by chiaralily

太陽から吹き出す極めて高温で電離した粒子「太陽風」が爆発的に放出され、電磁波・粒子線などが地球上や地球の周囲にある人工衛星に甚大な被害をもたらす現象を「太陽嵐」と言います。この太陽嵐によって、将来的に経済危機が訪れる可能性が示されています。

Quantifying the daily economic impact of extreme space weather due to failure in electricity transmission infrastructure - Oughton - 2017 - Space Weather - Wiley Online Library

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/2016SW001491/full

How Space Could Trigger a Future Economic Crisis - Bloomberg View

https://www.bloomberg.com/view/articles/2017-01-19/how-space-could-trigger-a-future-economic-crisis

太陽嵐は過去にも発生しており、1859年に起こったものが有名です。この時は史上最大規模の磁気嵐が発生し、発達途中であった電子機器の回路がショートして、火災が発生しました。また1989年には1859年の半分ほどの威力の太陽嵐が発生しましたが、カナダでは磁気嵐の影響で送電線網が破壊され600万人もの人々が9時間の間、電力が使えない状態で過ごすことになったとのこと。なお、米航空宇宙局によれば、1989年に起こったの太陽嵐の威力でさえも「何千もの核爆発が同時に起こるようなもの」だったとのこと。



by NASA Goddard Space Flight Center

2017年1月17日に発表された「Space Weather(宇宙天気)」というレポートの中で、将来的に太陽嵐がアメリカや世界の経済に甚大な被害を及ぼす可能性が示唆されました。太陽嵐によって生じる損害はもっとも緩やかな予想で1日62億ドル(約7140億円)、最悪の場合は1日415億ドル(約4兆7800億円)の経済損失が生まれるとのこと。

2016年は、大型ハリケーン「マシュー」やルイジアナ州の洪水によって、アメリカは1980年に続いて史上で2番目に大きな天候を原因とした損害を受けました。その被害総額は460億ドル(約5兆3000億円)に上っています。

しかし、太陽嵐のもたらす損害は、ハリケーンや洪水のもたらす損害よりも甚大になるとのこと。例えば、GPS・衛星通信サービス・電子通信サービスはコロナ質量放出という太陽からプラズマの塊が放出される現象によって危険な状態になると見られています。また、送電線網は太陽嵐の影響を最も受けるものと考えられており、地球の磁場の変化が電流を阻害し、高電圧の変圧器はヒューズが飛んでしまいます。高電圧の変圧器は高額であるだけでなく巨大なので取替作業が難しく、新しいものが設置されるまでに5カ月はかかるという見立て。ケンブリッジ・リスク研究センターは、太陽嵐によって電力が失われれば、世界規模での被害は5年間で1400億ドルから6130億ドル(16兆1000億円〜70兆5700億円)になると予測しています。



Ian Muttoo

なお、2012年7月にも太陽風が発生しましたが、地球を直撃することなくかすめるだけに留まりました。この時の太陽嵐は1859年の時のものよりも威力が大きく、直撃すれば「現代文明を18世紀に後退させる」と言われていました。このような太陽嵐が今後地球を直撃する可能性は、十分に考えられるわけです。

太陽嵐を避けることはできませんが、太陽嵐をいち早く察知し警告するシステムを構築することは可能。また、太陽嵐を観測するための特別な衛星を打ち上げるという方法も存在し、事前に対策を取ることの重要性をBloombergは説いています。「これまで大きな太陽嵐に見舞われてないということが幸運なのです」「太陽嵐はいつか起こります。わからないのは、それが『いつなのか?』ということです」と欧州宇宙機関の宇宙天気チームのリーダーであるJuha-Pekka Luntama氏は語りました。