金正恩氏

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北朝鮮の金正恩党委員長の側近のひとり、金元弘(キム・ウォノン)国家保衛相が昨年末に電撃的に解任されたと、韓国の各メディアが報じている。韓国統一省も3日午前のブリーフィングで、この事実を確認した模様だ。統一省は、次官級の幹部らが処刑されたとも明らかにしている。

秘密警察である国家保衛省(以下、保衛省)は、公開処刑や政治犯収容所の運営を担当し、正恩氏の恐怖政治を支える最大の暴力装置として機能してきた。金正恩体制の権力中枢で何が起きているかは不明な部分が多いが、今後の統治に影を落とす可能性もゼロではない。

北朝鮮事情に精通した情報筋によると、朝鮮労働党の組織指導部が保衛省に対して、大々的な検閲を実施。金氏はその中で発覚した問題の責任を問われて解任され、同時に階級も大将から中将に格下げされたという。

このような厳しい措置が取られたのは、韓流ドラマの密輸・地下取引などを取り締まる保衛省のタスクフォースである「612常務」が昨年、全国各地で行なった検閲が背景にあると見られている。

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米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は両江道(リャンガンド)の情報筋を引用し、次のように報じている。

612常務は咸鏡南道(ハムギョンナムド)の検閲を行う際、咸興(ハムン)市の党委員会責任委員長と勤労団体委員長の家の家宅捜索を行なった。その結果、党委員会責任委員長は更迭に追い込まれた。ところが、本来なら必要ではるはずの組織指導部の許可を得ていなかったことが判明。本来なら「党に対する挑戦」として厳しく処罰されるはずの手続き無視、越権行為を平然と行なったことに対して、党幹部から激しい反発の声が上がった。保衛省は後日、金正恩氏から厳重な警告を受けた――。

保衛省は金正恩氏の指示に基づき、党や軍の主な幹部の粛清・処刑を実行してきた。トップの金元弘氏が、ほかの幹部たちが恨みを買っていたとしても不思議ではない。

また一方では、他省庁の利権を強奪したことで恨みを買ったとの見方もある。

NK知識人連帯キム・フングァン代表は聯合ニュースに対し、「保衛部の横暴が度を超えた」「張成沢氏から奪い取った貿易会社のうち、最も重要な水晶貿易会社について、金正恩氏は軍に与えよと命じたのに、保衛省が奪った」と述べた。

一方で、次のような見方もある。

世界北朝鮮研究センターのアン・チャンイル所長は「(韓国軍の)斬首作戦が明らかになってから、金正恩氏は金元弘氏にすら動きを明かさないようになった。これに対して金元弘氏は不満を募らせていた」「ユン・ジョンリン護衛司令官と対立した結果、最終的に解任されたものと見られる」と述べた。