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 ルーマニアで大規模のデモが31日から連日発生しました。

 首都のブカレスト中心にルーマニアの主要都市で数十万人が参加したとされるデモ。規模としては、1989年にあの独裁者として名高いチャウシェスク政権が崩壊した時以来の規模のデモとなりました。

 一体、ルーマニア国民は何に対して怒っていたのか。

 1月31日、ルーマニア政府は、44000ユーロ以下の汚職であれば刑務所に収監しないようにできる等の法令を出しました。

 この法令の問題点は2つ。

 1つ目は、今後の政治活動において、汚職が加速する可能性がある点。刑務所行きが免れるなら、ますます汚職しようとする人物が増える可能性が高いわけです。

 2つ目が、これまで汚職してきた政治家の刑務所行きが免れる可能性がある点。特に注目点となったのが、社会民主党(PSD)のドラグネア党首。ドラグネア党首は44000ユーロ以下で汚職の罪に問われています。この法令が出れば、ドラグネア党首は刑務所行きを免れます。誰が得をするのかは明らかでしょう。

◆信じた政党に裏切られた国民の怒り

 今回、ルーマニア国民が激怒した理由はもう1つあります。

 それが、つい先日、新政権が樹立されたこと。ルーマニアでは昨年12月に選挙があり、社会民主党が政権を取りました。

 選挙期間中、後に勝利することになる社会民主党は、給与を上げる等、「国民のための政治」を強調しました。頼もしいルーマニアの未来。投票した人は、これを信じ、投票。結果として社会民主党が勝ったわけです。

 新政権ができ、いったいどんな政策を打ち出してくるのか期待が膨らんでいたわけです。そんな中、新政府がとった行動は、「汚職した政治家」を救済できる法案を打ち出したこと。

 しかも、救済される人物の一人は、汚職の罪に問われているドラグネア氏。ドラグネア氏は選挙で勝利し、政権を奪回した社会民主党の党首です。そして、社会民主党は選挙戦の最中に言っていた「国民救済」の政策を打ち出してくるのではなく、いきなり「汚職した党首救済」へ動いたわけです。

 あまりにもふざけている。ルーマニア国民は少なくともそう感じています。

◆子供にまで民主主義が根付いている姿

 筆者はほぼ毎日、もっとも人が多く集まるとされるブカレストの政府庁舎前にある勝利広場にデモの様子を見に行きました。

 数日間に及んだデモでしたが、もっともカオスと感じたのが2月1日。この日はソーシャルメディアなどを通じて、怒れる国民が本格的に集結した日です。あまりに大勢の人が同じ場所に集まり、近郊の駅はあまりの混雑で、前へ進めないような状況でした。チャウシェスク政権崩壊以来の大規模デモということでしたが、筆者自身がルーマニア国民の不満を見た日にもなりました。

 周りを見渡すと、老人から、小さい子供まで大勢が集まっていました。

 たまたま知人が小さい子供を連れて参加していましたが、子供の参加者の多さが気になったので聞いてみると、その返答は、

「私たちは長年独裁政治で苦しんできた。子供には声をあげることの大切さを伝えたい」というものでした。

 民主主義が根付いたルーマニアの姿でもあります。

◆法案撤回を達成しても政治の腐敗は消えない

 連日の大規模デモの後、動きがあったのが4日。

 グリンデアーヌ首相が、ルーマニアを分裂させたくないとし、問題となっていた法令を撤回すると発表しました。つまり、デモの声が届いたわけです。さすがにこの時ばかりは、デモが歓喜の声に変わる瞬間となりました。

 しかし、ルーマニア国民の不満は法令撤回ぐらいでは収まりません。法令撤回宣言の翌日の5日、再びデモが起こりました。その規模は以前に比べてまったく引けをとらないものでした。

 国民が不満なのは、腐敗した政治。法令を撤回しようが、政治家が変わらないと、何も変わらない。ルーマニア国民の心が安らぐ日はまだまだ先のようです。

<文・岡本泰輔>

【岡本泰輔】
マルチリンガル国際評論家、Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。