深田晃司監督 in ロッテルダム映画祭

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 深田晃司監督、浅野忠信主演の映画『淵に立つ』が3月2日にオランダで公開される事が決まった。同作品はオランダで開催中の第46回ロッテルダム国際映画祭でオランダ語字幕付きで上映されており、現地入りした深田監督は「オランダの配給会社のイマジンはこれまで欧州の映画を扱っており、日本映画は初めて。そもそもオランダで日本の映画が一般公開されるのは難しいと聞いてるので、非常に光栄です」と喜びを語った。

 『淵に立つ』は昨年の第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞して以来、現在公開中のフランスや台湾をはじめ、2月15日にはベルギーでも公開されるなど30の国と地域での公開が決定している。深田監督の作品はこれまで、『ほとりの朔子』(2013)はフランスと英国、『さようなら』(2015)はフランスで公開されているが、今回が自身最大の公開規模となる。「カンヌという世界最大のマーケットで上映された影響力を実感します」と深田監督。

 カンヌのみならず国際映画祭を戦略的に活用してきたことが今に繋がっている。ロッテルダム国際映画祭に参加するのは『歓待』、『ほとりの朔子』、『さようなら』に続く4作品目。『歓待』は映画祭のレーベルからDVD発売もされた。着実に認知度を高めると同時に、ファンを獲得。そこで今回は『淵に立つ』と合わせてiPhoneで撮影した短編『鳥(仮)』も併映された。「映画祭には極力参加するようにしています。映画祭は出会いの場であり、次へのステップ。『さようなら』のフランス公開も、『ほとりの朔子』で参加したフランスのナント三大陸映画祭で英語の企画書を持って行ったことが現地の配給会社に繋がりました」。

 日本国内での評価も上々だ。第91回キネマ旬報ベスト・テン日本映画ベスト・テン第3位、第31回高崎映画祭では最優秀作品賞と最優秀女優賞(筒井真理子)、第71回毎日映画コンクールでは女優主演賞(筒井)。さらにアジア版アカデミー賞こと第11回アジア・フィルム・アワードでは作品賞、監督賞、主演男優賞(浅野)がノミネートされており、3月21日に香港で行われる授賞式に参加する。

 「いつも観客の解釈が分かれるような映画を作りたいと思っています。カタルシスや共感できる登場人物を置いた方が観客を巻き込む力は強いとは思いますが、逆に解釈の幅を狭めてしまう。一方で、多数の評価が決め手となる映画賞では弱くなりがち。その中で評価された事を有難く思います。ただアジアでノミネートされることより、日本アカデミー賞の方がハードルが高いのだなと感じています(苦笑)」。

 次回作は日本・フランス・インドネシア合作の『ザ・マン・フローム・ザ・シー(英題) / The Man from the Sea』(仮題)。これも2015年に行われた香港国際映画祭の企画マーケットに参加するなど、何年もかけて実現に動いてきたものだ。「企画マーケットに出すことで作品の中身をブラッシュアップしながら次に進めることができます。何より海外の配給会社の反応をみて、成立すべき企画かどうか見極めることが出来ます」。クランクインは8月の予定。漫画原作の映画化が席巻する中、オリジナル脚本で世界に向けて勝負し続ける深田監督の動きは、日本映画界の若手監督たちへの大きな刺激となるはずだ。(取材・文:中山治美)