入国禁止が招く「貿易戦争」、米経済への影響は?

写真拡大

ドナルド・トランプ米大統領によるイスラム圏7か国の市民の入国禁止措置は今後、米経済に打撃を与える。大統領とその顧問らは国民を欺き、この措置は自国の安全を守るためのものだと思い込ませている。

一部の国からの移民だけを認める選り好みと、入国希望者の生活を困難にすることは、米経済全体にどのような影響を及ぼすだろうか?

グローバルな市場で活動する米国の大企業は、海外から得る利益をますます増やしている。必要な場所に必要な人材を配置することを禁じられれば、これらの企業の生産性は低下することになる。

さらに、他国からの報復措置という問題もある。移住や貿易に関連した禁止措置の対象国はいずれも、自国での米国企業の活動を阻害することができる。米国製品に輸入税をかけることも、米国民の入国を禁じることもできるのだ。また、米国製のモノとサービスをボイコットすることもできる。

頭脳流出はより深刻

入国禁止が経済にもたらすもう一つの致命的な問題点は、テクノロジーをはじめとするさまざまな専門分野の最も優秀な人材が米国から締め出されることだ。シリコンバレーのリーダーたちの多くがすでに、優れた人材を採用・確保する自社の能力が損なわれるとして、トランプに対する激しい非難の声を上げている。

アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は、大統領令の差し止めを求めて提訴したワシントン州を支持する考えを明らかにしている。また、フォードのマーク・フィールズCEOとビル・フォード会長も、民主党所属の多数の上院議員ら、共和党のジョン・マケイン、リンジー・グラハム両議員などと共に、入国禁止に反対する考えを明確にしている。

懲罰的な意味合いを持つ入国禁止措置はどのような形であれ、米国での起業と成功を目指していた人たちに大きな影響を与える。移民に対する差別的な態度自体が、非米国的だ。

歓迎されていない、あるいは空港で必ず拘束されて取り調べを受けると分かれば、前途有望な研究者や学者、エンジニア、その他の専門家たちは、米国への移住を目指すことをやめてしまうだろう。

そうした人たちは、最も優秀な頭脳の受け入れに常に積極的なカナダや欧州、さらには中国にも行くことができる。知的資本の流入を制限することは、別の形の貿易戦争だ。イノベーションは、国境よりもアイデアが尊重される自由な環境の中で生まれるのだ。

公約の「減税」にも影響

トランプは選挙運動中の公約を守り、環太平洋経済連携協定(TPP)をはじめとする貿易協定からの離脱を表明している。だが、TPPは中国に対する米国企業の競争上の優位性の確保につながっていた可能性がある。TPPが今後、どのようになっていくのかは不透明だ。

いずれにしても、貿易政策に関する一連の変更に市場がどのように反応するのか、注視していかなければならない。企業や投資家などの富裕層はトランプが公約に掲げる減税の実現を心待ちにしているが、同時に貿易と人材確保を阻害する政策が実行されれば、彼らの楽観もあっという間に消え失せることだろう。

世界中のどの金融市場が貿易摩擦のにおいをかぎ付けても、株価は瞬く間に急落する。英国で昨年行われた国民投票でブレグジット(Brexit、欧州連合からの離脱)が決定した時の株価の急落を覚えているだろうか。米国の経済規模は英国のおよそ6倍だ。そして米経済は、どのような貿易制限にも良い反応を示さないだろう。