寝ているあいだに長距離移動できることがメリットのひとつである夜行高速バス。しかし名古屋〜大阪間という長距離とはいえない区間でも運行されており、好評といいます。背景には、「夜行バス」の強みを生かすダイヤ設定がありました。

3時間で着く距離 倍以上かけて運行のナゾ

 深夜の時間を有効活用し、寝ているあいだに長距離移動できることがメリットのひとつである夜行高速バス。ですが名古屋〜大阪間といった、長距離ではない夜行高速バスも存在します。

名古屋〜大阪間の夜行高速バスも発着する名古屋駅新幹線口の高速バスターミナル。写真のバスは東京行きの便(2016年12月、恵 知仁撮影)。

 名古屋駅と大阪駅を結ぶ昼行便の名神ハイウェイバスは、約170kmを3時間程度で走ります(便により異なる)。しかし、西日本ジェイアールバスとジェイアール東海バスが運行する夜行便の「青春大阪ドリーム名古屋号」は、大阪行きが名古屋駅23時30分発の大阪駅6時02分着、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)7時00分着。名古屋行きがUSJ 21時45分発、大阪駅23時00分発の名古屋駅5時34分着というもの。名古屋駅〜大阪駅間の所要時間は6時間半程度と、昼行便と比べて倍になっています。

 低速で高速道路を走っているわけではありません。高速道路外の経由地が3か所あるため、走行距離が大阪駅〜USJ間を含めて約230kmから240kmと昼行便より長いのも所要時間が増加している要因のひとつですが、夜行便の「青春大阪ドリーム名古屋号」は、高速道路のSAで1回、約15分から20分間の休憩を行うほかに、別の場所でしばらく停車します(乗客は車内滞在)。「早く到着しすぎても、そこから先の交通機関が動いていないので」(西日本ジェイアールバス)、この休憩で到着時刻の調整を行うのだそうです。

「夜行バス」の強みを引き出す「青春大阪ドリーム名古屋号」 そのポイントとは

 名古屋〜大阪間を、昼行便の倍の時間をかけて走る夜行の「青春大阪ドリーム名古屋号」。西日本ジェイアールバスは、その特徴を以下のように話します。

「名古屋行きの場合、USJの閉園後に出発し、途中の各乗車地については、その周辺の駅から名古屋へその日のうちに行ける終電のあとに発車するよう設定しています。USJで1日楽しみたいお客さまや、ビジネス、レジャーなどで滞在時間を長くとりたいお客さまに好評です」(西日本ジェイアールバス)

 夜行バスの特徴でもある「宿泊費を節約できる」点からも、学生などに人気だそうで、「週末限定で運行を開始しましたが、好評を受けて現在は毎日走らせています」(西日本ジェイアールバス)とのこと。運賃は、「早売1」を利用した場合は片道2800円などになります。ダイヤを調整することで、「時間の有効利用」と「安さ」という夜行バスの強みを引き出しているといえそうです。

東京駅と成田空港を約1時間で結ぶ「東京シャトル」には、午前1時台や4時台といった深夜帯に東京駅を発車する便もある(写真出典:京成バス)。

 ちなみに、東京駅と成田空港のあいだ80km弱を約1時間で結ぶ「東京シャトル」など、深夜帯に走る運行距離100km未満の高速バスも存在します。「東京シャトル」を運行する会社のひとつ、京成バスによると「成田空港を深夜や早朝に発つLCCなどを利用されるお客さまなどのため」とのこと。成田空港は24時間オープンしていることから深夜便でも時間調整は行わず、また一部の便は深夜も営業する温泉施設を始発にするなどして、鉄道が運行されない真夜中にもバスを走らせています。

【時刻表】名古屋駅と大阪駅を結ぶ「夜行」高速バスのダイヤ

「青春大阪ドリーム名古屋号」のダイヤ。途中、SAでの休憩ほか、時間調整の停車を行う(画像出典:西日本ジェイアールバス)。