トランプ大統領就任式の観客数が少なかったというメディアの報道を受けて、ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官が根拠を示さずに「観客は過去最多だった」と反論。その後のNBCテレビの討論番組に出演したケリーアン・コンウェイ大統領顧問がスパイサー報道官の発言は「ウソではなく代替的事実(オルタナティブ・ファクト)を示したのです」と語ったところから、「オルタナティブ・ファクト」という言葉が注目を集めました。オルタナティブ・ファクトとは一体何を示すのか?ということについて、ゲド戦記の作者であるアーシュラ・K・ル=グウィン氏が語っています。

Ursula Le Guin on fiction vs. 'alternative facts': Letter to the editor | OregonLive.com

http://www.oregonlive.com/opinion/index.ssf/2017/02/ursula_leguin_on_fiction_vs_al.html

Ursula K. Le Guin Wants Everyone to Know the Huge Difference Between 'alternative facts' and Fiction

http://io9.gizmodo.com/ursula-k-le-guin-wants-everyone-to-know-the-huge-diffe-1791937356



ことの発端は、アメリカのメディアがトランプ大統領就任式に集まった聴衆が「過去最少だった」と報道したこと。それに対してスパイサー報道官は「過去最大だった」と反論し、メディアが意図的にウソの報道をしていると非難しました。その後、ロイターは2009年のオバマ大統領就任式の写真とトランプ大統領就任式の写真を比較したものを掲載しました。

Crowd controversy: The making of an Inauguration Day photo | Reuters

http://www.reuters.com/article/us-usa-trump-inauguration-image-idUSKBN1572VU



そして、アメリカNBCの討論番組に出演したコンウェイ大統領補佐官は、司会の「なぜ報道官はウソだとすぐにばれるような発言をしたのか?」という質問に対して「スパイサー報道官はウソではなくオルタナティブ・ファクトを示しました」と発言。司会はそれに対して「オルタナティブ・ファクトは事実ではありません。『うそ』です」と返しました。

オルタナティブ・ファクトという言葉はすぐに大きな波紋を呼び、アメリカの辞書「MerriamWebster」のTwitterアカウントが投稿した「事実とは客観的な現実を示す情報のこと」という内容は約4万9000リツイートされています。



一方、ニュースメディアのOregonLive.comには「オルタナティブ・ファクトは新しいものではありません。実際に、オルタナティブ・ファクトは我々のよく知る自然の法則が適用されない『代替的宇宙』を作り出す時に必要です」「そして代替的宇宙やそれをサポートするオルタナティブ・ファクトが多く見られるのは、人気のあるSF作品です」という内容が掲載されました。なお、代替的宇宙は二次創作などで行われる原典と異なる展開の世界のこと。

alternative facts alternative universe appear in science fiction: Letter to the editor | OregonLive.com

http://www.oregonlive.com/opinion/index.ssf/2017/01/alternative_facts_alternative.html

しかし、上記の内容を受けてゲド戦記の作者であるアーシュラ・K・ル=グウィン氏は以下のように語っています。

Ursula Le Guin on fiction vs. 'alternative facts': Letter to the editor | OregonLive.com

http://www.oregonlive.com/opinion/index.ssf/2017/02/ursula_leguin_on_fiction_vs_al.html

「OregonLive.comに掲載された内容は『オルタナティブ・ファクト』という言葉が使われた政治家の主張とSF作品の中の発明を比較しています。この比較は意味のないものです。SF作家は物語を作り、その中には明らかに不可能なものも現実的なものもありますが、それら全ては現実ではなく、想像によって作り出されたものであり、事実でないからこそ私たちはフィクションと呼ぶのです。中には『代替的歴史』『代替的宇宙』と呼ばれるものもあるかもしれませんが、フィクションを『代替的事実』とは呼びません。

事実を得ることは簡単ではありません。誠実な科学者やジャーナリスト、その他の人々が、それらの確証を得ようと多くの時間を割きます。事実には『替わり』はありません。太陽は東から昇ります。フィクションの中で太陽が西から昇っているように見せかけることは可能ですが、それが事実(オルタナティブ・ファクト)だと主張することは、『ウソ』なのです。

ウソは、事実ではないことを事実のように故意に語ることです。ウソは自分を安心さえたり、誰かをバカにしたり、怖がらせたり、操作する時に語られます。サンタクロースはフィクションです。彼は無害です。ウソはまれに全くの無害であることもありますが、多くは非常に危険なもの。多くの時と場所で、多くの人によって、うそつきは卑劣な人だと見なされます」