『写真:AFLO』

 1月27日から始まった中国の旧正月にあたる「春節」休暇。中国人にとっては最大のイベントで、2日、幕を閉じた。その春節の期間中、年々急成長しているビジネスが「偽の恋人業」である。いわゆる「恋人レンタル」だ。

 日本でも「理想の彼女を時間制でレンタルできる」というドラマが始まっているが、あくまで画面の中でのお話。ところが、お隣の中国では既に10年以上に渡り、恋人レンタル業が大人気となっている。

 特に需要が高まるのが、この春節のシーズンだ。何しろ、都会に出稼ぎに行っている息子や娘が親元に帰省する大移動の季節。国内では6億人が移動するというから、この2週間の休みは日本の正月どころの騒ぎではない。

 そこで、お土産ならぬ「将来の結婚相手」を連れて帰省し、親を喜ばせたいと考える中国の独身の男女向け恋人レンタル・サービスが活況を呈している。メンツや体面を重視するのが中国人だけに、「恋人もできないのか」と、久しぶりに会う親や仲間からバカにされないための防衛策ともいえる。

 検索サイトの最大手「百度」では「親と食事し、家族と一晩過ごしてくれる仮の恋人、至急募集中」といったメッセージが飛び交っている。普通は一晩500元から2000元が相場。ただ、帰省の時間が迫っている場合は「もう時間がないので6000元(約10万円)出すから、恋人のふりをして下さい」といった必死のお願いも多い。

 料金設定は細かく、食事の同伴は1回50元、買い物に付き合えば30元、映画を一緒に観るのは30元だが、スリラー映画の場合は倍の60元といった具合。傑作なのは、人前でキス(ただし、額か頬)をするときは1回50元というのが相場。

 最近では「1時間1元からの競争入札」をうたっているサイトも登場し、さらには「偽装結婚」まで斡旋する業者もあるほど。すべて、これらを契約書で決めるというから、さすが商売上手のお国柄だ。

 ちなみに、中国では偽の恋人を求めるのは婚期を逃しつつある女性が多いという。しかも、外人男性の人気が高い。そのため、専属の外人俳優や留学生を登録している恋人レンタル会社が盛況のようだ。

 驚くことに、こうしたサービスは中国本土から香港、マカオに広がり、最近では台湾でも広がり始めた。日本に進出するのも時間の問題かも知れない。

<著者プロフィル>浜田和幸
 前参議院議員。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒、米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。2011年以降、総務大臣政務官、外務大臣政務官兼東日本大震災復興対策推進会議メンバーとして、外交の最前線で活躍。専門は「技術と社会の未来予測」「国家と個人の安全保障」「長寿企業の戦略経営」。近著に『この国の本当のかたち 数字で見る日本の実力』(廣済堂出版)ほか多数。