反日学生たちは海外にもネットワークを広げようとしている

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 釜山の日本総領事館前に置かれた少女像が、融和に向かいつつあった日韓を再び引き離そうとしている。政府や自治体の制止を振り払って像設置を進めたのは、市民団体「未来世代が建てる平和の少女像推進委員会(以下、推進委員会)」である。その主要メンバーは「わが民族がひとつに」という団体に加入している。どのような団体で何を目的としているのか。ジャーナリスト・織田重明氏がレポートする。

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 日本の公安関係者が語る。

「『わが民族がひとつに』は、2010年に当時の代表らが食糧支援として200t以上の米を携えて訪朝するなど、韓国で有力な親北団体のひとつです。市民運動に力点を置いていますが、北朝鮮の統一戦線部の強い影響下にあります」

 日韓関係悪化を企図した北朝鮮の工作の可能性を指摘する。さらに見逃せないことに、今回の少女像設置の背景に世界「慰安婦問題」ネットワークとでも言うべき学生組織が見え隠れする。その名は「平和ナビ」だ。

 ナビとは韓国語で蝶を意味する。日韓の当局は、元慰安婦らの支援活動をする挺身隊問題対策協議会(以下、挺対協)の下部組織と見なしている。

「ナビは、慰安婦問題に取り組む学生のネットワークで、名門の梨花女子大を皮切りに始まり現在は韓国国内に11の支部があります。月に一度ソウルの本部に支部の学生らを集め挺対協からの指示が伝えられており、署名集めや寄付金集め、さらには韓国各地で少女像の設置など、挺対協の手足となって動いています」(同前)

 メンバーの学生らは過激な活動も辞さない。2015年末の日韓合意直後には、建て替え中のソウルの日本大使館が間借りするビルに学生ら30人が押し入り、「韓日慰安婦交渉を無効化せよ」などと大声を挙げる騒動を起こした。

 韓国政府による撤去を警戒して日本大使館前の少女像の横で寝泊まりしているのもナビのメンバーらだ。

 挺対協の尹美香・常任代表は、ナビの学生ネットワークを韓国国内だけでなく海外にまで広げることを計画している。蝶が羽ばたくように各国にネットワークを作り上げるのだという。

 すでに米国やフランスで現地の韓国人らが署名集めや講演会などの活動を展開しており、ドイツやオーストラリアにも浸透させる計画だが、なかでも日本は主要なターゲットとされる。

「一昨年には、ナビのメンバーの学生らを二度にわたり日本に派遣し、東京や関西、沖縄の学生らとの交流会を開いています。沖縄では、名護市辺野古や東村高江で反基地運動にも参加しました。挺対協は米軍基地問題を契機に日韓学生の共闘体制を深める狙いがあるようです」(沖縄県警関係者)

 現在、ナビは組織構築に勤しんでいる段階だ。実際に影響力を行使するほどの力はない。だが、韓国のデモは、日本と違って若者たちによって牽引されている。その中心をナビが担ったら瞬く間に、国内外に「反日」の火が広がる可能性もある。

 今回の釜山の少女像設置問題では、「(ナビは)準備段階ではミーティングに参加するなど積極的に関わっていた」と釜山大学3年生で、釜山の日本総領事館前の慰安婦像設置を主導した馬禧陳氏(22)も認める。同氏は市民団体「未来世代が建てる平和の少女像推進委員会(以下、推進委員会)」であり、「わが民族がひとつに」とも関係がある。

 筆者が取材した1月中旬。ソウルの光化門広場では、土曜の晩に厳寒のなか大統領糾弾デモが開かれていた。ところが、会場では「親日売国外交断罪」と書かれたビラが配られ、広場に面した米国大使館に緑色のレーザー光線があてられて「NO THAAD」(THAAD=米最新鋭ミサイル防衛システム)の大きな文字が建物の壁に浮かび上がっていた。これは、外国公館の威厳の侵害を防止するよう定めたウィーン条約違反に他ならない。

 朴槿恵大統領の退陣を求めるはずのデモが、反米や反日を叫ぶ場と化している。今回の少女像設置問題も、不幸な歴史を記憶するという本来の目的と遠く離れた強い政治性を帯びている。

※SAPIO2017年3月号