トランプ政権でどうなる米国経済 現地メディア、識者の見方とは?

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 第45代アメリカ合衆国大統領に就任し、まだ半月も過ぎていないうちから立て続けに大統領令にサインするトランプ大統領。前任のオバマ氏が年平均35件、その前のブッシュ氏が同36件の発令数だったのを考えると、トランプ氏は1月末までに13件なので、異例の多さと言える。その中にはTPP離脱など、米国そして日本を含めた世界経済に影響を与えるものが少なくない。大統領就任式から約2週間経つが、米国のメディアや研究者は米国経済の展望をどのように見ているのだろうか。

◆保護貿易政策は米国経済への脅威
 米国のニュース専門放送局CNBCは、トランプ大統領の保護貿易主義はウォール街の見通しを混乱させる懸念があるとし、今年1月末に実施した調査結果を発表した。この調査は、投資専門家や経済学者など41人の回答を集計したもの。それによると回答者の51%が、保護貿易主義は米国経済の拡大に悪影響を及ぼすとし、昨年12月の調査時点から2倍に増加した。輸入関税の政策については83%が経済へのマイナス要因になりうるとし、中国とメキシコに対する関税については、両国と米国の経済成長の機会を奪うとの回答が50%以上になった。

 しかしその一方で、減税や公共投資、規制緩和などの国内経済政策については肯定的な評価が多く、2017年のGDP予測をプラス2.51%、2017年をプラス2.75%としている(41人の回答者の平均)。減税措置や公共投資などで概ねプラス作用が期待されているようだ。

◆トランプ政策とアメリカ経済の課題
 AP通信はトランプ政権下の経済について課題を次のようにまとめている。これまでアメリカが進めてきたサービス中心の経済とは逆行するトランプ大統領の政策だが、トランプ氏が全盛期のアメリカのような生産設備を国内に復活させたとしても、求められるのは自動化の工程であり、労働者の増加はさほど期待できない。またその点では製造業でもハイテクの技術者が求められるので、人材不足が懸念されるとしている。

 一方、経済停滞のひとつの要因である労働者の生産性の低下については、トランプ大統領の設備投資への優遇措置や公共投資拡大(インフラ整備により交通・物流費が削減できる)が多少なりとも効果がある。そして規制の緩和は新しい生産的な企業を生む可能性があるとしている。

 しかし所得格差は依然残り、企業の減税分の使い道も株主への還元や内部留保にとどまり、労働者への分配や設備投資の拡大にはつながらない。人口の観点では、移民の採用なしでは労働力も経済も停滞する危険があるとしている。さらにトランプ大統領の保護貿易主義によってアメリカが強くなればドルへの投資が続き、高い輸出品と安い輸入品の貿易取引になるので貿易赤字の縮小は難しいという見方だ。

◆本来はサービス産業がけん引役
 トランプ大統領は、「強いアメリカ」の復活を標榜し、ドル安を誘導して国内生産力の向上と輸出の拡大を図ろうとしているが、かつての自動車産業を思い出させる。日本のメディアからも時代錯誤、1980年代の考え方と言われるゆえんだ。ワシントンDCのシンクタンク、ウイルソンセンターによると、2015年の米国のサービス産業は民間部門GDPの78%を占め、正社員雇用の82%に相当し、かたや商品の生産部門は22%と18%の数値にとどまる。今やアメリカは世界最大のサービス輸出国であると同センターは訴える。

 世論調査会社ギャラップは、今年1月末の調査でトランプ大統領の不支持率が51%に達したと報告した。歴代大統領の中で不支持率が50%に達する最短記録とされる。不支持の背景には、デモまで引き起こしているメキシコ国境の壁や、中東やアフリカからの入国制限などがある。投票時の支持者層はまだ投票時と同じ規模で根強いようだが、経済政策で具体的な成果を問われるようになり結果がついてこなければ、工場の海外移転や閉鎖の憂き目からトランプ支持者になった人たちの間でも、不支持の意思が湧き上がってくる可能性があるだろう。