来日外国人が増え、それを迎えるお店や宿泊施設で、外国語の表記が必要になってきています。ネットでは、自動翻訳による奇妙な外国語の張り紙がおもしろおかしく紹介されていますが、当事者としては笑ってもいられないでしょう。資料写真。筆者撮影。

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来日外国人が増え、それを迎えるお店や宿泊施設で、外国語の表記が必要になってきています。ネットでは、自動翻訳による奇妙な外国語の張り紙がおもしろおかしく紹介されていますが、当事者としては笑ってもいられないでしょう。

日本語での注意書きは、端的に伝えようとすることが多く、言葉を省略しています。省略された言葉を補うことなく自動翻訳にかけると、当然ながら変な外国語に翻訳されてしまいます。翻訳しようと思っている文章について、一旦、回りくどい言い方に書き直し、それを外国語に翻訳してみて、さらにその翻訳結果をまた日本語に翻訳してみて、元の意味になるかどうか確認をすると、変な翻訳になることは減ります。

ただ中国語の場合、自動翻訳ではなかなかうまく翻訳はできません。地名や店名といった固有名詞に使われている漢字を固有名詞ではなく、一般的な動詞や名詞、修飾語等だと認識されてしまうと、変な翻訳になってしまいます。これは中国語を日本語にする際にも起こります。

従業員に中国人がいる場合、その人に翻訳を頼むことも多いでしょうが、これも注意が必要です。中国語ができるからと言って、翻訳の専門スキルがあるとは限りません。普通話(中国の共通語)ではなく、出身地の方言をそのまま使っていたことがあります。以前宿泊した施設の喫煙所の案内ポスターに「吃煙」という表記がありました。普通話では、「たばこを吸う」は「吸煙」という言葉を使うので、調べてみたところ「吃煙」は中国の一部の方言だということが判りました。その施設の話では、中国人従業員がその案内を作成しているそうで、その人はその表記が当たり前だと思っていた上、他にそれをチェックできる人もいなくて、そのまま張り出されてしまったということのようです。

方言もですが、外来語の場合、漢字への置き換えが複数のパターンがあることがあります。外来語の漢字への置き換えは、意味の場合と音の場合があり、例えばインターネットについて主なものとして、「互聯網」と「因特網」があります。IT業界的には意味で置き換えた「互聯網」の方がスタンダードのようですが、音で置き換えた「因特網」もまだ一般的には使われています。更に、中国本土と台湾、香港で外来語の漢字への置き換え表記が違うこともあります。

日本での滞在期間の長い中国人に翻訳を依頼する際にも注意が必要です。まずは中国での新語・流行語に疎いことがあります。さらに日常日本語を使っている人だと、本来翻訳する際に別の単語に置き換えなければならないのに、日本語で使い慣れている単語なので、そのまま使ってしまうことがあります。ある仕事が一通り終わったので「反省会」をしようという話になりました。中国側スタッフにそのまま「反省会をしよう」と日本側の中国人スタッフが申し入れたところ、「反省をするような悪いことはしていない」と怒られました。日本では軽く振り返りレベルで「反省会」という言葉を使っていますが、中国では、すごく悪いことをしたことに対して行うというニュアンスがあるようです。

意味としては合っていても、イメージが合わない言葉を選んでしまっていることもあります。関東の駅ではトイレの表記のところに「厠所」という中国語をよく見ますが、これは「臭ってきそうな便所」というようイメージの言葉。九州の駅では「洗手間」という表記を見かけました。こちらは「お手洗い」というイメージの言葉。単純に中国語の単語にすればいいということではなく、状況に合わせた言葉を選ぶ必要があるでしょう。

こういう話をすると、専門の翻訳業者に依頼をしないといけないと思われるかも知れませんが、その翻訳をする従業員に、上記のような内容を注意しつつ翻訳するように依頼をすることで、こういう問題は回避できるのではないかと思います。

■筆者プロフィール:田中 周 (たなか しゅう)
1963年大阪府生まれ。メーカーの宣伝関係部署に勤務し、20年近く中華圏に対する広告、イベント、展示会等の施策を担当。出張した都市は30都市以上。対中国のビジネスを順調に進めるための、ちょっとした気遣い、工夫の仕方、中国人との付き合い方をご紹介。