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最近Starbucksでは「Mobile Order & Pay」を使うようにしている。事前にスマートフォンのアプリで注文して支払いも済ませ、店では受け取りカウンターに直行して注文したものを受け取る。ピーク時だと10分以上かかることもあるレジ待ちの行列に並ばずに済む。

Starbucksの2016年10〜12月期決算発表でMobile Order & Payが話題になった。1年前は米国の注文全体の3%だったMobile Order & Payが7%にまで増加したそうだ。実際に便利なのだから納得の伸びだが、それがトラブルにもなった。

12月期は売上の伸び(3%)がアナリストの予想(3.7%)を下回り、その大きな原因の1つがMobile Order & Payだったという。どういうことかというと、アプリからの注文の増加で飲み物を作るバリスタがボトルネックになってしまった。行列に並んだ上に飲み物が出てくるのが遅いことにレジ待ち客がいらだってStarbucksから離れてしまったという。「われわれは仔細に問題解決に当たっている。問題の本質は需要過多であり、そうしたオペレーションの難題をわれわれは過去に解決してきた」と、創業者CEOのHoward Schultz氏は述べていた。

Mobile Order & Payが成長の鈍りの原因というStarbucksの主張に懐疑的なアナリストも少なくないが、店内を観察してみると忙しい時間帯の混雑が以前よりもひどくなっているように思う。朝の通勤時間帯などピーク時に、Mobile Order & Payからの注文が20%を超える店が前期の600店(前年同期の13店)から1200店に増えている。

考えられる対策は2つ。モバイルアプリを用いたオーダープロセスの効率化によって、バリスタが淹れられる能力を超える需要過多が起こっているのだから、シンプルに供給を増やす。バリスタを増員し、エスプレッソマシンやコーヒーメーカーも増やす。もう1つはMobile Order & Payのマーケティング強化だ。売り上げの伸びを鈍らせたMobile Order & Payの導入を失敗と見るアナリストもいるが、失敗というならレジ待ち客をMobile Order & Payに変えられずに逃してしまっていることである。

Mobile Order & Payの方がお客さんは時間を有効に使えるし、メニュー選びやカスタマイズもじっくり検討できるのでレジ待ちより快適である。Starbucksにとってはリピーターを増やせて、店内の行列を解消できる。極端なことを言うと、レジが支払いのオプションになるような将来を目指して、Mobile Order & Payをプッシュするべきなのだ。

1月末に米サンフランシスコにCafe Xという無人カフェ・キオスクがオープンした。創業者は大学を中退してThiel Foundationなどの支援を受けてCafe X Technoligiesを立ち上げた。Cafe XにはWMFの全自動コーヒーメーカーと、産業用ロボットアームのロボット店員が備え付けられている。プレミアコーヒーを淹れる全自動マシンはすでに珍しいものではないが、ハードウエアとソフトウエア、そして機械学習技術を組み合わせて、お客さんがオーダーしてからコーヒーを受け取るまでの快適な体験をデザインしているのが特徴だ。お客さんはスマートフォンのアプリを使って飲み物を注文し(カスタマイズも可能)、アプリで決済。飲み物ができたら、注文時に受け取った4桁の番号をCafe Xの端末に入力すると、ロボットアームが注文の飲み物を手渡してくれる。

混雑する時間帯でも「レジで15分も待たなくても美味しいカプチーノが飲めたら…」からCafe Xを思いついたという。Cafe Xの供給量は1時間に100〜120杯。Mobile Order & Payの時代にも、バリスタが一杯ずつ淹れる飲み物、接客、まったりと過ごせる空間にStarbucksがこだわるのに対して、Cafe Xはスピードと効率性をとことん追求している。

最近、わが家ではZume Pizzaというデリバリー専門のピザ屋をよく利用している。ピザを作る過程が自動化されていてピザ職人はいない。ロボットが作るピザを人が配達するという、ちょっとシュールなピザ屋だ。

値段は通常のデリバリー・ピザよりもわずかに安いぐらい。ロボットが作るピザと考えたら「高い!」という人がほとんどだが、デリバリーしてもらうと料金の15%前後のチップを配達してくれた人に払わなければならない。Zume Pizzaは「チップ不要」なのだ。トータルで考えたら安い。そしてZumeは早くて、快適だ。スマートフォンで注文し、タップして決済完了。場所はどこでも、公園の中でも指定できる。自動化されているだけにピザを焼く工程が早く、注文してから20分程度で届く。「準備中」「焼いてます」「出発しました」というような過程がスマートフォンに通知され、出発したらアプリのマップで位置を確認できる。味は「まぁまぁ」レベルだが、簡単に食事を済ませたいけど、出かけるのは面倒、でもデリバリーは高くなるという問題を解決してくれる価値は大きい。

かつてピザ屋のデリバリー店員は時給8ドル+チップだった。ところが、最低賃金が引き上げられてピザのデリバリーも時給10ドル、11ドル、いずれは15ドルと上がっていく。配達にかかるコストの上昇はデリバリー・ピザの価格に上乗せされる。デリバリーだと高いからデリバリー注文が敬遠され、せっかく時給が上がってもデリバリー店員の仕事が減るという悪循環なのだ。Zume Pizzaのスタッフは時給18ドル。自動化されたピザ屋だからこそ、ピザを値上げせず、来る最低賃金15ドル時代も楽々クリアできる賃金をデリバリースタッフに支払えている。

Cafe XやZume Pizzaは「テイクアウトを早く」「出前を手頃な価格で早く」という問題をピンポイントで解決するサービスであり、特にZume Pizzaは見事なソリューションになっている。Starbucksは万人向けであるため、Mobile Order & Payへのシフトには苦戦しそうだ。それでも少しずつ、いずれはたくさんの人にMobile Order & Payがソリューションとして認められるようになるのではないだろうか。レジのないコンビニAmazon Goが昨年話題になったが、食に関する体験を変えようとしているのはAmazonだけではない。モバイルによる改革が”Uber for X”と呼ばれているが、2017年は広く食に関する”X”の成長が期待できる。

(Yoichi Yamashita)