金融業界“女性管理職急増”で、インフレ&バブル状態

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安倍政権では「一億総活躍」の掛け声のもとで、女性や高齢者の活躍を推進。時代の流れを受けて、女性活躍に本腰を入れる企業も増えてきました。ただ、女性活躍を急速に進めたことで思わぬ「困った状況」も起きています。そんな企業にスポットを当ててみました。この領域に詳しい業界ウオッチャーの意見をもとにした「チェックリスト」つきです。

*『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)、『凄母(すごはは)』(東洋経済新報社)など、当事者にとっては耳が痛いキャリアの真実を発表し続ける佐藤留美さんからの情報をもとに構成

■見栄えがよく見える数字にとにかくこだわる金融業界

金融系企業で女性管理職比率が急増しています。ただ、昔から金融系企業は、社外に出る数字をうまく整えることで定評がありました。

大学生の就職人気ランキングなどでは、「同業に負けてはいけない」というお達しが出ているメガバンクも少なくありません。複数の大学が連携する大きなサークルに飲料や菓子類などを付け届けして人気取りをしているとも聞きます。

■事務職分野で女性管理職のインフレとバブル

女性管理職急増に関しても、かなり無茶な話を聞きました。そのいくつかを紹介します。

「たとえて言えば、女性管理職がインフレでバブル状態、といった感じですね。まず、女性管理職には、私のような課長補佐や係長・主任までも上げ底でカウントしています。それも、本来であれば管理職を置かなかった分野に、係長・主任・課長補佐をつくっています」(メガバンク勤務の30代後半の女性)

この銀行では、窓口、個人営業、個人融資、庶務、などいわゆる一般職が中心となる事務部門にまで、係長や主任、課長のイスを用意し、女性の管理職比率を上げているというのです。

「銀行の場合、外回りの法人融資は、かなり危険な仕事でもありました。たとえば返済が滞るような融資先からは資金の引き揚げをしなければならないし、新たな取引も謝絶(お断り)します。そうなると、相手は経営が破綻してしまうので、必死になります。それで、顧客先に拉致されるような、大変なことが起きるのです。だから慮りもあって、女性には危険が少ない窓口やミドル業務を任せていたのでしょう。男の人は危ないけど出世する仕事、女の人は安全な分、出世しない仕事と住み分けていたのを、一気に変えつつあります」(前出女性)

■朝起きたら管理職! というシンデレラハラスメント

ずっと事務職として育てられ、いきなり管理職に指名されたら……、本人たちからも悲鳴の声が上がることになりそうです。

「部下も持たず、つい最近まで昇進も考えていなかったという人たちばかり。違和感を持つ人、プレッシャーを感じる人など、社内では新たな問題が起きています」(メガバンク勤務の30代後半の女性)

銀行に限らず、生保や損保、証券業界でも事情は似ているようです。

「事務職からの管理職」に戸惑う声を集めてみました。

「38歳になった2015年、いきなり課長になれ、と言われたんです。出世なんかしたくなかったし、何をやればいいかわかりません。『いままでと仕事は変わらず、待遇がちょっと良くなるから』と上の人は言います。それなら、本社で広報の仕事をしてみたいなあ」(外資生保の老舗の保険事務の職員)「40歳を過ぎていきなり管理職になりました。バックヤードの仕事一筋だったので他部署の人も知らず、基幹職研修で一緒になると緊張します。そこで課題に出るプロジェクトファイナンスの事例など、さっぱり意味が分かりません」(国内大手損保の営業部勤務)

■「スカートをはくしかないか」と諦め顔の男性

かつて企業は、総合職採用した多くの女性を、「女性がなじみやすい4つのR」部署に配属していました。IR(経理)、PR(広報)、HR(人事)、CSR(法務)とRのつく部署です。いま、多くの企業で起きている「4Rの女性管理職バブル」は、4Rに多数いる管理職適齢期女性を昇進させることで起きるのです。当然、何人もの「部下なし課長」が生まれるという不思議な状態となっています。

その煽りで、同年代の男性社員の昇進可能性はいよいよ小さくなります。「課長になるには、スカートでもはくしかないか」と諦め顔で語る男性社員も少なくないそうです。

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▼こんな企業は要注意!

本記事は、『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)、『凄母(すごはは)』(東洋経済新報社)など、当事者にとっては耳が痛いキャリアの真実を発表し続ける佐藤留美さんからの情報をもとに、編集部で構成しました。
この話は、金融系に限らず、多くの日本企業で起こることです。もともと日本では「女性は4年制大学を出たら就職先がない」と長らく言われていました。そうした風潮が崩れ女性の大学進学率が短大のそれを上回ったのが1996年。彼女らが世に出たのは2000年前後。そのころから企業の女性総合職採用も少しずつ増え始めました。
とすると、多くの企業では、課長適齢期にあたる年代の女性は、まだほんの少数しかいないのです。現実を考えずに、政府やマスコミの風潮に流され、女性管理職を増やすと、こうした問題が起きるということでしょう。

▼このタイプの会社CHECK LIST

□業界の横並びを強く意識する
□許認可等で行政に頭が上がらない
□「斬新」より「着実・安定」を重視
□IRや経営目標でも数字を重視
□取引は「情」より「理」を優先

3つ以上あてはまったら要注意!

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(海老原嗣生=構成)