タレント 彦摩呂さん/筆ペンは「呉竹」のものを愛用。いつでも書けるよう、筆ペン、便箋、封筒、落款は常に携帯。

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メールや電話もよいけれど、手書きの手紙が届いて「おっ?」と印象に残った経験はありませんか。今回、日常的に手紙を書いているという著名人に、手書きの魅力を語ってもらいました!

■手紙は“読む挨拶”。挨拶と同じように心を込めて

年を重ねるにつれ、感謝の気持ちで頭を下げることが多くなりました。私にとって手紙は、そんな感謝の気持ちをお伝えするためにも大変重要なものです。

手紙は“読む挨拶”です。相手の顔を見て挨拶するのと同じように、書くことで相手に心が伝わるということを意識して書きます。堅苦しすぎても、くだけすぎてもダメ。相手のことを想いながら、真心込めて書くことが大切です。

例えば、ロケ先などでは、お店の方にランチの忙しい時間の合間をぬって対応いただくことが多くあります。そんなときは、「先日は大変お世話になりました、笑顔で対応していただき、おかげで楽しい収録となりました」といった内容の手紙をお送りしています。また、「彦摩呂さんに食べてもらいたい」と、贈り物をいただくこともたくさんあります。こういうときにもお礼の手紙をできるかぎり書いています。

手紙はだいたい3日に1度、隙間時間や帰宅後にまとめて書くということが習慣になっています。スケジュール帳を眺めながら書くということを、かれこれ何年も続けています。

書くうえで気をつけていることは礼儀作法。拝啓からはじまり、相手の名前、時候の挨拶、本題、お礼でくくる……と一連の流れを大切にします。そしてどの手紙にも、最後はオリジナルの落款を押印。

■書き言葉と話し言葉は相手との距離感でバランスをとって

メールやラインは話し言葉になりますが、手紙は自然と書き言葉になりますよね。そこに話し言葉を少し加えることで、うんと親しみを感じられる。相手のことを考えながら、そういったバランスをとることも手紙の醍醐味(だいごみ)だったりします。

一例をあげてみますと、目上の人宛てなら「時節柄、ご自愛ください」、親しい人宛てなら「季節の変わり目ですので、風邪などひかないよう頑張ってくださいね」といった具合です。このように、同じ内容でも送る相手により文体を変えることが重要です。

若い頃、書道の師匠に「紙は千年生きる。人は、紙に墨でしたためることで気持ちを投影し、文化を育んできた」ということを教えられました。紙に人の心が投影されている。そしてそれは生身の人間が書いたこと、そこに価値があるのだということを、今もなお、自分のなかで大切にして、手紙を書いています。

こんなことがありました。随分前に訪れた食堂を、数年後に再訪する機会をいただきました。その食堂のおばあちゃんは、当時私が送った手紙をとっておいてくれたようで、現物を見せてくれたのです。これは本当にうれしかったですね。また、手紙というのは人の心を潤すものだなと痛感しました。仕事で疲れて帰宅したときには、手紙を書くことが面倒だと感じることもありますが、こういう素敵なことが起こるからやめられないんですね。

私にとって手紙は、一切メディアを使わない、電波のない送受信機のようなもの。仕事、プライベート問わず、電話で用件が伝えられることでも、あえて手紙を書くようにします。それは、その時間を費やしたという証拠でもあるから。時間をかけた分だけ、相手への想いが込められる、そんな気がするんです。

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彦摩呂
タレント。1966年生まれ。俳優、レポーター。アイドルグループ幕末塾で活動したのち、タレントに転身。インパクトのあるコメントと、朗らかなキャラクターのグルメレポーターとして人気を博す。これまで訪れたお店は1万店以上。習字はプロ級の腕前。

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(富岡麻美=構成 冨田寿一郎、水野聖二=撮影)