また、逆にプラスになる一面もある。大前がいると、周囲の選手がまず彼を見てボールを預ける傾向があり、大前のところで攻撃がスピードダウンする面も見られた。だが白崎や野津田、枝村らは、より判断が速く、ボールがノッキングすることなく前に進んでいく。攻撃のスピード感という面では、以前より向上しているように感じられた。
 
 チャンスメイクの面だけでいえば、白崎のほうが多彩な形や精度を見せる。守備に関しても、金子のほうがハードワークできて効果的な仕事ができる。

 もちろん、得点力という面でのロスは大きい。大前は、降格した2015年でも11得点を決めており、1年を通して働けば10点以上は期待できる選手だ。チャンスは作れても、鄭以外の選手がどれだけ決めきれるかという部分が不安要素として残ることは、この試合でも否めなかった。

 鄭自身も「僕以外の選手がもっと点を取ってこそ、相互作用というか相乗効果でもっと点が入ると思う」と語る。鄭以外に恐い存在がいなければ、マークが鄭に集中し、彼自身のゴールも減ってしまう。そのあたりは、若い攻撃陣の成長やミッチェル・デュークの復調に期待するのか、あるいは新たなストライカーを獲得するのか。

 ただ、そこさえクリアできれば、「大前ロス」のマイナス面を最小限に抑えられるポテンシャルは、現時点で十分に感じられた。
 
取材・文:前島芳雄(フリーライター)