左から、プロダクション・デザイナーのスティーブ・ピルチャーとアート・ディレクターのドン・シャンク

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大好評発売中のディズニー/ピクサー映画『ファインディング・ドリー』のMovieNEX。ピクサー作品の遊び心とインスピレーションの源を迫るべく、米カリフォルニア「ピクサー・アニメーション・スタジオ」を探訪。本作の世界観を作りだした2人に、観客がキャラクターに感情移入しやすくなる工夫の数々を教えてもらった。

【写真を見る】珊瑚礁の丸みと優しい色味は安心感たっぷり/[c]2017 Disney/Pixar

劇中での環境の変化にあわせてデザインを分けることで、作品のビジュアルを体系化できるという。「『ファインディング・ドリー』で言えば、珊瑚礁、外洋、海藻の森、海洋⽣物研究所のある人間界の4つに大きく分けられます」と語るのは、プロダクション・デザイナーのスティーブ・ピルチャー。

「珊瑚礁は“家”をイメージし、丸みのある形を使って作り上げています。隠れる場所もあり、安全な環境ですね。外洋のシーンは水以外に何もない、孤独で怖い世界をイメージ。海藻の森は、リズム感のあるモチーフを使用しており、人間界は角ばったデザインにすることで珊瑚礁と対比させています。こんなふうに明確なコントラストをつけることで、観客の記憶に残りやすくなるんです」。

「次に、カラーリングを決めていきます。珊瑚礁はレインボーカラー、外洋は青色、海藻の森はおもに緑色を、そして人間界はアースカラー。コンクリートやガラス、金属、プラスチックなど、珊瑚礁とは正反対。キャラクターがぴったり馴染む場所もあれば、浮いてしまう場所もあるわけですね」と続ける。

「ドリーの感情に沿って、ストーリーの楽しい部分と悲しい部分を表したチャートを作っています。そこに、先ほどお話したデザインやカラーなどを当てはめていきます。ドリーが暗い海にいる場面や、明るく太陽が降り注ぐようなクライマックスなど、作品を通して水の色にも変化をつけることで、単調にならないようにしています」。

作る過程でストーリーを練り直していく時にも、この“感情を表すカラーチャート”が役立つそう。「カラーチャートは、作品がどのように進んで行くかをデザインするためのアイデアです。監督がムードを決める時の指針にもなります。アンドリュー(・スタントン監督)は観客が一緒に体験しているように、作品を作るタイプなので、このチャートが役立ちます」。

“カラーグレーディング”(カラー・コレクション)と呼ばれる画面の色調調整はハリウッド映画など実写映画でも行われているが、ここまで徹底してカラーチャートを反映させるのは、ピクサーならでは!

セットデザインについては、アート・ディレクターのドン・シャンクが教えてくれた。通常の作品づくりでは、数十枚ほどのコンセプトスケッチをもとに、監督と話し合うそうだが、『ファインディング・ドリー』はすべてのシーンのセットデザインを作ったという。

「『カメラの動きを想定してデザインを決めたい』という監督たちの希望により、すべてのセットを作ることにしました。メインとなる海洋⽣物研究所のセットデザインは、モントレーベイ水族館を中心にいくつかの水族館を回り、そこで撮った写真を参考にして組み立てています」。

「タッチプール(劇中に登場する、海の生きものと触れ合えるコーナー)は、デザインするのに相当な時間をかけました。たとえ2秒ほどしか映っていなくても、セットに真実味を持たせたいから。ディテールにこだわるあまり、作っている間は数秒しか映らないことを忘れてしまうんです(笑)」。

キャラクターの感情に寄り添ったカラーチャートや、たった数秒しか登場しないセットにも労力を惜しまない情熱が、『ファインディング・ドリー』の世界観を作っている。リサーチの様子は、「水族館リサーチに密着」などMovieNEXのボーナス映像で知ることができる。【取材・文=MovieWalker】