとつ参考になるのが、伝えるプロフェッショナルであるアナウンサー。

元NHKアナウンサーで、現在はスピーチ・コンサルタントとして活動されている矢野香さんは、著書『NHK式+心理学 一分で一生の信頼を勝ち取る方法』の中で、「NHKは1分間300文字が、相手に一番伝わりやすい理想の速度としている」と書いています。(78ページより)

これはアナウンサーだけでなく、原稿を書く記者も、映像をつなぐディレクターも共通認識として持っているのだそうです。(77ページより)


技術8. 結局、「準備する人」がすべて手に入れる


どれだけ技術を駆使しても、「ぶっつけ本番」でわかりやすく説明するのは難しいこと。そこで著者はテレビに出演するとき、本番前に言葉のキャッチボールをしてリハーサルをするそうです。また当然ながら、上から目線の発言にも注意したいところ。人になにかを説明する際には、相手がどんな人なのか、どんなことを望んでいるのかを意識することが大切だということ。(79ページより)


技術9. ド忘れしても大丈夫! 最強の切り札


人間は、頭のなかだけで考えることには限界があるもの。そんなときは考えていることを紙やノートに書き出すと、驚くほど頭のなかが整理されるといいます。また書き出すことで、なにが重要なのか、どの順番がよいのかの構成も楽にできるとか。(82ページより)


技術10. ワンランク上の聞き方「つまり、こういうことですか?」


最後に紹介されているのは、自分が聞き手の立場での技術。相手の話がわかりにくい場合は、こちらから合いの手を入れ、相手のいいたいことを引き出し、まとめてあげるべきだというのです。

たとえば話がダラダラと長い人がいたら、話が終わった後に「つまり、こういうことですか?」と要約する。これには、ふたつの目的があるそうです。ひとつは、「話の目的を再提示すること」。人間は1回聞くだけでは理解できないことがあるため、ポイントとなるキーワードをもう一度押さえるということ。

そしてもうひとつは、「ペースをコントロールするため」。聞いたことを理解するには、頭を整理する時間が必要。「間」を空ければ、そのための時間が稼げるわけです。(85ページより)



教養人の話し方についてもわかりやすく解説されており、「語彙力」の重要性や「心に刺さるフレーズのつくり方」など実践的な話題満載。本当の意味での教養を身につけたいのなら、ぜひ手に取ってみたい1冊です。


(印南敦史)