高濱正伸●花まる学習会代表。1959年、熊本県生まれ。県立熊本高校から東京大学へ進み、同大学院修士課程修了。「メシが食える魅力的な大人に育てる」を信条にした学習塾・花まる学習会を93年から運営。

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うちの子は1学期の成績が振るわず、夏休み中もあまり勉強していなかったようだ。そろそろ受験準備に身を入れなければいけないはずだが、どうしたらスイッチが入るのか。子供の勉強に関する「新常識」を探ってみた。

■<実践編>

■煮詰まったときこそ父親の出番

勉強で大事なのは「見える力」と「詰める力(やり切る力)」。花まる学習会では、とくに算数の力を付けるためのキーワードとして、子供たちにこのことを繰り返し伝えています。

見える力とは、話の要点や図形の補助線など、ぼんやりしていたら見えないものが「見える」力。詰める力とは、与えられた課題に向き合い、集中して最後まで「やり切る」力です。詰める力は、子供が難しい課題を一人でやり切る経験をすることで身に付きます。

かつて、図形のセンスがとてもよく、見える力が突出して優れている子がいました。しかしその子は、才能を開花し切れませんでした。一番の原因は、母親が口を出しすぎて、一番大切な「やる気」をなくさせたことです。

子供が問題文を読んで考えている最中に、「ここにこう書いてあるでしょう」と、先回りして口をはさんでしまう。文章題の場合、数学でも出題者の意図を汲み取るための国語力が必要です。本当の学力を付けるためには、子供が独力で納得いくまで問題文を読み込まなくてはならない。その過程で親が口出ししたり、解答を教えたりしてしまうと、子供には問題を解く力が付かないし、正解しても「自力で解いた」という喜びはありません。ただ、その理屈がわかっていても、つい口出ししてしまうのが親というもの。

子供の学習に寄り添う時間が多いのは、父親よりも母親です。だから子供に干渉しすぎるのも多くは母親。そのなかで関係が煮詰まってしまったとき、母親に意見してバランスを取り戻させるのは父親の役目です。

とはいえ、正面から正論をぶつけるだけでは逆効果。最初に相手の話を受け入れ共感を示すことに9割の時間を費やし、その後でアドバイスをするのです。逃げてはいけません。サンドバッグになるつもりで、母親の話を聞いてあげることが大事なのです。

また、父親には子供の詰める力を鍛えるために、キャンプに連れ出して野外体験をさせたり、原爆資料館など人類の「負の遺産」を教える場所へ連れていったりすることをお勧めします。小学校高学年になると、子供は大人社会のきれいごとではない「本音」が気になり始めます。そのタイミングで現実社会の怖い一面を感じさせるとともに、自分が暮らしている社会や家庭のありがたさに気づかせるのです。

見える力を伸ばすには囲碁を習わせたり、パズルを解かせたりするのが効果的ですが、こちらも父親のほうが得意かもしれません。何よりも父親が子供との時間を多くとることで、母親の負担感が薄れ、家庭の雰囲気は必ず上向きます。学力を含めた子供の力を伸ばすには、それが一番効果的なことだと私は考えています。

 

(久保田正志=構成 大杉和広=撮影 教えてくれる人:花まる学習会代表 高濱正伸)