日本から駆け付けた白石監督

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 日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクトの1本である白石和彌監督作『牝猫たち』(公開中)と、白石監督がオマージュを捧げた田中登監督作『牝猫たちの夜』(1972)がこのほど、オランダで開催中の第46回ロッテルダム国際映画祭にて上映された。チケットはいずれも完売となり、新作のクランクイン直前というハードスケジュールの中、現地入りした白石監督も「無理して来た甲斐がありました」と顔をほころばせた。

 同映画祭は、日本映画斜陽時代に多くの若手映画監督を輩出した重要なレーベルとして、1996年の神代辰巳監督、2000年の深作欣二監督、2010年の崔洋一監督の特集上映など、たびたび日活ロマンポルノを紹介してきた。また2016年には足立正生特集も組まれ、ピンク映画という日本特有のジャンルを広く取り上げている。しかし田中監督の作品は、欧州であまり紹介されておらず、本映画祭でも初となる。

 急きょ、『牝猫たちの夜』でも舞台挨拶を行うことになった白石監督は「まさか僕の人生において、田中監督のイントロダクションを務めることになろうとは」と戸惑いつつ、1971年から1988年の間に約1,100本が製作されたという歴史や、「10分に1回絡みのシーンを作る」というロマンポルノ特有のルールを、大先輩たちから使命を授かったかのように丁寧に説明。

 さらに「会社としては男性を欲情させる映画を作るようにという目的があったのですが、監督たちにもプライドがあり、その中で作家性を出し始めた。興行的には不振でしたが、それらが名作として今に残るという結果になっています。そんな作品を僕の映画と共に上映できて光栄です。これを機会に田中監督が再評価され、どこかで特集上映が行われるきっかけになったら嬉しいです」と語りかけ、会場から大きな拍手が沸き起こった。

 上映後のQ&Aでは、田中監督版をどのようにリ・イマジネーション(再創造)したのか? という問いがあった。白石監督は「ロマンポルノを現代に復活させるに当たって、現代性や社会性を入れて欲しいという提案がありました。これは約束事ではなかったのですが、田中監督版がソープランドを舞台にしているのに対して(本作の舞台を)デリバリーヘルスにして、女性たちが行く先々で問題を抱えた人たちと出会うことで、今の社会を表せるのではないかと考えました」と説明した。

 また冒頭に「全ての牝猫たちに捧げる」と記載されている意味について問われ、白石監督は「ロマンポルノに女性ファンが増えてきたということもあって、これは女性向けに作ろうと思いました。今は生きづらい世の中で、彼女たちも風俗で働きながらその日暮らしをしています。でも全部がつらいというだけではなく、楽しいこともあるのではないか。日々いろんな事があるが、“生”への肯定として一文を入れました」と語った。

 白石監督にとってもロッテルダムは、長編デビュー映画『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(2009)で第40回に参加して以来となる。久々にロッテルダムの観客と触れ合った白石監督は、「こんなに温かく迎えてくれて気持ちよかったですね。これをきっかけに、ロマンポルノ全体がまた再発見されたら。僕もロマンポルノをまた撮りたいと思います」と再挑戦への意欲を語った。同映画祭では今年、佐藤寿保監督の日米合作の異色ピンク映画『眼球の夢』(2016)も選出されており、ピンク映画の新たな動きに注目しているようだ。(取材・文:中山治美)

映画『牝猫たち』は全国順次公開中
第46回ロッテルダム国際映画祭は2月5日まで開催