その場かぎりにしない、次につながる「雑談」

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「その場かぎりじゃなく、『何かあったときに頼りになりそう』と思われる話がしたい」(35歳・マスコミ)、「初対面で好印象を残すにはどうすればいいか、いまだにわからない」(48歳・教育関係)というように、次のアポイントにつなげるためのトークに課題がある人もいるようだ。ムダ話と雑談はどう違うのだろうか。

■笑顔はご法度?タバコは必要?

「会話のなかで信頼感、安心感、親近感を与えるよう心がけましょう。人は話を聞いてくれる相手に安心感を覚えるもの。何を話すかより『聞く姿勢』に重点を置いて下さい。話すスピードや声の高さを相手に合わせると、『ミラー効果』によって親近感を感じてもらうこともできます。そして、自然なレベルでゆっくりと話すこと。早口で一方的にまくしたてると、軽薄な印象を持たれて信用されません。営業スマイルを貼り付けるのではなく、会話の内容によって表情を変えることも忘れずに」と語るのは佐藤氏だ。

法律相談に訪れるクライアントは、初対面であるケースが圧倒的に多い。そこで「この人に任せれば大丈夫だ」と思われるためには、この3点を意識することが重要なのだという。

「自分と付き合うとどんなメリットがあるのか、相手に明確にイメージさせることができれば成功です」と言うのは嶋氏だ。

「自社のサービスを紹介しつつ、『御社のこんな課題をクリアできます』とはっきり伝えることが多いですね。また、私たちは営業をサポートする会社なので、取引先は多岐にわたります。その際、相手の業界の専門用語や共通言語を使うことで『御社に対して理解があります』とアピールできます。たとえば、『お客様』『カスタマー』『クライアント』『パートナー』など、顧客を何と呼ぶかは企業によって違います。それを相手のルールに合わせることで、こちらの提案がスッと浸透するんです」

業界を理解していないと、営業をサポートすることはできない。共通言語で語ることが、信用の担保になるのだろう。

2人とまったく違う考え方をするのは、カナダとイギリスで教育を受け、グローバルにビジネスを展開しているマイケル・オン氏だ。「ビジネスの話以外はすべてムダ話だ」と断言する。

「そもそも、中国ではタバコを吸い、お酒を飲むのがビジネスマンのスタンダード。それがないと、コミュニケーションがとれないとまで言われています。しかし、私はそのどちらも嗜みません。それでもビジネスが成立しているのは、きちんとした仕事をしているから。結果で評価されているのです。日本ではビジネスの場でも好感を残すことが大切だとされているようですが、私はビジネスパートナーに『感じのよさ』などという曖昧なものは求めません。相手もきっとそうです。若い頃は、好感度を上げることでビジネスが円滑に進むのではないかと考えていましたが、今はそうは思いません。でも、私はとてもいい人間ですよ」

日本的な「感じのよさ」と海外でも通用する圧倒的な実績。これらの合わせ技が最強の武器だということだろう。

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・相手の業界用語で話す【○】
・自分のペースで話す【×】

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レイ法律事務所 代表弁護士 佐藤大和
芸能トラブル・企業法務など幅広くカバー。人気ドラマの法律監修・出演なども行う。著書、『ずるい暗記術』『二階堂弁護士は今日も仕事がない』。
 
アイランド・ブレイン代表取締役社長 嶋 基裕
「世界で一番頼りになる営業支援会社」を目指し、55業種・1200社以上の営業・販路開拓をサポートする営業支援事業を行う。商談実績は4万件近く。
 
香港経済士学会 会長 マイケル・オン
シンガポール出身。香港、中国での豊富なビジネス経験を持つ投資家・実業家。スキンケアブランド「TCM+」を展開するMiLOCグループCEO。

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(大高志帆=文 奥谷 仁(マイケル氏)、川島英嗣(嶋氏)、露木聡子(五十嵐氏)=撮影)