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テーマ=『デジタル×価』

“最強のよそ者”として、数々の業界でビジネスに変革をもたらし続けてきた伊藤嘉明が、”趣味も仕事もフルスイングする価値”について考える連載コラム『伊藤嘉明の「人生万事振り切るが価値」』。希代のゾンビマニアにして、無類のクルマ好きでもある彼は、ちかごろ絶滅危惧種マニア車コミュニティへの投稿にハマっているのだそうで……。

 

あちこちの記事で“SNS疲れ”という言葉を目にするようになった。現に、もうSNSからは距離を置く、という人たちもたくさん出始めている。私自身も2009年にFacebookを始めてから、そういう時期を何回か迎えてながら今日に至っている。元々は親しい友人だけと繋がっていたのだが、時とともに、それほど親しくもない人と繋がったりするようになり、投稿する内容も上っ面な内容になったり、時には仕事の宣伝みたいな内容になったり、だんだんと違和感を覚え「もうやめようかなぁ」というフェーズを経ては、また楽しいことを経験しては戻る、という繰り返し。



でも、最近は新たな楽しみを発掘している。それはクローズドなコミュニティで投稿すること。元々は好きなブランドやモノ、企業、スポーツ、ニュースメディア、ジョークメディアなどに“いいね!”をして、それらのページからくる情報だけを楽しんでいたのだが、今ひそかに楽しんでいるのは、そのページの中に自ら投稿するというプロアクティブな方法。

私が投稿するのは主に、趣味のクルマであるサーブ(SAAB)関連のページになるのだが、例えば本連載の記念すべき第1回に出てきたサーブ『9―3ヴィゲン』。すでに潰れて存在すらしない自動車メーカーの作るマニアックなクルマ、日本には20数台しか存在しないし、そのうち2台は私のものだったりするくらい絶滅危惧種だから、Facebookでコミュニティなんかできるはずもなく……。

それでも海外に目を向けると、同志がたくさんいるんですよねぇ〜これが! だから、最近の楽しみは、これらのページで情報をやりとりすること。例えば、「ヴィゲンのここが壊れたんだけど誰か直し方知ってるかい?」とか「安い部品売ってるサイト教えて!」とか、潰れた自動車メーカーを愛する世界の変態マニアックオーナーたちならではの、共通のお悩み相談室となっている。

まぁ、それだけならば、まだパンピー諸君にも理解できるでしょうが、完全絶滅種変態モデル所有の上級者ともなると(当然私はこの上級者カテゴリーに入る)、「アメリカのミシガン州で青のヴィゲンが売りに出たよ!」という投稿にヨーロッパやオーストラリアのヴィゲンオーナーたちが、買うわけでもないのに「自分のヴィゲンと同じ色だ!」とか「なんて美しいデザインだ!」とか「この後ろからの角度が素晴らしい」「デザイナーは神だな」とか、もう意味の分からない「ヴィゲン愛万歳!」な、自画自賛コメントの嵐。

松尾芭蕉の句“夏草や 強者どもが 夢のあと”ならぬ、“ヴィゲンさま 変態どもは 夢の中”という、まさに他人から見たら、さっぱり理解できない変態マニアの集いページとなっている訳です。



そんな中でも上級者カテゴリーの私、最近Facebookの『ヴィゲン・エンスー』(Saab Viggen Enthusiasts)のコミュニティにドキドキしながら初投稿したところ、インスタでもヴィゲンの写真をたくさんあげていたためか、「おお、日本の君のヴィゲンはよく知ってるよ!」とか「素晴らしいな!」とか「青と黄色か、とてつもなくセンスいいな、君は!」「この日本一の幸せ者!」とか……この最後の2コメントにクラっときてしまい、最近はもっぱらこちらのクローズドの方が楽しい、というわけなのです。

なんせ、私は褒められて伸びるタイプ。グローバルレベルで“君はセンスがいいな!”とか褒められると、調子に乗るに決まっている。でも、よく考えるとみんな同じ車、同じ色のヴィゲンオーナーたちが褒めあってるだけなんだけどね……。彼らも私と同じく、世間からも家人からもガラクタ扱いされているヴィゲンの悲しきオーナーたち。心の拠り所なんですな、要は。

まぁ、とにかく“SNS疲れ”になんて悩んでないで、あんなものは自己満足でいいから、楽しければいいと思う。お! そろそろ『ヴィゲン・エンスー』のページに投稿しなきゃいけないのでこの辺りで……。羨ましくなってきたそこのキミ、私のヴィゲンを格安で譲ってやろうか?

お前も蝋人形にしてやろうか!

みたいな感じで……では、御機嫌よう!

文/伊藤嘉明

※『デジモノステーション』2017年3月号より抜粋

連載バックナンバー: 伊藤嘉明の「人生万事振り切るが価値」

いとうよしあき/X-TANKコンサルティング 代表取締役社長。数々の外資系企業での事業再生、マネージメント経験を生かし、可能性のある組織や人材を有機的に結合させたり、資金を投入することで、日本国内はもちろん、生まれ故郷である東南アジアでイノベーションと変革を巻き起こす。著作に『どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力』(東洋経済新報社)など。